佐賀県知事に対する要請書 |
MOX燃料が輸送中に臨界事故を起こす疑義は払拭されていません |
この疑問が解消するまで事前了解はけっしてしないでください |
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玄海原発3号機プルサーマルのためのMOX燃料の輸送が開始されようとしており、そのための事前了解願いが九州電力から貴職にだされています。MOX燃料輸送時の安全性は、佐賀県民や国内の人々ばかりでなく、輸送ルートの国々にとっても重要な関心事であり、それだけ慎重な判断が求められています。 MOX燃料の輸送時の安全性判断については、2007年10月に開かれた専門家の国際シンポジウムPATRAM2007で、それまで見逃していた新たな問題が提起されました。輸送物(輸送容器+燃料集合体)の落下による燃料棒の変形によって、臨界事故が起こる可能性があることが指摘されました。いま問題のMOX輸送物の安全審査は2006年までに終了しているため、本来なら審査のやり直しが行われるべきものです。 事業者は急遽2007年12月〜翌3月に試験と解析を行い、新たな問題提起による影響は小さいことを確認したと国土交通省に報告しています。しかし、その報告書は提出者名も提出日付もなく、どのような試験と解析を行ったかの説明もほとんどないものです。これではその妥当性を判断することは国土交通省といえども原理的に不可能です。 この事業者の試験と解析については、少なくとも後記の「別記」のような、MOX輸送物が臨界事故を起こす危険性は払拭されていないという疑問があります。具体的には次ぎの2点です。 (1)2007年10月の国際シンポジウムで提起された判断との整合性は不明なまま (2)実物の輸送物と「同一のもの」を用いた試験をしていない この点については、国会議員からも国土交通省に対する別紙の意見が寄せられています。 貴職におかれましては、このような疑義が存在することの重要性に鑑みて、判断に慎重を期していただくよう、これら重要な疑問が解消するまでけっして事前了解をされないよう要請いたします。 2009年2月27日 提出団体(36団体) プルサーマルと佐賀県の100年を考える会(佐賀)/唐津環境ネットワーク(佐賀)/九電消費者株主の会(福岡)/脱原発ネットワーク・九州(福岡)/北九州から脱原発社会を考える会(福岡)/たんぽぽとりで(福岡)/川内原発建設反対連絡協議会(鹿児島)/自然の灯をともし原発を葬る会(鹿児島)/さくら花びら調査隊(鹿児島)/川内つゆくさ会(鹿児島)/原発いらん!山口ネットワーク(山口県)/原発さよならえひめネットワーク/原発さよなら四国ネットワーク/原発なしで暮らしたい松山の会/阿部悦子と市民の広場/伊方原発反対八西連絡協議会/原発から子供を守る八幡浜女の会/愛媛環境ネットワーク/愛媛の活断層と防災を学ぶ会/農薬空中散布に反対する市民の会/子どもの未来と環境を守る会えひめ (以上愛媛県)/島根原発増設反対運動(島根県)/美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会/若狭連帯行動ネットワーク(以上大阪府)/グリーン・アクション(京都府)/核のごみキャンペーン・中部(愛知県)/浜岡原発を考える静岡ネットワーク(静岡県)/福島老朽原発を考える会/ストップ・ザ・もんじゅ東京/原子力資料情報室/ふぇみん婦人民主クラブ/原発を考える品川の女たち(以上東京都)/東京電力と共に脱原発をめざす会(首都圏)/みどりと反プルサーマル新潟県連絡会(新潟県)/NPO地球とともに/みやぎ脱原発・風の会(以上宮城県)/ 連絡先 プルサーマルと佐賀県の100年を考える会 [別記] MOX輸送物が臨界事故を起こす危険性は払拭されていないという疑問点 (1)2007年10月の国際シンポジウムで提起された判断との整合性は不明なまま 2007年10月の国際シンポジウムPATRAM2007で報告されたファリントンの論文では、燃料棒が1ミリ変形した場合、中性子増倍率が0.96以上となり、日本原子力学界の基準0.95を超えて臨界に達する危険があります。ところが、同じ1mm変形でも日本の事業者の今回の 値は0.86程度と非常に低い値になっています。 (注)中性子増倍率とは、核分裂反応の連鎖において、核分裂に寄与する中性子数が今世代では一つ前の世代の何倍になるかということ。中性子増倍率が1を超えると臨界事故になる。 ファリントンの論文は世界の専門家が集まったシンポジウムで発表されたものであるだけに簡単に無視できるものではないはずです。現に日本の事業者はその結果を重視したからこそ、急遽試験と解析をやり直したはずです。なぜこのような違いが生じているのかを明らかにし、日本の事業者の低い値が意図的な解析を行った結果ではないことを国土交通省は明らかにする義務があります。 ところが、2月13日の議員レクのときに出された「ファリントン論文で想定されたプルトニウム同位体組成と含有率についても教えてください」との質問に対し、国土交通省の回答は「当省としては承知しておりません」というだけでした。このような無責任な回答では誰も納得できるものではありません。 (2)実物の輸送物と「同一のもの」を用いた試験をしていない 国土交通省告示第14条第3号では、「当該輸送物と同一のもの」を9メートル落下させるよう規定していると読みとれます。MOX燃料集合体は崩壊熱によって約300℃になり、それだけ構造物の強度が落ちています。それゆえ、法規に従えば、試験に用いる燃料集合体も同程度の温度にして落下させる必要があります。 ところが今回の事業者の試験では、燃料ペレットは鉛+アンチモンでつくられていたため、温度は常温でしかありませんでした。これでは、「当該輸送物と同一のもの」とは言えず、法的な要求を満たしているとは言えないのではないでしょうか。つまり、実際の温度を模擬する試験を行えば、燃料棒の変形がより大きくなる可能性があるのに、そのような試験をしていないということです。 |
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(09/02/27UP) |