関西電力の中間報告
「BNFL製MOX燃料問題に関する調査について」
に対するコメント


住民を危険にさらそうとした姿勢に関する反省なし

2000年3月1日 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
TEL:06-6367-6580; FAX:06-6367-6581

関西電力から本日、MOX燃料データ不正問題に関する中間報告が公表されました。以下はそれに対する暫定的なコメントです。

1. 関西電力がこの中間報告を出すに当たって、「本件の重要性」と認識しているらしいのは、「はじめに」で述べられている次の記述に限られている。「当社を信頼して高浜4号機へのMOX燃料装荷に理解と協力をしていただいた国、地元、社会にご迷惑をお掛けし、重要な原子力政策であるプルサーマル計画がスタートでつまづく結果となり、社会への信頼を大きく失うこととなった」。
 これでは偽造データのため安全性の不確かな燃料を強引に装荷しようとし、人々を危険にさらそうとした姿勢に関する反省がまったく見られない。そのことで社会に対して謝ろうとする姿勢が皆無である。一般の生活している人々のことなど眼中にない。
 これに関連して関西電力は、全数検査だけで安全性は確保されると裁判の中であからさまに主張してきたが、そのような暴論に関する反省もまったく見られない。

2. 不正ロットに関する判断の誤りを一応は認めているものの、関西電力内部でどうしてそのような判断が生じたのかに関する分析がなく、従ってその誤った判断に関する責任の所在が明らかにされていない。これではただの作文になってしまう。

3. P824については、NII報告書(2月18日)によれば、昨年9月20・21日にNIIはセラフィールドで通産省職員と会合をもち、21日の手紙で、まだ分析に時間がかかると伝えている。この趣旨は当然関西電力にも伝わっているはずなのに、P824には問題なしと即座に判断し、9月21日にプレス発表まで行っている。高浜3号機用燃料データに不正が発見されてBNFLに対する信頼性が崩れているのに、以後ずーっとBNFLの方を信用してNIIの見解は無視ないし敵対する態度を一貫してとり続けた。
 また、P824については独自の「統計解析」をやってみせて不正はないと根拠づけたが、このような統計解析が誤りであったこと、そのような誤った判断を宣伝して人々を騙そうとしたことについての反省がない。さらに、今回NIIの報告書によって初めて、上中下600データ中の308に流用があったことが明らかにされたが、このような上中下のデータを隠し続けたことの罪も大きい。
 このような姿勢がなぜ起こったのか、誰が責任をもつのかがまったく分析されていない。

4. P783に関しては、10月20日にBNFLから知らされながら通産省にも伝えなかった。また今回初めて、11月13日に再度「NIIが疑義を抱いているとした根拠となる統計解析をBNFLから受け取った」ことを公表した。「非開示」であったため通産省にも知らせなかったというが、統計解析結果まで入手していながら、勝手に不正はないと判断したことへの明確な反省がなく、なぜそのような判断が生じたかの分析がない。

5. 昨年12月9日に、関西電力は通産省からP783について確認するよう連絡を受けながら、11日に不正はないと判断し通産省にその旨を連絡しているが、その後通産省から調査員をBNFLに派遣するよう指示されている。ところがその翌日の12日には、P783に問題はないと福井県と高浜町に報告している。
 さらにP783とP824については、燃料使用取りやめの理由の中に含めていることは、使用取りやめ燃料集合体が4体になっていることからも明らかである(P814だけでは3体にしかならない)。ところがそのときの記者会見では、P783とP824の不正を否定しており、さらに今年1月11日に公表した文書では、P783とP824がの記述が完全に抜け落ちている。
 このような悪あがきとしか言いようのない姿勢がなぜ生じたのか、誰が責任を負っているのかについての分析がなく、従って反省がない。

6. 関西電力は、今回の中間報告書の参考資料Uで、データのグラフとして、初めて度数分布だけでなく、「規格化グラフ」(確率分布グラフ)を掲載した。昨年には、このような「規格化グラフ」でなく、抜取検査データについて地を這うような度数分布グラフだけを示して、特徴を見えないようにしたばかりか、我々市民が提示した「規格化グラフ」では特徴が誇張されていると非難していた。今頃になって我々の方法を事実上認めているが、以前の誤った姿勢についての反省が何も書かれていない。

7. 関西電力としては、すでに到着していた高浜4号用MOX燃料の不正を認めず、何としてもプルサーマルの年内実施を強く指向していた。そのため、すでに高浜3号で痛い目に遭わされたBNFLを意図的に全面的に信頼し、NIIとは距離を置くという姿勢をとったに違いない。
 自らの利益を守るために、住民を危険にさらそうとしたことは明らかであり、その社会的責任は重大である。このこと自体への何の反省もない報告書、そのような姿勢が生じた原因と責任の分析のまったくない報告書では、誰もとうてい納得のいくものではない。
 このような体質のままで、形ばかりの「再発防止策」を立てることで、プルサーマルを推進することはとうてい許されることではないと考える。
   以上。




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