コジェマ社で製造された関西電力用MOX燃料等に関する質問書


経済産業省大臣 平沼赳夫 様

1. 関西電力用のMOX燃料が製造された施設について

(1)コジェマ社のメロックス工場では、MOX燃料製造に関する新たな施設がつくられ、1999年7月30日にフランス原子力施設安全局(DSIN)の許可を得ている(この施設はMelox West Fitting Buildingとも呼ばれている)。この事実を知っているか?
ちなみに、関西電力はこの拡張された施設が存在することは知っていると述べている(2002月2月26日の市民との交渉で)。

承知していない。

(2)関電用のMOX燃料の燃料棒への封入や燃料棒の溶接検査は、その新しい施設で行われたのか?

承知していない。

(3)関電用MOX燃料が作られたのは、メロックス工場の既存のラインか、それとも新マルチ−デザイン・ラインか?

承知していない。

(4)関西電力が2000年3月2日に監査したのは、@メロックス工場の既存のライン、A新マルチ−デザイン・ライン、B拡張された新施設(MWFB)、のうちどれか?

承知していない。

(5)原子燃料工業鰍ェ事前監査したのは、上記@、A、Bのうちどれか?またその時期はいつか?

承知していない。

(6)経産省が上記諸事実を知ったのはいつか?

承知していない。

(7)通産省(当時)は、1998年11月16日〜18日にベルゴニュークレール社を訪問し、監査を行っている。経産省は、コジェマ社・メロックス工場の監査を行ったのか?監査をした場合、その日付と監査した施設(上記@、A、Bのどれか)を明らかにすること。そうでない場合、なぜ国として監査をしなかったのか、その理由を明らかにすること。

輸入燃料体検査において国が外国の加工事業者の監査を行う制度はなく、通商産業省がベルゴニュークリア及びメロックスの監査を行った事実はない。

 フランス原子力施設安全局の2000年レポートによれば(「DSIN2000」)、「設置許可修正デグレ(政令)による新たな枠組みの中で、初めてEDF標準以外の燃料加工が日本の電力会社の要請で開始された」となっている。また、同「DSIN1999」では「[メロックス工場の生産は]当初フランス市場のみを対象にしていたが、外国顧客(ドイツあるいは日本)向けに若干異なる燃料の製造を行うために改築が必要となり、1999年7月30日に認可を受けた」と記載されている。このように、メロックス工場は当初、フランスEDF用MOX燃料を製造していたが、海外顧客用の様々なタイプのMOX燃料を製造するために、新マルチ−ラインが旧施設へ導入され、さらに新施設(MWFB)が建設された。
 この新施設(MWFB)は、フランス原子力施設安全局(DSIN)によって、1999年7月30日に許可がおり、また、この施設へのプルトニウム持ち込みの許可は2000年4月18日にだされている。他方、関西電力用MOX燃料は、1999年11月3日から製造が開始され、2000年2月22日には燃料棒への封入、燃料集合体の組立が行われている。上記質問に関する明確な回答が得られない限り、関電用MOX燃料は、フランス原子力施設安全局の許可がおりる前に、新施設へ違法にプルトニウムを持ち込み、製造されたのではないかという疑惑が生じる。
関西電力は、2月26日の私達との交渉で、どの施設でMOX燃料を作ったのかについて、「コモックス社の要求で守秘義務上明らかにできない」と回答した。しかし、東京電力は、新施設でMOX燃料を製造していることを明らかにしており、上記関電の回答はなんら正当性を有しない。「フランス政府の許可が出る前に、新施設へ違法にプルトニウムを持ち込みMOX燃料を製造していた」という疑惑がある以上、経産省として、事実を明らかにするのは当然の責務である。

2. ベルゴニュークレール社への事前監査について
 ベルゴニュークレール社のセミナー資料[ベルゴニュークレール社 東京セミナー プレゼンテーション資料集 平成12年11月21日 於都市センターホテル]によれば、通産省(当時)が同社を監査したこと[資料7-15]、および1998年11月16日〜18日に同社を訪問していることが記載されている[資料7-17]。
 この訪問の目的、訪問後にまとめられた報告書を公開すること。

ベルゴニュークリアを訪問した目的は、同社の品質管理の概況に関する情報収集である。報告書は存在しない。

3.MIMAS法について
 コジェマ社では、MOX燃料の製造方法として2段階の混合を行うMIMAS法を採用している。第1次工程では、プルトニウムとウランを混ぜ合わせ、プルトニウム濃度(プルトニウム+ウランに占めるプルトニウムの割合)が約25%〜30%になるような混合粉末をつくっている。第2次工程では、顧客の注文に応ずるプルトニウム濃度になるように、第1次混合粉末にさらにウランを混ぜている。

(1)MOX燃料では、ウラン燃料と違って異なる種類の粉末を混ぜるため、2つの工程を通じてプルトニウムができるだけ均一に混ざることを目指していると考えられるが、そういう認識でよいか。

(2)2月12日の保安院と市民との交渉で、安全・保安院原子力発電安全審査課の水元企画班長は、「第一次混合分の25%は残すもの」と発言し、第2次混合工程では、プルトニウムは均一に混ざらなくてもよいとの考えを説明したが、これは保安院としての考え方なのか?

(1)(2)
 MIMAS法は、二酸化プルトニウム粉末と二酸化ウラン粉末を二段階で混合する方法である。第1段階の1次混合は、混合粉末のプルトニウム濃度が25〜30%となるように粉砕混合を行う。第2段階の2次混合は、1次混合粉末を二酸化ウラン粉末で希釈混合して、所定の平均プルトニウム濃度の2次混合粉末を得るものである。MOX燃料ペレットには1次混合粉末程度の濃度のプルトニウムスポットも存在するが、2次混合により、プルトニウムスポットは燃料ペレット全体にほぼ均一に分布することとなる。

(3)プルトニウム・スポットの濃度・大きさに関して、国としての基準はあるのか?基準が有る場合は、その基準の安全性を示す実験的根拠を明らかにされたい。

電気事業法に基づく「発電用核燃料物質の技術基準を定める省令」第5条第4号に「プルトニウムの均一度は、実用上差し支えがないものであること」と定めている。

(4)プルトニウム・スポットが存在しても安全との見解の根拠は何か。そのような安全性は、高燃焼度MOX燃料についても実験的に確認されているか。もし確認されているなら、その実験事実を明らかにされたい。

原子力安全委員会原子炉安全基準専門部会報告書「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」(平成7年6月19日原子力安全委員会了承)において、「検討範囲(注)としたMOX燃料の特性、挙動は、ウラン燃料と大きな差はなく、また、MOX燃料及びその装荷炉心は従来のウラン燃料炉心と同様の設計が可能であると認められる」「プルトニウム含有率の不均一性についても、プルトニウム・スポットに着目し、現実的に考えられるものより更に厳しい条件に対する実験の結果より、燃料破損への影響を特に考慮する必要がないこと等を確認した」としている。
(注)MOX燃料の炉心装荷率1/3まで、燃料集合体最高燃焼度45,000MWd/t以下

4.化学エッチングについて
 コジェマ社では、プルトニウムの不均一性(いわゆるプルトニウム・スポット)を検査するのに「化学エッチング」という方法を使っている。

(1)2月12日の上記交渉で、化学エッチングでは、プルトニウム濃度の測定はできないと、安全・保安院原子力発電検査課の有倉企画班長は述べている。これは事実か?

(2)プルトニウム・スポットとは「プルトニウム含有率が局所的に高い領域」だと、国のいわゆるプルサーマル指針※1では記述されている。プルトニウム濃度の測定ができないのにどうしてプルトニウム・スポットの検査が原理的にできるのか?

(1)(2)
化学エッチングは、濃度を定量的に測定することを目的として用いられるものではないが、プルトニウムスポットの存在を確認することは可能である。

(3)関西電力は2月26日の市民との交渉で、化学エッチング法の性能に関しては、「メロックス工場の内部レポートで確認している。レポートは公開できない」と述べた。この関西電力の姿勢は、製造会社であるコジェマ社の見解をまるのみにしただけのものであり、安全性を軽視していると考えるがどうか?

回答する立場にない。

(4)2月12日の保安院と市民との交渉でも、化学エッチング法は他のプルトニウム・スポットの検査方法と比べて遜色はないと述べられた。その根拠は何か?根拠としている文書・文献等があれば公開すること。

化学エッチングは、金相分析等を行う際に用いられる一般的な方法と認識している。


※1:「発電用軽水炉型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」 平成7年5月 原子炉安全基準専門部会


 尚、上記質問に対する回答は、文書で、3月12日までにお願いします。

2002年3月5日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
 京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
 大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル1階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581



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