11月10日、関西電力は高浜3・4号機用MOX燃料の製造を開始するために、国に輸入燃料体検査申請書を提出した。関電の計画では、年明けにフランスのメロックス工場でMOX燃料の製造を開始し、2010年末までに高浜原発での国の審査を終え、2011年3月までにプルサーマルを開始するという。 プルサーマルはウラン燃料用に設計された原発でMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)を使用するというものだ。ウランと著しく特性の異なるプルトニウムを混ぜて使用するという特別な危険がある。さらに、老朽化した高浜3・4号機でのプルサーマル実施は、倍加した危険をもたらす。5名もの死者を出した美浜3号機事故の教訓も省みようとしない関電の安全性軽視と経済性最優先の姿勢ではなおさら、プルサーマルどころではない。 大飯3号機では、原子炉容器出口管台で深さ約20oにも及ぶ国内で最大の応力腐食割れが起きていた。関電は、傷の部分を削っただけで、大きなくぼみを残したまま、人々の不安を無視して11月5日に運転を強行した。 このインコネル600製の部材での応力腐食割れは、プルサーマル予定炉である高浜4号機でも起きている。8月23日から定検に入った高浜4号機では、蒸気発生器(SG)入口管台溶接部で36箇所にも及ぶ応力腐食割れが確認された。その内約10箇所では技術基準で定められた必要肉厚を割り込んでいた。傷の深さの最大は、C−SGで16oにも及んでいた。 この応力腐食割れに対する関電の対応に大きな問題がある。関電は、定検前に、既に傷が存在することを予測していたのか、「予防保全対策」と称して、配管を削ることを前提に、法律で決められている必要肉厚を75.26oから66.5oに変更した(8月18日)。案の定、3台のSG全てで傷が確認された。傷が最も深い部分では、肉厚が60.8oとなって、変更した66.5oの必要肉厚さえも超えて傷が進展していた。ところが、高浜4号機の前回定検(第17回定検 2007年4月)では、A−SG入口管台溶接部の超音波探傷検査を実施し、「異常なし」と評価していたのだ。 高浜3号機でも、昨年から今年にかけての第18回定検で、SG管台で32箇所の応力腐食割れが確認され、傷の深さは最大で15oにも及び、全てのSGで必要肉厚75.26oを割り込んでいた。この場合も、その前の定検でA−SGでは「異常なし」となっていた。 これらは、関電の傷の進展予測がまったくあてにならないことをまたもや示している。わずか1年で10o程度かそれ以上に傷が進展したことになる。さらに、大飯3号機でも問題になったように、現在の検査の精度がまったくあてにならないことも示している。これらについて、関電はまず釈明すべきであり、必要肉厚を割り込んだ深い傷をかかえたままで違法な運転を続けてきたことの責任を明らかにすべきである。 同時に、このインコネル600製部材の応力腐食割れは、国内PWR原発の様々な最重要部位で共通して起きている。九州電力や四国電力でもプルサーマルどころではない。原子力安全・保安院は、多発する応力腐食割れに対して、「漏えい監視」等の亀裂貫通を許すような指示を出しているだけだ。保安院のこの姿勢と責任もまた大きな問題である。 関電プルサーマル計画には、特別に重い足かせがある。今回製造を予定しているコジェマ社メロックス工場は、関電が以前にMOX燃料を製造した工場だ。しかし、完成したMOX燃料は、関電が60億円もの賠償金をコジェマ社に支払って2001年12月に廃棄された。電気料金から多額の金を支払い、なぜこのようなことになったのか、その真相は今も隠されたままだ。今回のプルサーマル計画再開にあたっても、関電は一言もこの事件についてふれていない。 また、今回の申請書に添付されている定期監査結果では、メロックス工場の品質マネジメントシステムに関して、「セーフティ・カルチャ(原子力の安全文化)に関する社外研修が開始されており、トップマネジメントから順番に、全社員が受講する計画が作成されている」こと等をもって「適切」だと評価している。「法令順守」と題目を唱えながら、「技術基準を割り込んでもすぐに問題になるわけではない」と平然と主張する関電が行った監査の内容とその基準がいかに形だけのものかを如実に示している。今夏フランスでは、アレバ社の子会社による放射能流出事故等が大きな問題となり、子会社のみならずアレバ社の安全管理のずさんさが厳しく非難されている。メロックス社もまたアレバ社の子会社であるが、関電はここでも「メロックス社とは関係なし」としてこれらの問題から目を背けている。 さらに、「BNFL問題再発防止策の反映」に関する監査結果では、「品質管理データのセキュリティが厳格に確保されている」と評価しているが、ペレット寸法データの公開等、メロックス社の情報公開の基準には一切ふれていない。 地震問題一つをとっても、まだ関電は最終報告すら出していない。国の審議会でも、関電の活断層値切りは委員から厳しい批判を浴びている。さらに、とりわけ厄介な使用済みMOX燃料はもって行き場もなく、地元を「核のゴミ捨て場」同然にするものだ。若狭の原発の老朽化に伴う安全性問題等々、問題は山積みである。 今後約1ヶ月をかけて保安院は関電の申請書を審査し、福井県は独自に安全専門委員会の場で審議をするという。国や県に対しても厳しい監視の目を集中しよう。 我々は、多くの人々と連帯して、必ずやまた、関電プルサーマル計画を阻止する決意である。 2008年11月12日 |