★メロックスに新施設ができたことは知っている。 ★関電のMOXを製造したのが新施設かどうかは、コモックス社の要求で守秘義務上言えない。(東電は新施設で作ったと言っているのに守秘義務?) ★化学エッチングの性能は、メロックス工場の内部レポートで確認。レポートは公開できない。 ★製造したペレットが16体分か32体分か、今は分からない。(当初32体分で契約、ペレットが完成してから16体に契約を変更したと言っていたのだが) ★データねつ造MOXは「新MOX燃料として日本に返還される」(米エネルギー省) ↓ 「日本政府が勝手にアメリカにそう言ったのではないか」(関電) |
前回1月16日の交渉で積み残しとなった問題(1月28日付け質問書)に対する回答を得るため、2月26日、市民12名で午後5時より約2時間にわたり、関電との交渉を行いました。応対したのは広報グループの村井課長、小松課長、岩崎課長の3名でした。 関電は、自社のコジェマ社製MOX燃料について、検査精度ばかりか、どこで作られたのかという極めて基本的かつ一般的な事実についてさえ、「守秘義務」を口実に一切答えませんでした。このような、関電の異常なまでの秘密主義的姿勢は、プルトニウム・スポット等、品質上の問題だけでなく、さらに重大な問題が隠されているのではないかという疑惑を深めさせるものでした。 メロックスに新施設ができたことは知っている。しかし、関電のMOXを製造したのが新施設かどうかは、コモックス社の要求で守秘義務上言えない。 私たちは、1月28日付け質問書で、「関電のMOX燃料集合体を作ったのは新施設なのか、それとも元々のメインの施設なのか」という質問を出していました。これに対して関電は、新しい施設の存在は認めましたが、どちらの施設で作ったのかは「コモックス社からの要求で、守秘義務上答えられない」と回答を拒否しました。「それでは、どちらで作ったのか、関電自身は把握しているのか」と聞くと、それも答えられないと言うのです。どちらで作ったかを言えないだけでなく、そのことを知っているかどうかさえ言えないというわけです。ちょっと普通では考えられないような、異常な程の拒絶ぶりです。 そもそも、どちらの施設で作ったかなど、非常に基本的で一般的な事実です。そんなことが明らかになったらかといって、コジェマやコモックスが、どのような商業上の不利益を被るというのでしょうか。しかも、東京電力は自社のMOX燃料を新施設で作ったことを明らかにしているのですから、「守秘義務」などまったくもっておかしいわけです。それとも、コジェマの守秘事項について、関電と東電で二重基準が存在するとでも言うのでしょうか。「守秘義務」は、関電のMOXを作った施設を隠すための口実に過ぎないことは明らかです。 なぜ関電は「どこで作ったのか」を明らかにしないのでしょうか。何もやましいことがなければ、具体的に回答できるはずです。 関電とコジェマ社が、フランス政府の許可が出る前に、違法にMOXを製造していた疑惑 関電用のMOX燃料は、1999年11月3日から、コジェマ社のメロックス工場で製造が開始されています。ペレットは99年末までに完成し、翌2000年2月22日からは、燃料棒と燃料集合体の組み立てが行われました。 メロックス工場は、従来、フランス電力公社(EDF)用に標準化された集合体しか組み立てることができませんでした。そこで、様々な設計の海外顧客用MOX燃料の製造を目的として、マルチデザイン・ラインが、既存のEDF用ラインに新しく追加されました。この新ラインには、ペレット製造と集合体組み立ての新しい設備が設置されました。また、マルチデザイン用のペレット選別と燃料棒製造のために、新施設が建てられました。この新施設は、旧来のメイン施設の西隣にあることからMWFB(Melox West Fitting Building)と呼ばれています。 フランス原子力施設安全局(DSIN)がこのマルチデザイン・ラインおよび新施設(MWFB)に許可を出したのは1999年7月30日です。さらに、そこへのプルトニウム持ち込みが許可されたのは2000年4月18日です。 もし関電が、マルチデザイン・ラインで製造を行い、2000年2月22日から新施設で燃料棒の製造を行っていたとすれば、フランス政府のライセンスの下りていないライン・施設へプルトニウムを持ち込み、違法なMOX製造を行っていたことになります。つまり、関電とコジェマ社は、重大な違法行為を犯していたことになるのです。核兵器の材料であるプルトニウムは、その他の核物質と較べて、特別厳格な管理が要求されることは言うまでもありません。関電とコジェマ社の責任は極めて重大です。 どこで製造したのかの回答を拒否し、隠そうとする関電の姿勢は、違法行為をおこなったのではないのかという疑惑を一層深めるものです。関電は、どこでMOX燃料を作ったのか、具体的に明らかにすべきです。 化学エッチングの性能は、メロックス工場の内部レポートで確認。レポートは公開できない。化学エッチング法ではプルトニウム濃度を測ることはできない。 さらに、重大問題として浮上しているプルトニウム・スポットの問題についても、具体的事実を明らかにすることを関西電力は一切拒否しました。 前回の交渉で関電は、コジェマ社が採用しているプルトニウム・スポットの検査方法が「化学エッチング法」であることだけを明らかにし、その精度や、検査に関するその他一切の事実の公表を拒みました。そこで交渉後、質問書として化学エッチング法の性能等について訊いていたのです。 これに対して関電は、「化学エッチングの検査精度は、メロックス工場の内部レポートで確認しているが、そのレポートは公開できない」という回答に終始しました。検査精度も「守秘義務」というわけです。 そこでわたし達市民側は、「それでは、内部レポートに書かれている検査精度が適正なものであるかどうか、何を根拠に判断したのか」と関電を追及したところ、「内部レポートで適正かどうかを判断した」という驚くべき答えが返ってきました。さらに、内部レポート以外に化学エッチングの手法や精度等に関して書かれた書籍や文献があるのかについて質問すると、「知らない」と答えるだけです。 コジェマが出してきた「内部レポート」に書かれていることが正しいかどうかを、関電が判断するのですから、少なくとも、化学エッチング法の精度が一般的にどの程度のものか等、コジェマ社以外の文献や研究等と付き合わせて、評価・判断しなければなりません。コジェマ社が自社に都合の悪いことを書くはずはないのですから、これは当たり前のことです。ところが関電は、「内部レポート」に基づいて、「内部レポート」が正しいかどうかを判断したと言っているのです。 これは「コジェマが正しいといっているから正しいのだ」と言っているに過ぎません。安全性無視の無責任極まりない態度です。BNFLのデータ捏造事件から何も学んでいなかったのです。関電の責任は極めて重大です。 また関電は、化学エッチング法では「プルトニウム濃度を測ることはできない」ことを公式に認めました。プルトニウム濃度が分からないのに、MOX燃料の安全性を確認することなどできるはずがありません。特に、プルトニウムの分布の偏りが激しいMIMAS法を採用しているコジェマ社製燃料ならなおさらです。 製造したペレットが16体分か32体分か、今は分からない(当初32体分で契約、ペレットが完成してから16体に契約を変更したと言っていたのだが)。 関電の無責任さは、さらに続きます。先にも述べたように、関電用のMOX燃料ペレットの製造は、1999年11月3日に開始され、同年12月には完成しています。そして契約時点では、製造する燃料集合体は32体だったのですが、「メロックス工場の保管容量の問題」を理由に、2000年1月に、32体から16体に変更しています。ということは、12月末に32体のペレットが作られていたにもかかわらず、この変更によって、16体分のペレットが無駄になっていたことになります。 しかし、前回の交渉では、製造中止段階でのMOX燃料は、集合体6体分と燃料棒10体分と言っていました。そこで「1999年の12月末の段階で製造されたペレットは、16体分なのか32体分なのか」と関電に訊くと、最初は「32体」と言っていたのですが、「本当にそうなのか」「おかしいのではないか」と追及すると「はっきりしたことは言えない」「分からない」と急に弱気になって頼りないことを言い出す始末。結局、何体分のペレットを製造したのかについては、次回交渉での回答ということになりました。 しかし、製造したペレットの数などという基本的な事実関係についてさえ、すぐに露呈してしまうような矛盾したことを平気で述べ、説明不能状態に陥ってしまうのは、まずは広報グループ3課長の不勉強であり、市民に対して誠実に対応するという意志の欠如ということでしょうが、単にそれだけでなく、先に述べた新施設での製造疑惑等、メロックス工場でのMOX製造過程に、説明できないような何かおかしなことが隠されているからではないかという疑惑を深めざるを得ません。 データねつ造MOXは「新MOX燃料として日本に返還される」(米エネルギー省) ↓ 「日本政府が勝手にアメリカにそう言ったのではないか」(関電) 2002年2月1日、米国エネルギー省から米上院議会外務委員会のジョセフ・R・ビデン・Jr委員長に送られた書簡には、高浜にあるBNFL社製のMOX燃料は、「BNFL社に返還された後...回収された後のプルトニウムは新MOX燃料集合体として日本に返還される」と書かれています[2/25付質問書参照]。「返還される予定」という形でなく、「新MOX燃料集合体として日本に返還される」と断定されています。米エネルギー省がこう書いたのは、当然日本政府が、そういう形で米側に意向を伝えたからと推測されます。そして、関電自身が日本政府に「新MOX燃料集合体として日本に返還」と約束したと考えられます。 一方、関電はこれまで、返還後の製造契約については「まったく未定」であり、「地元をはじめとする皆様のご理解を得つつ検討する」と言い続けてきました。 そこで、私たちはこの件について、あのBNFLとの再契約の事実はあるのかと質問書を出していました。今回も関電は、「未定だ」「皆様のご理解を得つつ検討」と繰り返しました。「関電は日本政府やアメリカ政府に製造契約を約束しているのか」と追及すると、関電は「政府が勝手にアメリカ政府に言ったのではないか」と発言しました。「関電がOKと言わないのに勝手に日本政府が言っているのか」「アメリカ政府の言っていることは、関電に取っては不本意で間違っている内容なのか」と突っ込むと、ごにょごにょと口ごもって、沈黙しました。 今後さらに、この問題について厳しく関電を追及していくつもりです。 |