安全委員会に小山が出した意見7〜10


玄海プルサーマル審査に関する原子力安全委員会への意見(7) 8月16日提出

(本文)
 私の意見(5)(6)へのご回答に感謝し、若干の意見を以下に述べさせていただきます。
 私の意見(5)での最初の指摘は、FPガス放出率のモデルとして、ウランの場合の単に定数倍をとるFINE及びFPACモデルが採用されているが、P.Blanpainらによれば、それらは必ずしも成り立たないということです。それに対してご回答では、燃焼度4万付近でFPガス放出率が高いのは、線出力が異常に高かったからだとのことです。第95部会の資料95−9−3でも、「当該燃料棒の出力が約22kW/mと高かったことによるものであることが確認されております」と、まるで4万付近の点の出力がすべて22kW/mであるかのように書かれ、かつ、高浜の3サイクル目の出力は18kW/mで低いと書かれています。ところがP.Blanpainらの論文では、出力22kW/mは燃焼度が4.3万の場合と特定されており、かつ、燃焼度4万付近の点集団は、出力が15〜22kW/mの範囲にあるとされ、低いとされた高浜の18W/mはこの範囲に入っています。
 FPガス放出率というのは、ペレット内部に蓄積されたガスのうちどれだけが外部に出るかという割合を示すものなので、内部から外部への放出経路の形成度合いに対応しているはずです。このような経路形成は微細構造に関係するので、たぶんに確率的様相を示し、燃焼度と出力だけで一意的に決まることはないと考えられます。P.Blanpainらの2001年論文の第2図で燃焼度<4万の制限が付けられているのも、4万を超えると第2図のような関係が必ずしも明確になっていないからではないでしょうか。ウラン燃料で高出力のデータがないとのことですが、これではFINEモデル等の妥当性確認は不可能です。
 もしあくまでもFINEモデル等が正しいというのであれば、燃焼度4万以上でガス放出率が異常に高いデータのすべてが、必ず出力も異常に高いことを実データで示すべきです。


玄海プルサーマル審査に関する原子力安全委員会への意見(8) 8月16日提出

(本文)
 次は、意見(5)へのご回答のうち、Puスポットについてです。文献7(1994.3)第4章の最初の記述から、この研究の最終目的がFPガス放出挙動の実験的解明にあることは明らかです。そこでは、最初のステップとして、Puスポットの温度影響が解析されています。
  この解析が拠って立つ仮定の最たるものは、「ペレット組成はPu同位体組織も含めて製造時組成とする」(82頁)、すなわち燃焼が進んでも内部構造は変化しないと仮定されていることです。この点は最後に総括されているとおり、「今後照射中のPuスポットの挙動を明確にするためにペレット製造時および照射後におけるPuスポットの特徴(寸法、Pu濃度、FP分布、微細構造等)に関するデータを採取し、照射に伴う製造時からのPuスポットの状況変化並びにPuスポットそのものの特性を、試験炉及び実機において詳細に把握することが望ましい」とされています。これはまさに、P.Blanpainらによって論じられているところであり、微細構造等の変化等は、Puスポットの温度にも影響を及ぼすはずです。
  したがって、文献7の初歩的結果を絶対化して安全性について結論を出すのは非常に危険なことです。第95部会ばかりか、今回のご回答までがこのような解析に依拠していることは驚きという他ありません。また、この解析の対象はBN-MIMUS法によるMOXペレットですが、ご回答によって、新しいコジェマMIMUS法によるペレットについては、解析がなされていないことが分かりました。コジェマMOXペレットを対象にして、文献7が目指したすべての研究が完了して初めて、安全かどうかが確認できることになるはずです。
  また、ご回答では文献9,10より、直径1,100μmのスポットがあっても安全だとのことですが、これはそのような1個をペレット表面に貼り付けた場合の実験結果で、内部状況に目を向ける今の観点からは、まったくの時代遅れだというべきです。


玄海プルサーマル審査に関する原子力安全委員会への意見(9) 8月16日提出

(本文)
  私の意見(6)へのご回答の前半について意見を述べます。玄海3号について専門部会を設けて審査すべきだという私の意見に対し、それを不要だとするご回答の論旨は錯綜していて明確ではありませんが、主に次の2つの趣旨を含んでいます。
 (A)「1/3MOX報告書」によれば、高浜3/4も玄海3もこの報告書の検討範囲内に入っており、「ウラン燃料炉心と同様に設計や安全評価ができる」と報告されている。出力の違いなどは「大きな審査上の課題とはされていません」。
 (B)「玄海3号機におけるMOX燃料の使用(?仕様)は、既に審査が行われた高浜3/4号機の例と、基本的に同じであり」、それゆえに(A)が適用できるので、直轄審査でよい。
  このうち(A)によれば、両機とも「1/3MOX報告書」で確認された処方箋が適用できる対象であるため、特別な審査など不要で、処方箋に沿っているという確認さえすればよいわけで、従って直轄審査で十分だということになります。(A)に立てば、高浜が審査済みかどうかは問題になりません。他方、(B)では、高浜が審査済みであることを、玄海が直轄審査でよいという根拠にしており、矛盾しています。もっとも、すでに指摘したように高浜の審査には瑕疵があるので、(B)の論理を玄海の安全性の根拠とすることはできません。
  いずれにせよ、直轄審査というのは処方箋に沿った判断だけでよい場合の審査だと、ご回答では自認しています。1995年の「1/3MOX報告書」から10年が経過しているのに、そのような消極的な審査姿勢で安全が守れるでしょうか。例えば、高燃焼度燃料の反応度事故時の挙動に関する判断基準は「1/3MOX報告書」時点から大きく変わっています。P.Blanpainらのような新たな知見も得られています。現に第95部会では詳細な審査をしています。あらゆる専門的知見を動員して詳細な安全性の検討をするべきです。


玄海プルサーマル審査に関する原子力安全委員会への意見(10) 8月16日提出

(本文)
  私の意見(6)へのご回答の後半について意見を述べます。その後半では、まず、フランスではプルサーマルが90万kW級に限定されており、玄海3号のような120万kW級が許可されていないのはなぜかという理由に触れ、次のように書かれています。「フランスにおいて90万kW級の軽水炉にしかMOX燃料装荷が行われていない理由については、技術的な理由によるものではないということが、次のホームページで紹介されています。http://www.jaif.or.jp/ja/data/mox/h121010.html 」。
 そこで早速そのURLにあるホームページを見てみましたが、そこには2001年9月末現在での「世界のMOX利用の現状」が表になって書かれています。フランスの欄には、FBRのフェニックスと、MOXを現に使用している20機のPWR及び「計画中」の8機のPWRの名称が書かれています。その「計画中」に(注)が付けてあり、次のようように書かれています。「技術的には装荷可能だが、以下の理由からEDFは当面、装荷手続きをとらないことを決定」。上記に引用したご回答内容は、このことを指しているのでしょう。
 ところが、このフランス欄に登場しているPWRはすべて90万kW級ばかりです。つまり、90万kW級であってもまだMOX装荷の許可が下りていないものについて、その理由が(注)で書かれているわけです。ここには120万kWのことなど、どこにも書かれていません。これがどうして、「90万kW級の軽水炉にしかMOX燃料装荷が行われていない理由」となるのですか。素人の一市民相手でも、この回答はちょっとひどいのではないでしょうか。
 なお、ドイツについてはご指摘のとおり、出力の大きい炉にMOX燃料が装荷されている例があります。ただし、ドイツでは(フランスでもそうですが)、最も重要な指標であるプルトニウム富化度がわが国の半分程度にしか認められていないことを付け加えておきます。