玄海3号機のプルサーマルに関する原子力安全委員会への要請書
玄海3号機のプルサーマルに関する安全審査に際し、
専門部会を設けての審査を行い、
一般からの意見募集を行なうよう要請します



原子力安全委員会
委員長 松浦 祥次郎様

2005年4月22日

 玄海3号機のプルサーマルに関する九州電力の原子炉設置変更許可申請(2004年5月28日付)は、今年2月10日付で貴委員会に諮問されました。しかし貴委員会は、この審査のための専門部会を設けず、意見募集も行なわない予定でいます。これは、事実上審査を行なわないことを意味します。
 なぜ、玄海3号機では専門部会を設けての審査を行なわないのでしょうか。高浜3、4号機における審査の経験があるからということですが、以下に述べるようにそれは理由になりません。
 高浜3、4号機(87万kW)に対し、玄海3号機(118万kW)は出力が大きく、プルトニウム量やMOX燃料集合体の炉内配置も異なります。冷却系が3ループの高浜に対し、4ループの玄海では、重大事故時の影響も異なります。
 沸騰水型原発においては、福島第一3号機(78万kW)についての専門部会(第96部会)の審査の後、より出力の大きい柏崎刈羽3号機(110万kW)の審査に際しても、専門部会(第97部会)が設けられました。この審査に、福島の約3ヶ月を上回る約7ヶ月もの時間をかけています。なぜ同様な措置が加圧水型原発の玄海3号機ではとられないのでしょうか。
 加圧水型原発でプルサーマルを行なっているフランスでは、MOX燃料を使用する原子炉はすべて90万kW級に制限されており、120万kW級の経験はありません。日本におけるMOX燃料の「少数体実証計画」の後の「実用規模実証計画」も、予定されていたのは80万kW級原発においてでした。
 日本のプルサーマルは、まず80万kW級原発で様子をみて、後に出力の高い原子炉で、というのがそもそもの計画だったのではないでしょうか。それをいきなり高出力の原子炉を対象にし、しかもその安全審査をまともに行なわないというのは無謀なことではないでしょうか。
さらに、高浜3、4号機の審査は1998年のことでしたが、その後、不正事件やデータ開示拒否、住民投票、事故により、プルサーマルに対する住民や国民の不信感はますます高まっています。不正事件に伴い、輸入燃料体検査制度も変更されています。
 1999年には高浜3号機用MOX燃料についてデータ不正事件が発生しました。その後、高浜4号機用MOX燃料の不正も明らかになりました。不正を指摘した市民の声を無視し、不正はないと主張した国、電力の信頼は失墜しました。2000年に提訴された福島第一3号機のMOX燃料使用差止裁判では、東京電力がデータの開示を拒否し続け、裁判所の決定文で批判を受けました。その後、福島県知事はプルサーマルを拒否し、実施が凍結されました。2001年には、新潟県刈羽村の住民投票においてプルサーマル反対が多数を占め、柏崎刈羽3号機のプルサーマルも凍結しました。その後、2002年の東電の不正事件もあり、新潟県と福島県では、プルサーマルの事前了解は白紙になっています。昨年発生した関西電力美浜3号機の事故により、高浜原発におけるプルサーマルも暗礁に乗り上げたままです。
 貴委員会は、以上のような経緯も踏まえ、玄海3号機の安全審査については、より慎重に、かつ広く国民の意見を反映する形で行なうべきです。

以上

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60団体28個人

連絡先:原子力資料情報室、福島老朽原発を考える会