福井県知事 西川一誠 様 1月23日に私たちが提出した「質問ならびに要望書」に対し、原子力安全対策課長から1月28日付で丁寧に文書回答をいただきました。この文書回答の内容と、私たちが2月14日に大阪市内で行った関西電力との交渉内容を踏まえて、今回新たに要望書を提出いたします。 そのため、まずは以下において、2月14日の関電交渉で浮上した問題点を整理し、それに基づいて要望事項をまとめました。 1.関西電力の「トラブル低減策」について (1)「今年度の異常事象の増加について分析は行っていない」(関電) 関西電力は1月30日に、福井県知事が要求していた4項目に関する報告書を県に提出しました。県知事は、同日、プルサーマル計画の準備作業再開を了承しました。しかし、県知事が要求していた、今年度の異常事象の増加については、過去5年間のトラブル分析を行っただけです。2月14日の交渉で関電は、「今年度の異常事象の増加について分析は行っていない。だから今年度にトラブルが増加した原因は分からない」と平然と語りました。昨年12月には原子力事業本部副本部長がトラブル増加に対して「緊急非常事態と認識している」と語ったにもかかわらず、今年度のトラブル増加の分析も行っていません。これでは、県知事の要求を無視しているのも同然です。 (2)「これまで水平展開を主としてやってきた」(関電)−−福井県安全専門委員会の指摘を全く軽視 関電の「トラブル低減策」については、1月16日の福井県安全専門委員会でも議論され、委員からは「大飯2号機の2次系配管の減肉は、水平展開の突っ込み不足」という厳しい意見が出されました。また、安全対策課長の文書回答でも「1月16日の県原子力安全専門委員会での審議結果等を踏まえ、より実効性の高い取り組み計画の策定が進められており・・」と、専門委員会での審議結果を重視した「トラブル低減策」が出てくることを確信されています。 この問題について関電は、交渉の場で過去の関電の姿勢について「これまで水平展開を主にやってきた」という驚くべき回答をおこないました。「もともと水平展開に力を入れてきた」というのが関電の見解で、県の委員会での指摘をまったく軽く受け流しています。実際に交渉の場では、大飯2号の配管減肉について、「データを取得していた」と17年前に肉厚測定していたことにしがみつき、決して水平展開不足だとは認めませんでした。このような関電の姿勢は、県の委員会をも愚弄する、安全軽視の姿勢そのものです。 2.プルサーマル計画の準備作業再開に関して (1)「高浜4号機のMOX燃料データねつ造は主な経緯ではない」(関電) 関電は1月30日にプルサーマル計画の準備作業を開始すると発表し、同時に「当社のプルサーマル計画について」と題する資料を公表しました(別紙参照)。その「主な経緯」では、「1999年9月13日 MOX燃料データ問題が発覚(高浜3号機用燃料)」と記載されていますが、高浜4号機でのデータねつ造と12月16日にプルサーマルを中止した経緯は書かれていません。交渉でその理由を問うと、「主要な経緯ではない」との回答でした。3号機用のデータねつ造が発覚した後も、関電は福井県や国に対しても「4号機ではデータねつ造はない」と嘘の説明を続けていました。それを隠し通せなくなって、私たちが訴えていた裁判の判決前日の12月16日にデータねつ造があったことのみをやっと認めました。県や国にまで嘘の報告をし続けたことに対し、福井県は関電を厳しく非難されました。また、この関電のBNFLデータねつ造事件によって、国はMOX燃料の輸入燃料体検査制度を変更するなど、より厳しい体制を作っていく契機ともなった大事件でした。 その当の関電が、いまプルサーマル計画の準備作業開始にあたって、高浜4号機のデータねつ造とプルサーマル中止を「主要な経緯」ではないと公言しているのです。このことは、関電がいまだに高浜4号機でのデータねつ造事件を真摯に反省していないことの現れです。このような経緯を社の見解として出したことに対する責任が厳しく問われてしかるべきです。このような姿勢で、プルサーマルを再開するなど到底許されるものではありません。 (2)「アレバ社にペレット寸法データの公開は要求する」しかし「監査では協議しない」(関電) 関電は、2月18〜21日の日程でフランスのメロックス工場の監査を行いました。その監査に先だって、14日の交渉では、BNFL事件の教訓から、少なくともアレバ社に対して、ペレット寸法のデータ公開を関電として要求するかを問いました。関電は、「当社としてはデータを公開するよう要求する」と明言しました。ただ、その件は「アレバ社と協議する」とも答えました。また、交渉の後日「今回の監査では、そのような協議はしない」との回答がありました。このままでは、本契約を結んだ後に「協議した」が、データ公開はできないという結果も当然予想されます。 3.耐震安全性について 原子力安全対策課長の文書回答では、「耐震安全性の評価結果については、県原子力安全専門委員会の審議等を通じ、厳正に確認していきます」との回答でした。浦底断層の活断層評価を巡って、地震専門家から日本原電の評価が過小であるとの指摘がなされています。原電の浦底断層の評価は、関電の原発にも適用されているものです。関電のプルサーマル再開については、この浦底断層の評価をはじめ、耐震安全性の確認が大前提となります。 そのためには、原電や関電が行っている活断層調査の詳細資料が公表される必要があります。 また関電は、プルサーマルの準備作業再開にあたって「六ヶ所再処理工場の本格運転も迫っている」ことをその理由としてあげました。しかし、六ヶ所再処理工場ではガラス固化技術の欠陥が露呈し、ガラス固化工程の試験は「追試」となり、日本原燃は竣工を5月に延期すると発表しました。そのため、関電のプルサーマル計画もなんら急ぐ必要はなくなりました。耐震安全性に関する議論が広くなされるべきです。 以上のように、関西電力の安全性軽視の姿勢では、プルサーマルを再開する資格などありません。事実、今年に入っても、関電の原発ではトラブルが発生しています。 よって、以下を要望します。 要 望 事 項 1.関西電力のプルサーマル本契約を認めないでください。2.関西電力に対して、以下の点を指導してください。 (1)県の委員会をも愚弄する「水平展開はこれまで主にやってきた」という主張を撤回すること。大飯2号の配管減肉は「水平展開の突っ込み不足」だったことを認めること。 (2)関電プルサーマルの経緯について、「高浜4号機のMOX燃料データねつ造は主な経緯ではない」という主張を撤回すること。このような経緯を社の見解として出したことの責任を明らかにすること。 (3)活断層調査の詳細資料を公表すること。耐震安全性のバックチェックが終了すれば、それを広く議論にかけ、安全性を確認すること。 2008年2月28日 グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之 大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581 (08/02/28UP) |