使用済MOX燃料の行方に関する国との交渉結果を踏まえた
福井県への要望書
使用済MOX燃料の処理方策について国と関電に公的な場での説明を求めてください
処理方策が具体的に明らかにならないうちのプルサーマル実施は認めないでください


福井県知事 西川一誠 様
2009年7月7日

 関西電力は来年にも、高浜原発3・4号機でプルサーマルを実施しようとしています。しかし、4月23日付貴職への要望書でも指摘しましたが、使用済MOX燃料の行方はまったく不透明な状況にあります。それどころか、5月18日の国との交渉で確かめたところ、現実の状況や国の施策は、貴県等の国への要望に反して、むしろ後退していることが明らかになりました。さらに、プルサーマル計画の実施時期も5年先延ばしにすることが決定されました。このような状況を踏まえて、改めて貴職に下記の要望をいたします。

 貴県を含む原子力発電関係団体協議会は、今年5月28日付で「原子力発電等に関する要望書」を国に提出されていますが、その中で使用済MOX燃料に関係しては、「重点要望項目」として次の項目を挙げられています。
「C 使用済MOX燃料が、発電所に長期間貯蔵され続けないよう、日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場に続く、いわゆる第二再処理工場の検討を早期に開始し、具体的な処理の方策を決定すること」。
 昨年11月14日付の要望書では、これに該当する項目は次の表現になっていました。
「C 使用済MOX燃料が、発電所に長期間貯蔵され続けないよう、処理体系を早期に決定すること」。
 明らかに今春の要望内容は昨秋より具体的になり、しかも「重点要望項目」に格上げされています。この要望の強化は、県民の不安が広がっているにもかかわらず、貴県等の要望が容易に実現されないという実情を反映したものと推察されます。

 この問題で私たちは、5月18日に国会議員ヒアリングとして国と交渉を行いました。そのとき提出した質問・要望書には全国すべての都道府県から420団体が提出団体として名前をつらねています(別紙資料1)。国からはすべての関係省庁(資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、原子力委員会事務局、原子力安全委員会事務局、文部科学省)から12名が出席しました。そこで、使用済MOX燃料の処理方策に関して次の点が国によって確認されました。この確認は、島根原発の地元である松江市の質問書に対する資源エネルギー庁の回答に基づいて行われました。松江市の質問内容は原子力立国計画に基づいていますが、資源エネルギー庁の回答は立国計画ではなく、原子力政策大綱に基づく内容になっています(別紙資料2中の資料1と2参照)。

5月18日の国の回答

(1) 使用済MOX燃料の処理方策は現時点で決まっていない。
 これは、原子力政策大綱で「処理の方策は、・・・2010年頃から検討を開始する」と書かれていることの当然の帰結です(別紙資料2中の資料2参照)。
(2) 処理方策の検討開始の時期は、六ヶ所再処理や「もんじゅ」の進捗状況を考慮に入れて決定する。
 これは、原子力政策大綱で、「処理の方策は、六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況、・・・等を踏まえて2010年頃から検討を開始する」と書かれていることの当然の帰結です(別紙資料2中の資料2参照)。
(3) 六ヶ所再処理工場の運転開始や「もんじゅ」の運転再開は原子力立国計画に書かれている予定から約2年は遅れている(別紙資料2中の資料5参照)。
 この事実と上記(2)の判断からすると、使用済MOX燃料の処理方策の検討開始が予定より2年は遅れて当然だとなるでしょう。
 なお、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、再処理で本質的に重要な位置にあるガラス固化の行き詰まりによって遅れており、そこの進捗率は2007年末から53%のままです。
(4) 第二再処理工場を建設することは今現在確定しているわけではない。電気事業者が主体になるか国が主体になるのかも決まっていない。
 第二再処理工場を建設すること自体が決まっていないことは、中部電力もはっきり認めている点です。他方、原子力立国計画の中に「六ヶ所再処理工場の操業終了時頃(2045年頃)に第二再処理工場の操業を開始」と書かれていることから(別紙資料2中の資料4参照)、あたかも第二再処理工場の建設が決定済みであるかのように解釈されている向きもあります。しかし、今回の資源エネルギー庁の回答はこのような解釈を明確に否定したものです。この回答の判断は、原子力政策大綱の次の記述に依拠しているものと考えられます。「この[処理方策の]検討は・・・、その[検討の]結果を踏まえて建設が進められるその処理のための施設の操業が六ヶ所再処理工場の操業終了に十分に間に合う時期までに結論を得ることとする」([]内は引用者の注釈)。つまりこの記述では、施設(第二再処理工場)の操業が六ヶ所再処理工場の操業終了に間に合うよう検討の結論を出すと述べているだけで、第二再処理工場の建設は既定の方針だというわけではありません。
(5) 第二再処理工場に関する五者協議会での準備的検討は進んでいない。事実、今年3月末に出すはずだった「最終成果報告」が出されていないし、いつ出せるかも分からないし、なぜ遅れているかは言えないとのこと。それどころか、2007年度中に出すはずだった「中間成果報告」さえ未だ出されていないとのこと(別紙資料2中の資料6参照)。

 このような国の回答が示す実情は、貴県等の「第二再処理工場の検討を早期に開始し、具体的な処理の方策を決定すること」という切実な要望に明らかに反するものです。それゆえ、いま急いでMOX燃料を炉内に装荷すれば、その結果出現する使用済MOX燃料については永久に原発サイト内に置かれる可能性は否定できません。
 なお、このような見解は、6月16日付で21名の国会議員から経産大臣に提出されていることを申し添えておきます(別紙資料3)。また、6月12日に電事連がプルサーマルの実施時期を5年延期したことにより、少数の原発だけで急いで実施する理由もなくなっています。
 私たちはこの要望書で、5月18日の国の確認事項を貴職にお伝えするものですが、その真偽のほどについては、もちろん貴職自ら国に確かめられるべきことだと思います。また、関西電力がこの問題で貴職に説明したのは1998年のことで、その後の実情の変化を踏まえた説明は何もなされていないということです。

 以上の考えから、以下の点を貴職に要望いたします。

要 望 事 項

1. 使用済MOX燃料の処理の具体的な方策について、国と関西電力が公的な場で県民等に説明するよう求めてください。

2. 少なくとも処理の方策が具体的に明らかになるまでは、高浜原発3・4号機でのプルサーマル実施を認めないでください。


2009年7月7日
  グリーン・アクション(京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL:075-701-7223)
  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
              (大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3F TEL:06-6367-6580)


(09/07/07UP)