福井県知事 西川一誠 様 2008年12月9日 その輸入燃料体検査申請書の添付書類六「品質保証の計画に関する説明書」(以下、申請書)の内容には下記のような重大な欠陥があると私たちは考えます。 これらの欠陥について厳格に検討され、申請書を認めないとの意思を表明されるよう要望します(なお、原子力安全・保安院には12月1日付で同趣旨の要請書を提出しました)。 申請書・添付書類六「品質保証の計画に関する説明書」の内容に関する重大な欠陥 1.2001年に保安院が合格にはできないと判断したMOX燃料の製造を、メロックス社にMOX製造能力があることの根拠としている 関電は申請書6−3頁の「(2)メロックス社の評価」において、「メロックス社がMOX燃料製造メーカとして当社の要求事項を満たすMOX燃料集合体の製造を行う能力を有すること」の根拠の中に、「過去に実施した当社向けMOX燃料集合体の製造実績」を含めています。 また、申請書6−2頁では、「a.原燃工の技術能力」として、「原燃工は、1999年から2001年にかけて実施したメロックス社での当社向け原燃工仕様MOX燃料集合体の製造において、ペレット以外の部品をメロックス社に供給するとともに、メロックス社を指導し、MOX燃料集合体を製造した実績を有している」と記述しています。 つまり関電は、メロックス社と原燃工の能力認定の中に、1999年から2001年にかけてのメロックス社における関電向けMOX燃料の製造実績を含め重視しています。 しかし、このMOX燃料は、保安院が2001年11月29日付で、「製造期間を通じてMELOXへ社員を派遣し、製造状況及び品質保証活動について確認を行うことが満たされていると確認できないため、申請が行われても合格とすることはできないと判断する」と通達した、まさにそのものです。 この通達を受けて関電は2001年12月26日に、「当該MOX燃料の品質に問題はないとする当社主張が受け入れられない旨の経済産業省の回答は、原子力安全規制行政を担う官庁としての最終のご判断と受けとめました」として、「約60億円の負担が見込まれる」もののメロックス製MOX燃料の加工を中止することを決定しています。 つまり、「品質に問題はない」とする関電の主張が認められなかったことを、関電自ら認め加工を中止しているのです。それにもかかわらず今回、このときのMOX燃料を製造実績に含めることは、保安院として到底容認できないことではないでしょうか。関電はBNFL事件のときに、得ていた不正情報を規制当局にも知らせないまま隠していましたが、またも事実上規制当局の判断に背く意向を示しているのではないでしょうか。 2.保安院がメロックスを直接立ち入り調査できるような契約を結んでいない 規制当局の立ち入り調査については、申請書の6−6頁「3.2.4 製造状況等の確認について」の項目で、「規制当局の立ち入りについては、必要に応じて規制当局が原燃工およびメロックス社に立ち入り、当社の品質保証活動の妥当性について調査を行うことができることを契約書に定めている」としています。 また、今年10月20〜23日に実施した「メロックスに対する定期監査について」の中で、「d.輸入燃料体検査制度への適合の結果確認」の項目において、「規制当局が必要に応じ、メロックスに立ち入り、当社の品質保証活動を調査することを受け入れる」ことが、「メロックスの管理文章に定められていることを確認した」としています(申請書6−56頁)。 結局、規制当局が行うことができるのは、関電の品質保証活動の調査に限られているということで、メロックスを直接調査することは契約に含まれていません。 ところが、BNFL事件を踏まえて改正された電気事業法施行規則に関する、保安院の2000年7月14日付通達「MOX燃料体に係る輸入燃料体検査について」等では、保安院がメロックスを直接調査できる契約が要求されています。 この通達付属の「電気事業者及び燃料加工事業者の品質保証に関する確認事項について」の「2.輸入MOX燃料に係る事項」では、「(4)製造状況等の確認について」の項で、「電気事業者は、規制当局が必要に応じ、元請け企業及びMOX燃料加工事業者に立入り、調査を行うことができる旨、元請け企業及びMOX燃料加工事業者が定めていることを確認すること」となっています。つまり、規制当局が必要に応じて加工業者(今回の場合はメロックス)に立ち入って調査できるような契約にしておくことが要求されています。 同様の趣旨は、関電のBNFL事件後に設置された「電気事業審議会基本政策部会」が2000年6月22日にまとめた「BNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会報告」にも、「同時に、電気事業者の品質保証に関する取り組みをより確固たるものとするためには、規制当局である通商産業省がその活動状況を定期的に確認するとともに、必要な場合は調達先に対する監査・検査が可能となるよう、事業者間の契約に担保させることも必要と考える」(報告書22頁)と明記されています。 すなわち、保安院が調達先(今回の場合メロックス)に対して監査・検査が可能となることを担保するよう求めています。 このような要求は、BNFL製MOX燃料データねつ造事件で、関電がデータねつ造の事実を知っていながら保安院に報告することもしなかったという深刻な事態に対する教訓として設けられたものであり、それゆえ、規制当局が「調達先に対する」監査を行う必要を認めたものであって、「関電の品質保証活動」を調査するものではないはずです。BNFL事件を引き起こした当事者である関電が、このように事件の教訓を省みることのない姿勢でいることに対し、規制当局として厳しい態度で臨まれる必要があるのではないでしょうか。 3.製造期間を二次混合からと規定し、プルトニウムの管理を放棄している 申請書では「製造期間」について、「製造期間(メロックス社での当社向けMOX燃料集合体のための二次混合開始から全燃料集合体の組み立て後の検査完了までの期間)」(申請書6−6頁)と規定しています。そのため、国が要求している「製造期間を通じた・・・製造状況及び品質保証活動についての確認」とは、この二次混合開始の時点からとなるわけです。 メロックス社のMOX燃料製造方法は、MIMAS方式と呼ばれるもので、一次混合としてプルトニウム約30%のMOX燃料を製造し、それを元に、顧客の要求するプルトニウム富化度に応じて、二酸化ウランを加える2段階混合方式となっています。 他方、申請書の別紙6−4の6−68頁では、「原燃工の品質保証について」の「4.4.4 MOX燃料集合体発注先の管理」、「(7)顧客の所有物」の項で、「顧客の所有物である二酸化プルトニウムについて、MOX燃料集合体の発注先における管理を確実にする」と明記されています。 「顧客(関電)の所有物である二酸化プルトニウム」は、まず一次混合で使用されるはずです。しかし、メロックスにおける関電や原燃工が実施する品質管理が「二次混合開始から」とすれば、どうやって、関電所有のプルトニウムを管理することができるのでしょう。また、原燃工が行うメロックス工場における関電のプルトニウムの管理をどうやって行うのでしょうか。関電は、自ら所有するプルトニウムの管理について、根本的に重要な最初の段階の管理を放棄していることになります。このような欠陥のある契約に基づく申請書は到底容認されるべきではありません。 2008年12月9日 グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之 大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581 (08/12/09UP) |