関電・高浜4号原発でのプルサーマル計画をやめさせるため、11月19日、重大なデータ不正疑惑のあるMOX燃料の使用差止の仮処分を求めて大阪地裁に提訴しました。不正疑惑問題を連携して追及してきた美浜の会とグリーン・アクションの緊急の呼びかけに応え、わずか1週間ほどで福井、大阪、兵庫、京都、和歌山、奈良、滋賀に住む212名が原告としてこの裁判を始めることになりました。 19日午後2時、大阪地裁に申立書を提出しました。一方関電側は、提訴前に代理人をつけるという極めて異例の対応をとってきました。 提訴後に行われた原告団集会では、代理人の冠木弁護士から仮処分の内容や見通しについて話がありました。続いて参加した原告一人一人がそれぞれの思いや決意をのべ、裁判の中でのデータ不正疑惑の追及と法廷の外での運動を結びつけながら取り組みを進めていこうということになりました。 11月19日午後2時、快晴。いよいよ提訴だ。呼びかけから実質わずか一週間、212名が原告に名乗りを上げた高浜4号の疑惑MOX燃料使用差止仮処分の申立て。関電相手の裁判闘争の幕があがる。実際に止めるにはこれしかない、何としても止めてやる。さまざまな思いを胸に大阪地裁正面玄関前に集まった原告40人。待ち構える報道陣のカメラの列。フラッシュを浴びながら、代理人の冠木弁護士を先頭に裁判所構内に入る。そのまま3階に上がって申立の受け付けへ。カウンターの前の狭い通路を立錐の余地なく埋めた原告たちが見守る中、申請書類が積み上げられる。手続きは淡々と進んでいく。だがこの一山の書類に私たちの、そして何百万という人々の運命がかかっていることを思わずにいられない。すでにこのときには、関電側は代理人をたてたことを通告してきていた。提訴前から代理人を立てるなど、聞いたこともない。この裁判がいかに関電の急所を鋭くついているか、はからずも示す。 場面は変わって司法記者クラブの会見場。ずらりと並んだテレビカメラが6台。マイクもすでにセットされている。照明がまぶしい。記者は15、6名ほどだろうか。カメラの列の正面に原告代表6名と代理人が着席、その後ろにも原告7、8名が並ぶ。残りの原告も全員会見室に入り、進行を見守る。冠木弁護士が裁判の概要を述べる。用意したグラフを示しながらの説明は簡潔でわかりやすい。若干の質疑があって終了。裁判所を後にし、近くに用意された原告団集会の会場に向かう。 提訴の呼びかけ自体が緊急。この日の提訴と集会も緊急に決まった。原告どうしが落ち着いて顔を合わせるのはこの集会が初めてだ。予定よりだいぶ遅れて始まった。最初に当会代表の小山が提訴へ至る経緯について説明。膨大なデータの分析を通じてくっきり浮かび上がってきたデータ不正の疑惑。追及に対して何一つ応えられない関電。福井県知事への要望、通産省交渉での無責任な対応。グリーン・アクションと共同で進めてきたこの間の不正疑惑追及の活動を紹介しながら、提訴に踏み切ったいきさつを語る。最後に、仮処分という短期集中の闘い、絶対にMOX装荷を許さないと気持ちでやっていくとこの裁判に望む強い決意を披露。 続いて冠木弁護士が立つ。仮処分の意味と内容についてわかりやすい説明が続く。 ―――高浜2号の運転差止裁判の時とは違って、現に動いているものを止めるのではない。使用前に止めるのは裁判所としてもやりやすい。証明された事実を客観的事実と認定して出される本裁判の判決に対し、仮処分の決定は、証明の程度には至らないが「だいたいそうであろう」という疎明の程度で事実を認定して出される。わかりやすい一例として、三千万円を貸している相手が自宅を売却して逃げる恐れのあるときに、借用証書などをもって裁判所に行き、家を売るなという決定を即座に求めるのが仮処分。今回の仮処分申立では、@MOX燃料の使用の差止、Aその燃料の差し押さえ(福井地裁執行官の占有下におく)を求めている。想定される結果として、@、Aとも認められるケース、@のみ認められるケース、両方とも認められない場合でもデータ不正についてその存在を認める、認めない、判断しないというケースが考えられる。仮に請求そのものが認められないとしても、不正の存在が認められれば、運転の根拠を強く問うことができる。いずれにせよ、不正の有無を認めさせるか否かがこの裁判の最大の争点となる――。 続いて質疑。福井現地の吉村さんからは、プルサーマル反対の世論が5割を超えており、運動の追い風となっていること、裁判で関電を追及することは、直接・間接に背後にいる国、エネ庁を追及することになること、県に対して安全委員会との公開討論会を開くよう申し入れていること、これと裁判とを軸に県内の運動を進めていくことなどが訴えられる。 短い時間ではあったが、法廷内での事実と科学的な論拠に基づく不正疑惑の追及とともに、争点を広く、わかりやすく多くの人たちに訴えていく必要性、法廷の内外の運動を結びつけて取り組みを進めていく必要性などについて、意見交換が続く。 最後に原告一人一人がひとことずつ、それぞれの思いと決意を述べる。「今やらないでいつやるのかという気持ちでやっていきたい」、「関電の対応を見ていると、もう裁判しかないという気持ち」、「これまで運動に縁のなかった人が原告になってくれたが、ウソはいかんと言ってた」、「年内には何としてもやるという関電社長の今日のコメントを見て怒りでいっぱい、何としてもへこましてやりたい」、「MOXだけでも嫌だったのにデータ不正なんてともでもない、呼びかけを受けてほんとにうれしく、近所の人たちに声をかけた」、「裁判闘争と百人署名の広範な取り組みとを結びつけてがんばりたい」・・・・・。最後にグリーンアクションのメンバーは、「クリスマスはカナダに帰る予定だったがやめにした。みんなで勝利の乾杯をあげよう」と勝利を確信した力強いアピール。 それぞれに表現の仕方は違っても、裁判にかける強い決意がひしひしと伝わってくる。原告全員の気持ちが完全に一つに融合した。この場に参加した人たちだけでなく、都合で参加できなかった人たちも含めた原告212名全員の心がひとつであることを確信させる。この日が出発点、これからが本当の闘いだ。道は決して平坦ではないが、この団結の力を基礎に、全力で頑張ろう。最良の結果を勝ち取るために。 |