1999年12月19日 グリーン・アクション TEL:075-701-7223; FAX:075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 TEL:06-6367-6580; FAX:06-6367-6581 我々は、「疑惑のMOX燃料を使わせない」ことを目的として、大阪地方裁判所に仮処分を申し立ててきましたが、この目的は完全に達成されました。関西電力は、裁判所が決定を出す直前の12月16日に、高浜4号機用MOX燃料をすべて放棄すること、さらには、高浜3号機用のMOX燃料も4体分だけでなく8体分すべて放棄することをも、自ら決定しました。 我々は完全に勝利したのです。そして、この勝利へと向かう今回の事態の経過の中に、まさに脱プルトニウムへと向かう大きな流れがあることを、強く感じざるを得ません。 この勝利をもたらした原動力は何といっても、裁判に訴えてでもプルサーマルを止めたいという原告212名の強い決意であります。この決意で裁判を構えたこと自体が、勝利を目指す意気に燃えた活動が、イギリスに、国会に、各方面に波紋を呼び起こし、イギリスを含む大きな協力関係へと発展していきました。その中で生まれた逐一の成果は、裁判での我々の主張と証拠書類に次々と反映され、これらが一体となって関西電力を追いつめていきました。関西電力がMOX燃料の装荷を断念せざるを得なくなったのは、まさにこれらの活動総体の成果であります。またこの成果は、これまで各方面の多くの方々の努力によって積み上げられてきた情報公開などの財産に依拠したものであります。この点で、各方面のご協力に深く感謝するとともに、勝利を共通のものとして、ともに喜びを分かち合いたいと思います。 大変忙しい中、熱意をもってこの問題に取り組んでくれた3名の代理人に心から感謝します。裁判の経過では、関西電力の立証放棄の姿勢と裁判所の関西電力に対する「求釈明」の内容から見て、我々は勝利を確信していました。女川原発裁判の判決が我々の論理立ての基本線となりましたが、この判決では基本的な立証責任を電力会社側に負わせ、非公開の資料を公開することまでをも義務づけています。この点で今回裁判所の決定は、原告側が勝利する可能性のあるテストケースとして非常に興味深いものがありました。もし本当に勝利した場合、我が国の原発裁判では初めてのこととなり、それは反原発裁判全体を大きく鼓舞するものとなったことでしょう。 しかしそれを察知したのか関西電力は、そして恐らく権力全体の意向が働いて、裁判所の決定直前にMOX燃料の使用を断念することを公表したのです。その結果残念ながら、運動も裁判もほとんど報道されないという「成果」を、関西電力は奪い取ったのです。 関西電力は、運動に押されて断念したとは決して認めないでしょう。イギリスの検査局(NII)とBNFLが新たな不正事実を公表したがために、やむなく不正を認めざるを得なかったこと、ただそのことだけしか認めないに違いありません。 実際関西電力は、「燃料データに不正があっても安全性が損なわれることはない」などと、燃料使用を断念した後でもまだ未練がましく主張しています。この主張こそが、今回の過程における関西電力の姿勢の特徴を如実に示しています。ただ自分の便宜・利益のために住民の安全を無視し、原子力がよって立つべき安全の根本を忘れ、自分自身が立てた安全判断の基礎を自ら掘り崩しているのです。このような態度をとらなければやっていけないとは、これこそが原発推進体制の世紀末の姿を表しているのではないでしょうか。ここに一体となって加担した通産省と原子力安全委員会も、その責任を厳しく問われるべきです。 我々原告団は12月17日に、これまで様々な努力をしてプルサーマル反対を闘ってきた諸団体とともに、関西電力本店に出向いて広報部の庄野副本部長と会見しました。その場で確認したことは、関西電力として今回の調査判断の誤りがなぜ生じたのかを含めて調査し、その結果を部長クラス以上の責任ある立場の人を出して公開の場で我々に説明し、討論に応じるということです。 しかし、本当にこれまでの姿勢を反省するのかどうか、そのことはまさに「全数検査で安全性が保証される」という暴論を撤回するかどうかによって計測されるでしょう。さらに、我々が提起した統計的判断に反論もできないまま、誰が見ても虚偽にしか見えないような説明をなぜ繰り返したのか、このことの反省もなされるべきでしょう。 要するに、今回裁判の過程で書類によってだけ行われてきた論争が、この説明討論会という公開の場で、初めて実際に直接的な論争の形をとるわけです。この公開の説明討論会に多くの人たちを結集し、これを次へ進むための運動の重要なステップとしなければなりません。改めて裁判資料を学習・検討する活動をいろいろな場で準備していきましょう。 今回の事態によって、替わりのMOX燃料をどこでいつ作るのかさえ不透明になり、高浜原発プルサーマルは実施の時期を大幅に延期せざるを得なくなりました。そればかりでなく、東海村事故に続いて原子力推進の無責任体制が再び暴露されたのです。当該自治体も推進を無条件に認めるわけにはいかないと言わざるを得なくなっています。つまり、プルサーマル推進そのものを改めて問題にする新たな条件が生まれているのです。この新たな条件がいかなるものかよく見極めていきましょう。 我々がもたらした結果は、単なるMOX燃料の不正疑惑という枠を超えて、プルサーマルの中止、プルトニウム利用からの撤退、核燃料サイクルの根本的見直しへと大きく発展する契機を含んでいるし、現にそのように発展する兆候がすでに見られるようになっています。 今回の勝利を次への基盤とし、この勝利の意義と責任を自覚し、よく学習検討し討論し、様々な協力関係をさらに発展させながら、積極的に前へと進んで行こうではありませんか。 |