東電社長は、9月2日の辞任発表の記者会見で、今回の隠ぺいの原因として、「原子炉の安全維持基準が現場の実態に即していない」「原子炉に傷があってはならないという状況が現場作業員に対する大きなプレッシャーとなり、安全上問題なければ公表を避けたいという甘えた判断になった」と述べました。すなわち、隠ぺいしたのは、「損傷があってはならないという基準が厳しすぎるから」だと言うのです。不正を働いていながら、その原因は検査の基準が厳しいからと居直っています。 経産省の原子力安全・保安院は、この発言を批判するどころか、待ってましたとばかりに、「維持基準」「事後保全」の概念を新たに導入し、定期検査の簡略化等を狙っています。盗人猛々しいとはこのことです。ひび割れなどの損傷があっても「安全性に問題がない」と判断すれば補修を行う必要なし。これが「維持基準」の導入です。さらに、冷却水等の「少々の」漏れがあっても、すぐに運転を停止して補修することなく、次の定期検査の時など、事後に修理すればいい。これが「事後保全」です。 「検査の在り方検討会」の斑目春樹委員長は、東電の今回の不正事件に関して、「どんな損傷もあってはならないという基準があると、かえって現場で損傷を損傷としない勝手な判断が入り込む余地が生まれる」。さらに別の委員は「どんな損傷もあってはならないという考え方もおかしい」[8/30読売新聞]と述べています。先の東電社長の発言とうりふたつです。 これらは、電力自由化の中で、原発の経済性追及を最優先にして、原発事故の危険を一層高めるものです。 経産省は内部告発があってから、2年間も隠し続けてきました。東電の協力が得られなかったとして東電に罪を押しつけ自らの責任にはほおかむりしています。このことについては、福島県知事等、原発立地点の地元首長達からも厳しい批判の声があがっています。当然です。さらに、福島原発U−3号炉のシュラウドひび割れについては、早い段階から経産省も事実を知っており、東電と一緒になって隠ぺいしていたという具体的な疑惑が濃くなってきました[抗議並びに要求書、質問書参照]。東電の責任はもちろんのこと、これら経産省自身の責任を徹底して追及しよう。 同時に、原発の検査制度全般を改悪しようとする国の危険な動きにストップをかけよう。 |