双葉町町長 岩本忠夫殿 東京電力の原発損傷隠しはとどまるところを知りません。自主点検記録不正、再循環系配管の損傷隠し、定期検査の原子炉格納容器気密試験データ偽装、そして総点検での新たな損傷隠しまで発覚しました。格納容器の件は社内調査でも隠され、日立製作所等の証言から判明し、東京電力の底深い隠蔽・不正体質が証明されています。 原子力安全・保安院は、福島第一原発1号機格納容器漏洩率検査偽装事件で、原子炉等規制法違反の運転停止処分を発表したものの、電気事業法違反は刑事告発を見送りました。これまで国と事業者は、「原子炉で事故が起きても格納容器があるから安全だ」としてきましたが、県民は、安全確保上の最重要機器での、国の検査官立会いの中で行われた、日本原子力史上例のない犯罪行為に驚愕しています。安全性の捏造によって、定期検査に対す る信頼性は根底から崩壊しました。法の趣旨からも、安全性を捏造する者に原子炉運転の資格はありません。 経済産業委員会は、「電気事業法及び原子炉等規制法の一部を改正する法律案」等を審議中です。維持基準(健全性評価基準)導入は、検査の簡素化による原発の高稼働率運転をめざし、本年2月から検討され2004年頃実施予定だったもので、今回の不正防止のために作られたものではありません。維持基準導入は、改正案の第3条で、電気事業法第55条の改正として盛り込まれているものの、具体的には経産省令によるとされ内容は不明です。これまでの「新品同様」から「多少の傷でも運転可能」という検査の根本的な変更にもかかわらず、国会にその具体的内容を示さないまま、省庁側に白紙委任するもので、国会を軽視し議会制民主主義をゆるがせにする大問題です。 また、維持基準として使用が予想される日本機械学会「維持規格」では、欠陥の評価期間が設定され、欠陥の進展が基準内であれば期間中の運転が認められるというもので、その期間は無検査となります。さらに、健全性評価の問題点として、 1)検査データの情報保存は規定された(1条)が、情報公開のシステムがない 2)SUS316Lの応力腐食割れのメカニズムや進展速度などが解明されていない 3)運用する原子力安全・保安院等の評価・審査能力と体制に疑問があり、信頼性がない 4)健全性評価をチェックする機関がない など大きな問題が指摘されています。「原子力安全基盤機構法案」に基づく原子力安全基盤機構については、所管は経済産業大臣、主務省は経済産業省で、独立法人とは名ばかりで経済産業大臣の要求権があり、経済産業省からの独立性も保障されていません。 結局、法改正の目的は、欠陥ボロボロ原発の延命とコストダウンにあることが明らかになっています。だからこそ、次にくる悲惨な破局的事故を未然に防止するため、この二法案は廃案が相当なのです。 県議会は「新しい検査制度検討は立地地域の合意形成を図って慎重に行い、維持基準の具体化は見合わせる」ことなど10項目の意見書を満場一致で採択しました。県知事はじめマスコミ各社も含めて県内世論は官民問わず「維持基準」導入は時期尚早で、強行は県民の安全への願いを踏みにじるものと、国への不信を強めています。 不正防止の前提は、まず一連の不正の徹底解明と原因追求であり、国と事業者の徹底的な情報公開ですが、いまだ真相解明が不十分で、県民の原発への不安はこれまでになく高まっています。東京電力と国への地域住民・県民の不信が解消されなければ、原子力発電所の存在を認めることはできなくなるでしょう。 この際、貴職におかれては経済産業委員会参考人として、欠陥原発の運転延命と早期運転再開を意図したこの二法案に対し、住民はじめ県民感情を踏まえて、住民・県民の期待に応えられるよう、以下申し入れます。 記 1.国会と東京電力に、速やかに全号機を停止して、全ての記録公開と徹底した真相解明を求めること。とりわけ、福島第一原子力発電所1号機は、原子炉等規制法第33条による原子炉の設置許可を取り消すよう求めること。 2.国会に対し、住民・県民の東京電力と国の原子力行政に対する不信・怒りを伝え、経産省及び保安院の不正事件に関する責任を明らかにするよう求めること。 3.維持基準導入は時期尚早であり、住民合意のない関連二法案(電気事業法・原子炉等規制法改正案/原子力安全基盤機構法案)には反対すること。 4.原子力行政における規制と推進の分離をはかるため、日本版NRCともいうべき各省庁から独立した規制権限をもつ独立行政委員会の設置を求めること。 (1)原子力安全委員会は、公正取引委員会同様、国家行政組織法上の3条委員会とする。 (2)原子力安全・保安院は経済産業省から内閣府に移行する。 以上 2002年11月18日 原発いらない いわき市民の集い ストップ!プルトニウム・キャンペーン 脱原発ネットワーク・会津 脱原発福島ネットワーク 福島原発30km圏ひとの会 |