日本原燃がアクティブ試験で海洋へ放射性廃液を放出した月日が判明した。7月20日臨時県議会で鹿内議員の質問に応えて、高坂環境生活部長が答弁した結果である。これまで原燃に質問してもけっして答えなかったデータがようやく明るみに出た。しかしその放出を、岩手県へはいっさい通知していなかったことも判明した。そして、宮古市など岩手県の人々からの説明を求める強い要望を無視したまま、日本原燃は8月12日に試験の第2ステップに踏み出した。 海洋へ放出する前の放射性廃液を貯めておく「第1放出前貯槽」は低レベル廃液処理建屋の地下2階に4基並んでいる。ステンレス製のライニング・プール式で1基の大きさは目分量で横幅10m、奥行14m、深さ4.3mで600立米の容量がある。放射能濃度に600立米をかけると1回分の放出放射能量が算出される。1回に600立米の廃液を6時間かけて海洋に放出する。 放出管は約11kmあり、地下を通ってむつ小川原港の沖合い3km、深さ50mの海底に達し、そこから海面に向けて、直径7.5cmの放出口から秒速5.6mで廃液を放出する(図参照)。海面に達した放射性廃液は、津軽暖流に乗って三陸方面へと流されていく。 ■海洋放出の特徴 今回の県議会で明らかになったのは海洋に放出された日である。各月の放出量は翌月の月末に公表されている。また今回は6月21日までの放出量が7月7日公表の第1ステップの中間報告34頁に書かれている。ただし、海洋への放出で放射能量が公開されているのはトリチウムだけで他はND(Not Detectable:検出不能)である。それらをまとめた次表から、放出の特徴を見ておこう。 (1)放出曜日について 基本的に水曜日と金曜日が放出曜日のようである。ただし、5月20日の土曜日と6月29日の木曜日は、連続放出のためであろうと推測される。おそらく1つの貯槽では足りずに2つ目の貯槽に溜まった分を続いて放出したのであろう(貯槽を2つまで使うことは確認している)。5月27日の土曜日だけは何か特別な事情があったのであろう。 (2)トリチウムの1回当たり放出量の増加 4月のトリチウム放出量は格段に少ないので、アクティブ試験による放射能がほとんど入っていないのではないかと思われる。5月分の放出量を6で割ると1回当たりの平均放出量が算出できる。また、今回は中間報告書(その1)で6月21日までの放出量が公開されたので、それを用いると、6月の放出量を前の4回分と後の2回分に分けて把握することができる。それらから1回当たり放出量を計算したのが表の最右欄の数値である。1回当放出量が6月後2回では、前4回の2倍以上になっている(グラフ参照)。 (3)トリチウム濃度の増大 1回当たりのトリチウム量の増大は、廃液放出量は常に600立米と一定なので、結局は放出前貯槽中のトリチウム濃度が増大していることを意味している。それは2つの要因によって起こっている。 第一は、再処理の対象となった使用済み核燃料中の放射能が増大したことである。第1ステップは4つのサブステップ1.1〜1.4に分けられているが、そのうち1.1〜1.3で用いた使用済み核燃料は、燃焼度が12,000〜17,000MWd/t、冷却期間が20年のPWR用36体16.6トンであった。サブステップ1.4では同じPWR用で燃焼度が30,000〜33,000MWd/tとより高く、冷却期間が10〜18年とより短かった。そのためサブステップ1.4では扱う放射能量が増えている。 第二は、初期では扱う溶液を希釈しているが、最後では希釈していないことである。次ぎの工程表(次図参照)の分離建屋の項に書かれているが、サブステップ1.1では約3倍、1.2では約2倍、1.3では約1.2倍に希釈している。サブステップ1.4では希釈していない。1.4の切断は6月7日から始まっているので、この分の廃液が放出前貯槽に来たのはおそらく6月末ではないだろうか。6月最後の2回分のトリチウム濃度が急に高まっていることから、逆にそのように推測できるのである。残りの放射性廃液は7月にも放出されているようである。 ■第2ステップでは更に高レベルの放射能が放出される 第2ステップでは、燃焼度30,000〜33,000MWd/t、冷却期間8〜15年と、さらに放射能レベルの高いPWR用使用済み核燃料50トンが再処理される。最後に再処理される低燃焼度のBWR用燃料10トンを加えると60トンとなり、第1ステップのほぼ2倍が再処理されることになる。その期間は(少なくともせん断に関しては)、第1ステップと同程度が予定されているようである。それだけ、より高濃度の放射性廃液がより頻繁に海洋放出されるに違いない。 その第2ステップは8月12日に開始されたが、海洋放出の実態を明らかにするための情報公開を求めよう。さらに、大量の放射能を放出してもなぜ安全だと言えるのか、その説明を日本原燃にあくまでも求めていこう。 |