六ヶ所再処理工場で高レベル放射性廃液漏えい事故(1月21日)
漏えいした廃液21リットル中のセシウム137は、336兆ベクレル
再処理工場が年間に大気と海に放出するセシウム137の約2万倍
漏えい事故によって主排気筒から放出した放射能量を公表せよ

 1月21日、六ヶ所再処理工場のガラス固化建屋にあるガラス固化セル(コンクリートの小部屋)内で、高レベル放射性廃液の漏えい事故が起きた。原燃は、ホームページで簡単なプレス発表をしているだけで、「周辺環境への影響はない」と強調している。
 新聞報道などから現時点で知り得る限りで、漏えい事故の問題点などを簡単にまとめる。

◆漏えいした高レベル放射性廃液中のセシウム137は、年間放出量の約2万倍
・漏れたのは高レベル放射性廃液を濃縮した廃液。
・漏えい量は約21リットル。
・漏れた廃液は、配管接合部分の下にあるトレー(幅10p、奥行き50p、高さ2p。約1リットルの廃液)からあふれ、床にある受け皿にまで溜まっていた(受け皿分で約20リットルの廃液)

 新聞報道では、漏れた廃液中の放射能セシウム137は、160億ベクレル/ミリリットルという[東奥日報1月22日]。これをもとに計算すれば、漏えいした21リットル中のセシウム137は、336兆ベクレルにもなる。
 これは、六ヶ所再処理工場が年間に放出するセシウム137の約2万倍にも達する(大気中へは11億ベクレル、海洋へは160億ベクレル)。極めて高濃度の放射性廃液だということが分かる。1秒間に336兆本もの放射線が出る。このような超猛毒の廃液の漏えい事故を引き起こしたことは、そのことだけでも、原燃には再処理工場を運転する資格などないことを示している。

◆事故によって主排気筒から放出した放射能量を明らかにせよ
 原燃は、廃液はセル(コンクリートの小部屋)内に収まっているため「周辺環境への影響はない」と強調し、あたかも、事故によって放射能が外部に一切出ていないかのような発表をしている。しかし、廃液がセル内に収まっていることと、放射能が大気中に放出されることは別の問題だ。漏えい事故が起きたセル内の空気中には、放射性の希ガス等も当然含まれている。これらセル内の空気は、換気装置によって主排気筒から放出されている[図1参照]。「周辺環境に影響はない」とは、「放射能が放出されていない」ことを意味してはいない。原燃は、主排気筒で測定している放射能レベル等を公表し、どれだけの放射能が放出されたのかを明らかにすべきだ。
 また、この漏えい事故が起きた同日には、敷地内のモニタリングポストbQが火災で故障している。原燃は、「他のモニタリングポストで影響がないことを確認している」としているが、漏えい事故と同時刻に起きたモニタリングポスト火災の原因と、主排気筒のデータなどを公表するべきである。
   (モニタリングポスト火災事故 原燃hpより)
   1月21日 午後6時45分頃 モニタリングポストbQで電源消失。
          午後7時42分頃 電源基盤の一部に焼損痕を発見
          午後8時15分  六ヶ所消防署に通報
          午後8時41分  鎮火していたことが確認
          午後10時4分  火災であったとの判断がなされる

◆漏えいの状況
・1月21日 午後3時頃 セル内の漏えい液受け皿の液位上昇の警報。
・セル内を監視カメラで観察 午後6時35分頃、溶融炉に廃液を送る配管から廃液が漏れているのが見つかる。廃液供給タンクと溶融炉をつなぐ配管の接合部から漏れ。[原燃発表の図参照
・遠隔操作でボルトを締め直して、午後8時42分に漏えいは停止。
・午後9時頃 もう一方の配管の接合部からも漏えいを確認。
・ボルトの増し閉め作業で、午後9時52分に漏えい停止。

◆ガラス固化溶融炉との関連など
・ガラス固化体を作るためには、溶融炉に高レベル放射性廃液とガラス材を投入する。今回漏えいが起きたのは、高レベル放射性廃液を供給するための配管の接合部分。
・高レベル放射性廃液は、供給槽から配管を通じて溶融炉に入る[図2参照]。
・しかし、この配管は、昨年12月中旬に接合部分で切り離され、配管は金属のふたで閉じられていた。これは、溶融炉内で曲がってしまったかくはん棒を抜き取り、炉内が傷ついていないかを調査するためだった。
・また、溶融炉では、流下ノズル部分からドリルを入れ、ガラスやレンガなどを取り除き、炉内に溜まっているガラスの抜き取り作業の準備にかかっていた。漏えい事故のあった21日は「(ガラス)溶液を抜きやすくする作業をしていた」ということだが、具体的に何をやっていたのかは明らかになっていない。[デーリー東北1月23日
・今回の漏えい事故は、白金族問題で行き詰まっている溶融炉の回復作業と関連があることは確かである。
・また、新聞報道では、「配管からは廃液をすべて抜き出し、その後も廃液を供給する操作をしていない。配管を通らないはずの廃液が、ねじを締めたはずの接合部から」漏れたことになっている。[デーリー東北1月23日 同上]

◆当面問題になること
原燃は、30日までに原子力安全・保安院に報告書を出すという。
・漏えい事故の原因、停止している溶融炉復旧作業との関連
・漏えい時のセル内の放射能濃度
・漏えい事故時に主排気筒から放出された放射能レベルと量
・漏えい事故時に故障したモニタリングボストの火災原因
これらは少なくとも明らかにするべきである。

 ガラス固化体製造では、白金族の堆積という根本的欠陥で行き詰まり、その対症療法によって、かき混ぜ棒の曲がり、炉内レンガの落下等々の「裏目」が出続けていた。そして今回は、超猛毒の高レベル放射性廃液の漏えい事故まで引き起こした。
 原燃に再処理工場を運転する資格などない。再処理工場を廃炉に追い込もう。

2009年1月23日 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会

図1 原燃ホームページより


図2 溶融炉への廃液供給図 2008年2月4日原燃資料より


(09/01/23UP)