六ヶ所再処理工場では
原発重大事故が年に25回も起こる



 六ヶ所再処理工場の試運転はすでにこの4月から始まっている。ウランで再処理する試験が2003年夏に始まる。その後本物の使用済み燃料を使う「アクティブ試験」を経て、2005年夏には正式運転に入る予定になっている。
もし、六ヶ所再処理工場が動けば、最大級の原発重大事故で放出されるプルトニウムの何と25倍もが、毎年毎年、海や大気中に放出されることになる。1月に2回の割合で原発重大事故が起こるのと同じである。このようなプルトニウム放出をけっして許してはならない。

 1998年5月11日に高浜原発3・4号のプルサーマルについての設置変更許可申請書が提出され、その審査がプルサーマルとして初めて問題になったときのこと。その年の7月から10月にかけて、プルサーマル炉の事故評価に、原子力安全委員会の指針「プルトニウムを燃料とする原子炉の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について」(1981.7.20原子力安全委決定)を適用すべきかどうかが問題になった。
 結論としては次のような奇妙なことが決定された。
(1)プルサーマル炉は「プルトニウムを燃料とする原子炉」に相当することは認め る。
(2)従って、当然にして上記指針の適用対象となるが、実は、放出されるプルトニ ウム量が少なく、ヨウ素による被曝量より低いと評価されるので、実際はヨウ素の被曝評価で十分となり、従って上記指針を適用する必要はないので適用されない。
 この決定は明らかに、各放射能ごとに被曝評価をするという被曝評価の原則を踏みにじっている。事実、希ガスについてはヨウ素とは別に被曝評価されているのである。
 それはさておき、このようなプルトニウム軽視の結論を出すために、彼らはいろいろと苦労した。この年の7月には格納容器からのプルトニウム放出率を1.4/10万としていたのを、9月には3.8/100万と約3.7分の1に低めている。そのため重大事故が起きてもプルトニウムはあまり格納容器の外には出ないことになってしまった。それほどまでに、プルトニウムによる住民の被曝が問題になることを恐れたのである。
 それでは、この評価で、どの程度プルトニウムが外に出るのだろうか。彼らの想定では、まず、原子炉内のプルトニウムが圧力容器の外へ1%出る。次に、それが格納容器外に出る率は3.8/100万とした。結局、原子炉内から格納容器外にでる割合は、
 1%×3.8/100万=3.8/10^8=1億分の3.8
となる(注:10^8は10の8乗の意味)。
 この割合を適用して、通常のウラン燃料用原発の重大事故で、どれだけプルトニウムが外部に出るかを計算してみよう。放射能としてのプルトニウムは、ガンマ線を出すPu241とアルファ線を出すその他のPuα(Pu238,239,240,242)に分けられる。文献によって少しずつ違うが、例えば瀬尾さんの本では、100万kW原発に含まれるプルトニウムは
   Pu238--37×10^14Bq、 Pu239--3.7×10^14Bq  (注: Bq=ベクレル)
とあり、Pu240はPu239と同程度〜2倍弱程度、Pu242は問題にならないほど少ない。これらを合計すると、100万kW原発に含まれるPuαは、多めに見て約4.7×10^15Bq となる。
 従って、100万kW原発から重大事故で格納容器外に放出されるプルトニウム(α)は
     (4.7×10^15)×(3.8/10^8)=1.8×10^8Bq
となる。
 さて、六ヶ所再処理工場からはどれだけのプルトニウム(α)が放出されるかだが、平成3年の設置変更許可申請書によれば、海への年間放出量=4.2×10^9Bq、排気筒から大気中への年間放出量=3.3×10^8Bqで、合計 45.3×10^8Bqとなる。これは原発重大事故での放出量1.8×10^8の約25倍に相当する。
 原発重大事故の場合は、住民の批判を恐れてか、プルトニウムはあまり外に出ないと評価し、指針の適用を免れたのであるが、再処理工場ではその25倍ものプルトニウムを毎年放出することを認めるとは、いったいどういう神経だろうか。政府の説明を聞きたいものである。



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