六ヶ所再処理工場でプルトニウム体内被ばく事故
あまりにもずさんな原燃の被ばく管理
頻発する事故−アクティブ試験全体をただちに中止せよ


 六ヶ所再処理工場の分析建屋で、協力会社の男性作業員(36歳)が体内にプルトニウム等を摂取していたことが5月25日に判明した。5月19〜20日の作業で汚染してから被ばく確認まで5〜6日も経過している。作業場では半面マスクもしていなかったなど、被ばく管理が実にずさんであることが明らかになった。

◆体内摂取の確認まで5〜6日も
 この作業員は5月19〜20日に試料の分析作業を行っていた。5月26日付朝日新聞によれば、その間同じ作業服を着て作業し、脱衣するたびに自分で服の放射線量を測定していたという。少なくとも4回測定したが放射線は1回も検出されていない。
 5月22日になってから洗濯前のサーベイでようやく、作業服の右胸部に汚染があることが検出された。最大密度でアルファ核種が1.5Bq/cm2、ベータ核種が0.17Bq/cm2だということから、基本的にプルトニウムと見られるアルファ核種による汚染である(後述)。
 そこで糞や尿検査を行うバイオアッセイ法によって体内に放射能を摂取しているかどうかが検査され内部被ばくが確認されたが、尿などの採取がいつ行われたのかははっきりしていない。吸入の可能性があるので鼻スミヤもすべきであったが、なされた様子はない。

◆アルファ核種による高度な汚染
 今回測定された放射能密度を原発での汚染と比較してみよう。東電の福島第一原発1号機では1980年頃に燃料破損により原子炉建屋がプルトニウムなどでひどく汚染されていた。この事実はずっと隠されてきたが、ようやく20年以上過ぎてから内部告発による、東電作成資料「松葉作戦」の公表によって明らかにされた。その資料には、原子炉建屋の5階から地階までの壁面や床面の放射能密度について1981年10月測定のデータが記載されている。全体を通じての最大値はアルファで0.073Bq/cm2、ベータで5.1Bq/cm2であった。この事実をひた隠しにしながらも、東電は汚染を除去するために「松葉作戦」を立てて奮闘していたのである。
 この汚染と比較すると、今回の作業服の汚染はアルファで21倍、ベータで0.033倍である。明らかにアルファ汚染の比率が圧倒的に高く、かつアルファ汚染度が非常に高いことが分かる。原燃は、被ばく線量は0.01ミリシーベルトで「健康に影響はない」と言っている。しかし、吸入による肺細胞などの局所的被ばくを考慮すれば、簡単に「影響はない」などといえるような問題ではない。

◆ずさんな作業現場の管理
 朝日新聞によると、日本原燃の説明では、分析作業で溶液がはねたか、こぼれるなどして服についたのではないかという。プルトニウムのような放射能を含む溶液がはねたりこぼれたりして、それが簡単に作業服に付着するような作業状況がなぜ許されているのだろうか。このような状況では作業員の服だけでなく、直接吸入することもあり得るだろう。それにもかかわらず、半面マスクもしていなかったという。
 それにしてもどうして放射能が作業服に付着するような状況になっていたのか、原燃は明らかにしていない。作業員は、密閉されたグローブボックスや強制排気装置を備える箱型装置(フード)内で、抽出した溶液の水分を蒸発させる作業をしていたという(河北新報)。もしグローブボックスであれば、手袋に穴があいていたことになる。フードであれば、何か容易に被ばくするような取り扱いが行われていたことになる。この実態はまだ何も明らかにされていない。
 放射能溶液がこぼれ得る状況にあるのなら、作業員はそれによく注意しているはずだから、こぼれたことに気づくはずである。ところが4回も測定しながらまったく気づかなかったという。測定が本人まかせでシステム化されていないという驚くべき実態も明らかになった。これでは放射能の管理、被ばく管理などないに等しいということだ。

◆アクティブ試験をただちに中止せよ
 3回にわたる放射能溶液の漏洩事故に続いて、またもや作業員の被ばく管理でも、原燃の余りにもずさんな管理の実態が明らかになった。5月17日の配管のT字継手部分からの放射性試薬の漏えい事故で、原燃は精製建屋のプルトニウム精製系は作業を中止している。その直後にまた別の建屋(分析建屋)で被ばく事故が起きた。事故が頻発している。アクティブ試験の全体を即刻中止すべきである。