11月2日、「フランスの再処理・廃棄物対策などの実態 フランスの現状から学ぼう」と題して、マイケル・シュナイダーさんの講演会をグリーン・アクションと共催で行いました。岡山や埼玉など遠方から来られた方も含め約60名が参加し、講演中も質疑の時間も絶えず会場から質問が出る活気ある講演会になりました。 マイケル・シュナイダーさんは、世界中で最も原子力発電の依存度が高いフランスで、原子力に伴う問題を調査・報告するWise-Parisを二十代で設立し、2003年まで代表を務めてきました。また、フランスやドイツの環境相、ベルギーのエネルギー大臣等のコンサルタントでもありました。グリーン・アクションのアイリーン・スミスさんの通訳を通じて聞くそのお話は、穏やかな語り口ながら、核大国フランスの実情に基づき、再処理・プルサーマルがもたらす多くの問題を浮き彫りにするものでした。 講演は、再処理・プルサーマル路線によって、いかに廃棄物が生み出されるかという点から始まりました。国や電力側は、核燃料サイクルにより半永久的に燃料のリサイクルができるような説明を行っています。しかし、実際にはその過程で多くの廃棄物、とりわけプルサーマルの実施によって、使用済MOX燃料という非常に厄介な廃棄物が産み出されます。フランスでは、MOX燃料の製造などのために毎週2日、100kg以上のプルトニウムが国内で輸送されていることや、フランス政府の調査でも、再処理は直接処分と比べてコスト増になると結論付けている、といった実態が紹介されました。「プルサーマルを実施すればプルトニウムの貯蔵量が減る」という推進側の説明とは裏腹に、フランスではプルトニウムの貯蔵量は増え続けていることや、ウランの輸入に要するエネルギー等推進側が避けている問題を考慮して考えると、再処理路線はエネルギーの自立には結びつかないというマイケルさんの評価について具体的な説明があり、なるほどと納得させられました。プルトニウムの市場価格はマイナスで、オランダでは保有しているプルトニウムをフランスの電力公社に代金を支払って引き取ってもらったそうです。このような、マイナスの価値しかないものを生み出すのは再処理だけだと断言されていました。 フランスにおける廃棄物貯蔵の実態と再処理による汚染についても詳しい話がありました。フランスでは危険な高レベル廃液が大量に貯蔵されていることや、ガラス固化体の貯蔵先も決まっていないことなど、廃棄物問題を無視したまま再処理路線を無責任に進めてきたことによって深刻な問題が起こっている現状が良くわかる内容でした。さらに、フランスでは多くのガラス固化体が製造されていますが、固化体の中身をみる破壊検査は2体しか実施されておらず、それ以外は全て計算で、その計算も非公開であるため、ガラス固化体の中身についてはイエローフェーズの問題等がないのかどうか明らかではないと述べられています。再処理工場からはヨウ素129などの放射能が多量に放出されていること、それによって人々の被曝が増えていることなどについても具体的な説明がありました。 マイケルさんの講演の後、いまガラス固化体製造で末期的症状を示している六ヶ所再処理工場の試験についても当会代表から報告がありました。話を聞けば聞くほど、再処理・プルサーマル利用の問題点が実感できる今回の企画でした。一旦再処理路線をとれば、その路線を継承する選択肢しかとらなくなり、「再処理は我々の未来の選択肢を奪う」というマイケルさんの言葉が印象的でした。六ヶ所再処理工場はなんとしても動かしてはならないと改めて感じました。(Cy) 当日の資料はこちらから見ることができます。 (08/11/11UP) |