2005年2月9日 主査 神田 啓治 様検討会委員 各位 様 日本原燃(以下、原燃)は、ガラス固化体貯蔵設備で、「設計ミス」を犯していたことが明らかになりました。再処理施設内の3つの貯蔵設備には、日本の全原発から排出される放射能(ウランとプルトニウムを除く)の約10年分が貯蔵されるために、これは「安全上重要な設備」と選定されています。ガラス固化体の中心温度が624℃に達するにもかかわらず、これを430℃だと誤って判断し、すでに2つの設備の建設まで終えているのですから、ことは重大です。なぜこのような誤りが生じたのか、なぜ国はこの誤りを無批判に容認し申請を許可・認可したのかが徹底的に解明されるべきです。このような原燃と政府の実施する再処理の安全性はまったく信用することができません。 貴検討会は、昨年3月に、原燃の「再処理施設品質保証体制点検結果報告書(改訂)」(平成16年3月16日)を受けた原子力安全・保安院の評価案(3月30日)を了承されました。その了承は、「再処理施設の健全性」について、「再処理施設が設計通りに適切に施工されているという点から設備及び建物の健全性が、現時点において全体として確認されている」との判断に立ってのことです。この判断によって貴検討会は、原燃がウラン試験に入る資格があるとも判断されたことになっています。 ところが、前回では前提にされた設計の無謬性が、今回は成り立たないという新たなより重大な問題が生じたのです。それゆえ、前回の論理に立てば、「再処理施設の健全性」が成り立つという保証が消えたことになるのは明らかです。それゆえ、原燃のウラン試験を行う資格が消滅したことも明らかです。 そのため私たちは── 貴検討会に対し、六ヶ所再処理施設のウラン試験をただちに中止するようにとの勧告を出していただくことを要望します。 * * * 私たちは一昨年から昨年にかけて、貴検討会に対し、原燃のスケジュール優先姿勢を具体的に批判する要望書を何度も提出してきました。しかし、貴検討会はそれについて十分に斟酌するという姿勢ではなかったと、私たちは思っています。今回はぜひ、私たちの考えを真摯に受け止めていただき、原燃と保安院に対して厳しい態度で臨んでいただくことを切に要望します。ウラン試験を直ちにとめるべきだとの私たちの主張の根拠については、以下で詳述しますが、その論点とそこから浮上する疑問点を、あらかじめかいつまんで記述しておきます。 <論点> (1) 今回の「設計ミス」は、昨年10月に原燃から出されたB棟設備に関する第2回設工認申請の審査段階で発見されたものです。すなわち、この申請は貴検討会の昨年3月の判断の後に出されたものであり、いまだ原燃の品質保証体制が改善されていないことを「設計ミス」は示しています。 (2) 原燃はミスの内容を「文献式の解釈を間違えた」ためと称していますが、そうではなく、迷路板で空気の流路が狭まることを無視するというお粗末そのものです。その元請の「ミス」を原燃自身も鵜呑みにしていたのです。ミスというより、「施工性を高める」ための操作としか考えられません。プール問題で問題になった体質が何も変わっていないということです。 (3) 原燃は、「式の解釈誤り」が他にないことを確認したと主張していますが、上記のようなミスがないことはまったく確認していません。 (4) 原燃のミスを、保安院も原子力安全委員会も事業変更許可申請の審査段階で見逃し、さらに設工認申請の認可段階でも見逃しています。これでは何のための審査かわかりません。 以上により、現在の再処理施設にどんな欠陥が隠されているか、その安全性についてまったく信頼性がないと言えます。それゆえに、何はともあれまずはウラン試験を中止すべきです。 <疑問点> 下記でくわしく説明しますが、下記の疑問点についてぜひ明らかにしてください。 (1) 原燃への解析のやり直し指示が今年1月14日に保安院から出されましたが、原燃はすでに昨年12月17日及び24日に、この問題を自分で発見したことを公表しています。この間の経緯がどうなっているのかが不明です。 (2) 原燃は1月28日に公表した第2資料の中の経緯説明において、元受会社の課長が圧力損失(冷却空気を流れにくくする抵抗力)が設計変更によって4倍になることを認識していたと書いています。それなのに、なぜ固化体の温度が変更前とまったく変わらないと判断したのか、非常に不可解です。 (3) 式の解釈間違いがないことはすべて点検したと原燃は主張していますが、仮にそうだとしても、今回のように迷路板を無視するような「ミス」と同様の操作が他にないことを確認したことになるでしょうか。 (4) 事業変更許可申請書の審査では、「安全上重要な設備」に関して、冷却設備の性能評価を具体的に審査しなくてもよいということが許されているのでしょうか。現に科技庁は平成3年に、この審査段階でクロスチェックを行っていたという事実についてはどう考えるのでしょう。 (5) 設計変更しても温度不変という誰が見ても納得できないほどの判断が、なぜ設工認の審査段階で簡単に見逃されたのでしょうか。その責任はどうなるのでしょう。 (6) 「設計ミス」が明らかになった4つのガラス固化体貯蔵設備に関しては、行政庁の許可及び認可は取り消されるべきではありませんか。 (7) 「段階的規制」という、後の検査があるから審査ミスは許されるという考えは妥当なものでしょうか。 (8) 現在行っているウラン試験の建屋は、今回問題になったガラス固化施設とは「切り離されている」から、ウラン試験は継続してもよいという考えは許されるでしょうか。ウラン試験を行っている原燃の品質保証体制は切り離すことのできない一つのものと考えるべきではないでしょうか。 * * * 以下、今回の問題について、詳しい説明を記述します。その最後に貴検討会への要望を改めて述べたいと思います。1.「設計ミス」の経緯 原燃のガラス固化体貯蔵設備には、廃棄物管理施設内に2設備(A棟とB棟と呼ぶ)、再処理施設内に3設備(KA,KBE,KBW)があります。そのうち、すでに海外からの固化体を受け入れているA棟では問題がなく、他の4設備で「設計ミス」が問題になりました。 その経緯は、以下のとおりです。昨年(平成16年)10月に提出されたB棟に関する第2回設工認申請の内容を、原子力安全基盤機構がクロスチェックしたことによって、固化体の空気冷却性能に関する解析上の問題が発見されたと発表されています。そのため、原子力安全・保安院は今年1月14日に、原燃に対し解析のやり直しを指示し、原燃は1月28日に誤りを認めて記者発表したものです。 この経緯に関して、一つの疑問が生じています。原燃が下記URLで公表している化学試験中に起こった「再処理工場における不適合等」の昨年12月24日の欄に、再処理施設内の3つの貯蔵設備について、「冷却空気入口・出口形状の圧力損失の再確認、不適合、処置中」と書かれています。また、12月17日の欄には、「工程管理用計算機 冷却空気流量計算手法の改善、改善事項、処置中」と書かれています。廃棄物管理施設のB棟に関しては、下記のURLで見られる「不適合等」のやはり12月24日の欄に同じ記述があります。 これらを見ると、原燃が独自に「冷却空気入口・出口形状の圧力損失」の不適合を発見して、その再確認を処置する必要があると認識しているように受け取れます。 貴検討会として、この経緯における不可解な点をぜひ解明していただきたいと思います。 いずれにせよ、今回の問題が発見されたのは、昨年10月以降のことであり、貴検討会が施設の健全性や品質保証体制について問題がないと判断された後に起こったことです。もし、本当に原燃の品質保証体制が改善されていたのであれば、昨年10月の設工認申請のときに、誤りに気が付いたはずではなかったでしょうか。 今回発見されたような「設計ミス」を犯すほどに、品質保証体制が改善されていないことを、今回の事態は如実に示しているのではないでしょうか。 2.「文献式の解釈を間違えた」とは? 原燃は「設計ミス」の理由を、「文献式の解釈を間違えた」ためとしていますが、その実態はどのようなものだったでしょう。 原燃は、最初は平成8年に、再処理施設内の貯蔵設備に関する冷却空気流路にある迷路板の設計変更を申請しています。その前の設計では、迷路板は入口シャフトと出口シャフトに2枚ずつ、水平にひさしのような形に取り付けることになっていました。ところが「施工性を良くする」ために、貯蔵ピットの入口流路と出口流路に3枚ずつ鉛直に付けるように変更したのです。 申請書の図で見ると、変更によって空気の流路が相当に狭まるのは明らかです。特に入口の方は、流路開口部の断面積は、縦(高さ)が約1.5mしかなく横(奥行き)は約6mで迷路板が無くても断面積は約9平方メートルしかありません。他方、変更前では、入口シャフトの迷路板と壁との間の最も狭い流路でも9平方メートルを上回る断面積があると読みとれます。それゆえに、新設計の3枚の迷路板の構造を考慮すれば、空気の流路断面は変更前より相当に狭められ、その分流れは悪くなり、固化体の温度が相当に高まることは、計算するまでもなく一目瞭然です。こんなことは、設計を変えることを考えた時点で、設計者はすぐに思い浮かべたはずです。ところが不可解なことに、変更前と固化体温度はまったく変わらないとして、原燃は申請書を出しているのです。 原燃はミスの内容を、1月28日に公表した第2の資料「再評価結果報告書」で説明しており、「文献式の解釈誤り」だと言っています。そのミスは2種類あったうち、原燃自身が15頁で「計算の誤りに与える影響大」と認めているのは、計算式に迷路板で狭まった流路の断面積を代入すべきところを、迷路板がない部分の断面積を代入したということです。すなわち、本質的には、迷路板が存在しない場合を計算したのと同じです。原燃はこの操作を、「流路断面積の解釈誤り」と15頁下部の表で呼んでいます。しかし、これが「解釈誤り」と呼べるような誤りでしょうか。 文献式は前記第2資料の15頁に書かれていますが、流路断面積Sは迷路板の間の2つの狭い断面積SBとSWから決まるようになっています。この式を用いる限り、解釈誤りなど生じる余地はまったくありません。流路と迷路板の形からまずSBとSWを求め、それからSを計算するしか他に方法がないことは明らかで、迷路板を無視するような発想は起こりようがありません。迷路板を敢えて無視したのは、何か他の動機が働いたからとしか考えられません。 誤りをした経過について、同資料の19頁から書かれていますが、そこには非常に奇妙な記述があります。20頁の(7)に「KA建屋及びKBE建屋の当初設計から圧力損失が約4倍に増えていたが、迷路板の枚数増加と水平な流路部のルーバーの撤去による変更を考えると、計算結果は妥当と(元請会社の課長は)判断した」というのです。つまり、新設計では圧力損失(冷却空気を流れにくくする抵抗力)が旧設計より約4倍に増えていたことが認識されていたのです。それなのに、他の事情を何となく考慮して妥当だと結論づけたということです。 もし、計算を正しく行った場合はどうなるでしょう。「施工性を高める」という設計変更の目的が失われるような設計にとどまらざるを得なかったでしょう。安全性よりも、スケジュールにもかかわる「施工性」重視の姿勢を優先したという事情が、ここの記述には滲み出ています。前記圧力損失4倍という認識がどうなったのか、ぜひ解明していただきたいと思います。 さらに、この不可解な元請会社の判断について、非常にずさんな理由説明を聞いただけで、自らは何も考えることもなく、原燃は結果を鵜呑みにしたのです。昨年の貴検討会でさんざん問題になった元請・下請との関係が、やはり正常に確立されていないことがここから読み取れます。 3.「設計ミス」が他にないことは確認されたのか 最初に述べたことですが、昨年3月に貴検討会が確認されたのは、「再処理施設の健全性」が成り立っているということであり、その根拠は、設工認における設計が正しいという前提で施工が正しく行われていることを確認したことにありました。ところが今回は、前提となった設計にミスがあったということです。ところが原燃は、他にこのようなミスはないということで、ウラン試験には影響ないとの態度を示しています。 では、今回のような誤りが他では起こっていないということが本当に確認されているでしょうか。原燃が行ったチェックは、前記第2資料の16頁のフローチャートに書かれています。延べ約8,900の式を対象とし、まずそれが「検証された計算式か」をチェックした後、「解釈に誤りの恐れがあるか」をチェックしています。そこで調べたのは例えば、円環構造の場合の式を角形構造に適用する場合に解釈間違いがなかったかどうかを確認するということです。しかし今回問題になっている主な誤りは、そのような誤りではなく(そのような誤りも含まれているとは言え、本質的にはそうではなく)、単に迷路板を無視して断面積を決めたというだけのことなのです。 さすがに、原燃もこの点では良心がとがめたのか、問題があると一応は見なした4件の式の場合に、解釈間違いだけでなく、「入力値に問題がないことを再確認した」と述べています。この記述は、他の場合にはそのようなチェックをしなかったことを吐露していると見なせるでしょう。 結局、今回のような迷路板を無視したのと同じような誤りがないかどうかは、4件を除いて、残りの約8,900件については検証されていないということです。これでは、「再処理施設の健全性」が確認されたことにならないのは明らかです。 4.原子力安全・保安院及び原子力安全委員会の責任はどうなるのか 原子力安全・保安院(以下、保安院)は、昨年3月30日に貴検討会に対し、前記のように「再処理施設の健全性」は確認されており、かつ原燃の「品質保証体制」に問題はないとの判断を提起した張本人です。この判断が誤っていたことが、今回の事実によって明らかになった以上、保安院の責任は当然厳しく問われるべきです。 私たちは2月1日に、この問題で保安院に申入書を手渡しました。その席で保安院は、少なくとも設工認の誤った申請を認可したことは間違いであったと明確に認めています(平成11年、当時の科学技術庁(以下、科技庁)の認可によって、再処理施設内の2設備がすでに建設までされています)。それならば、その責任をも認め明らかにして、昨年3月の判断を撤回すべきではないでしょうか。 以下、保安院及び原子力安全委員会(以下、安全委員会)に係る責任について具体的に見ていきましょう。 ──A.基本設計の許可 保安院は、基本設計の段階では、許可の中身は詳細設計には及ばないので「設計ミスを見抜けず」ということには当たらなく、許可の中身、内容は妥当だった。したがって安全委員会に責任はないと主張しました。 しかし、ガラス固化体貯蔵施設のような「安全上重要な施設」に選定されている施設について、そのような責任を認めない姿勢が許されるのでしょうか。過去の記録を見ると、実はこのような問題についても規制当局や安全委員会は言及し、判断を下していることが明らかになります。 (1)B棟の許可審査において 原燃の5つのガラス固化体貯蔵設備のうち、省庁再編後の保安院が基本設計の審査にかかわったのはB棟だけです。B棟の事業変更申請を受けたのは平成13年7月30日、保安院が設立(平成13年1月6日)された年です。平成15年5月19日に保安院の審査通過、平成15年11月13日には安全委員会のダブルチェックも通過して、平成15年12月8日、経産省として基本設計の安全審査を許可したのです。 基本設計の許可を出した後の平成15年12月、ただちに詳細設計の認可申請を受け、保安院の下、はじめて原子力安全基盤機構によるクロスチェックという新体制で詳細設計の審査が行われました。その後、平成16年10月の第2回申請の審査中に計算ミスの指摘があったのでした。 設工認の審査中に間違いを指摘できたとはいえ、B棟の基本設計に関してはこのように申請を受け許可を出すまで全て保安院のもとで行われましたから、B棟に関しては、まず保安院の責任、そして安全委員会の責任が問われるはずです。 B棟の基本設計審査にさいして、平成15年5月、経済産業省から原子力安全委員会に提出された資料第6?3号「日本原燃株式会社再処理事業所における廃棄物管理の事業の変更許可申請に係る安全性について」(15?16頁)において以下のとおり温度にまで踏み込んだ記述が見られます。 「発熱量2kWのガラス固化体が貯蔵ピットに全数収納された代表的な状態でガラス固化体の冷却を評価しており、この時の最も高温となる最上段のガラス固化体温度の計算値は表面で約280℃、中心部で約410℃となるとしている。また、上記の貯蔵条件下でガラス固化体の温度上最も厳しいのは、2.5kWのガラス固化体1本を収納管に収納した状態であるが、この時のガラス固化体温度の計算値は表面で約320℃、中心部で約470℃となるとしている。このような具体的な数値を経済産業省は安全委員会に送り、安全委員会はこれに基づいて判断を下し、その結果、基本設計は保安院によって許可されたのです。貯蔵時の冷却性能は基本設計に係る安全上重要な事項だからこそ、具体的な数値が評価の対象になったのではないでしょうか。 (2)A棟の許可審査において 廃棄物管理施設内のもう一つのガラス固化体貯蔵設備A棟は、すでに海外からの固化体を受け入れていますが、ここでは問題は指摘されていません。 その基本設計については、平成3年5月16日に科技庁の安全審査を通過して安全委員会に諮問されています(「日本原燃サービス(株)六ヶ所事業所における廃棄物管理の事業の許可について(諮問)」)。そのさい添付された科技庁の安全審査書では、次のように述べています。 ガラス固化体の具体的な温度について、「以上の評価は、信頼性のある解析コードおよび文献を用いて適切に行っており、妥当なものと判断する」(45頁)と述べ、さらに、「ガラス固化体の温度解析等について、申請者とは別途に評価を行い、その妥当性を確認した」(46頁)と記述しています(下線は引用者)。 このように、基本設計審査の段階でも、温度解析について自らクロスチェックをした場合があったことを、ここの記述は示しています。 (3)再処理施設内3設備の許可審査において 高レベル廃液ガラス固化建屋(KA)と第1ガラス固化体貯蔵建屋・東棟(KBE)及び西棟(KBW)についても、基本設計は全て許可済みです。平成8年12月26日に科技庁(当時)の審査を通過、平成9年7月4日には安全委員会の審査も通過しています。その際、上に見たと同じ記述がやはり見られます。 ただしここにおいて、すでに許可済みのA棟とは異なる設計変更があり、2度にわたって事業変更申請が提出されています。件の設計ミスがこのときに発生したものであることが1月28日の原燃報告書から伺い知ることが出来ます。 当該3設備に係る基本設計の事業許可申請は平成元年で、このときの設計はA棟と同じでした。ところが、平成3年にA棟ともどもルーバーを付けるように一部設計変更、さらに平成8年4月26日に後のB棟と同じ仕様へと変更します(A棟は結局この変更なしで建設されました)。 このときの変更申請は、平成8年12月26日に科技庁の審査を通過し、安全委員会のダブルチェックへまわされます。以下は、その際作成された科技庁の安全審査書43?44頁からの抜粋です(「日本原燃株式会社再処理事業所の再処理事業変更許可申請に係る安全審査について(概要)」平成8年12月)。 「貯蔵等に対する考慮に係る主要な変更は、高レベル廃液ガラス固化建屋及び第1ガラス固化体貯蔵建屋のガラス固化体貯蔵設備に係る冷却風路の設計並びに…の変更である。ガラス固化体貯蔵において要ともいえる冷却と放射線遮蔽に係る設計変更があったにもかかわらず、この時点で元請、原燃、行政庁(科技庁)、安全委員会、とどこもチェックすることなくいずれも追認が繰り返された挙句許可され建設されてしまったのです。 ──B.設工認の認可 (1) 行政庁の責任 上に見たように、冷却性能を示す具体的な数値を「基本設計では参考にしただけ」、などという保安院の言い逃れが通るわけはありません。その上、これらの中にはすでに設工認の認可が下りてしまっている設備もあるのです。それが再処理施設内のガラス固化建屋(KA)と貯蔵建屋・東棟(KBE)の2設備で、認可はいずれも平成11年です。 ここでもA棟の基本設計審査のときのように別途解析を実施するなど独立した評価を実施しなかったのでしょうか。詳細設計でも見逃したのですから保安院の弁明は完全に破綻しています。2月1日、保安院は責任を認めざるを得ませんでした。 行政庁のシステムに関するチェックはどこがするのかとの2月1日の質問には、『国会』というのが保安院の回答でした。しかし、検討会においてもそこまで踏み込んで検討されるべきではないでしょうか。 (2) 段階的規制という抗弁 これに対して2月1日に保安院は、「段階的規制」なる概念を持ち出して言い逃れに努めました。それは、仮に設計ミスを見逃したとしても、使用前検査等があるからそこで引っかかるので問題はないという見解です。ガラス固化体貯蔵設備の場合、発熱する模擬固化体を用いて検査するということです。その妥当性には疑問があるものの、このような「段階的規制」を持ち出す発想自体が、安全審査に対する無責任な姿勢を露呈しているというべきでしょう。 こうして安全審査をすり抜けた見落とし事項が、運転開始後になって事故を起こしてからやっと気がつくというケースになるのです(昭和64年、福島第二原発3号機の再循環ポンプ事故など。設計における共振点の見落としが原因で2年間運転停止。事故原因究明の段階でやっと明らかにされた)。 5.ウラン試験の中止を勧告してください 今回の設計ミスについては、実際にガラス固化体を入れる前に発見されたことは不幸中の幸いでした。しかしながら、このことは、再処理施設の健全性そのものが非常に疑わしいことをあらためて露呈させました。ほかにも重大なミスや不具合が見逃されているのではないかとますます不信感が募ります。 にもかかわらず、一方で発覚したミスを抱えながら、他方ではウラン試験を続行するという日本原燃の姿勢は、事の重大性を軽視し、事業の進展を急ぐあまり安全性をないがしろにする「スケジュール優先」の体質そのものではないでしょうか? 私たちは、あらためて、再処理施設という極めて危険な施設を扱う日本原燃の管理・運営能力と企業姿勢に強い不安と危機感を覚えています。同時に、今回の事実によって、プールの水漏れ以来、あれほど検討を重ねながら、そのチェック機能を果たせなかった貴検討会自体の存在意義が問われるのではないでしょうか? 昨年の3月30日に、原燃はウラン試験に入る資格があると貴検討会は判断されました。その判断の根拠となった保安院の評価が、今回の「設計ミス」によって崩れたのは明らかです。 これは単なる原燃のミスではなく、上に見てきたような行政庁も含めた多重のミスです。そのようなシステムの中で許可され、認可されている施設の健全性が疑われ、そこで実施されているウラン試験の安全性にも大きな疑問符がついたのです。 以上のことから、原燃のウラン試験を直ちに中止するよう貴検討会として勧告してください。あらためて再処理工場の総点検とこれまでのシステム自体の総点検について検討されることを切に要望します。 再処理とめよう! 全国ネットワーク (〒039-3215) 青森県上北郡六ヶ所村倉内笹崎1521 菊川方 【再処理とめよう!全国ネットワーク・連絡団体】 花とハーブの里 みどりと反プルサーマル新潟県連絡会 グリーンピース・ジャパン グリーン・アクション 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 脱原発ネットワーク・九州 |