2005年7月15日 第15回六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会にて
プール水漏れ(バーナブルポイズン取扱ピットからの漏洩)に関する
保安院の見解
(古西核燃料サイクル規制課課長)


 では、私の方から資料15-2-3にもとづきまして、今のような(原燃の)説明であったわけですが、保安院としてこのことをどういうふうに受け止めているかということを、ご説明させていただきたいと思ってます。
 まず、1頁目、「1.事象の経緯・概要、及び原因と対策」ということが書いてございますが、これは大いに今の(原燃の)説明とダブるところでございますので基本的に飛ばさせていただこうと思っています。ただ(2)事象の概要のところに書いてございますが、今回漏洩した水の量は積算で31リッターでございまず。そこに含まれている放射能は、非α核種、コバルト60ですがこれが1.5×10の3乗ベクレル、トリチウムが1.6×10の5乗ベクレル、α核種は検出されておりません。このようなことから、これは管理区域内であるわけですが、管理区域内のある堰と言うものからこれだけの量が漏洩したとしてもですね、法令報告の目安、その次の括弧書きにしているところですが、これを下回っておりまして、法令報告に当たる漏洩ではございません。
 そういう中で、当方の見解と言うのを、次のページ、2.以降に書かせてもらっております。
 見解としては、論点としていくつかの論点があろうかと思いますので、論点ごとに( )の形で書いてございます。一つはライニング槽点検との関係、それから漏洩そのものの扱い、それから原燃の対策について、それから最後に、ウラン試験が現在行われていますがウラン試験の扱いについて。という形で当方のものの考え方を整理させていただいております。
 で、ライニング槽点検の関係ですが、ある意味でこのことにつきましては我々事務局が先生方に申し上げること自身、一種僭越なのかもしれませんが、おさらいの意味も含めまして申し上げさせていただきます。
 平成15年1月から平成15年8月までライニング槽点検と言うものが実施されてございます。この目的でございますが、溶接部の施工について不適切な施工があったわけでございまして、これの原因究明の実施、それから補修計画の策定等が目的とされていたと認識してございます。
 その後ライニング槽点検にひき続きましてこの委員会を設置させていただきまして、再発防止の観点から、品質保証体制点検、いわゆる総点検と呼んでいますがこれを実施してきてございます。これは上に申し上げましたいわゆる不適切な施工と言うものが起こらないような品質保証体制をちゃんと構築する、それを強化していくということであったというふうに事務局としては認識しているところでございます。
 そのような中でいろいろご審議いただき、先生方のご指導を賜りまして、この検討会で図った結果として平成16年3月にはですね、実効的な品質保証体制が期待できる体制が整備されたと評価されたところと記憶しております。
 で、今回の貫通部というのはですね、明らかにライニング槽点検の過程で発見されるべき不適切な溶接部と言わざるを得ないと思っています。そういう事実を踏まえた上でですね、総点検の目的であった品質保証体制の強化というのは達成されていると、我々、引き続き達成しているというふうに認識しております。
 もちろんのことながら、今日もこういう形でご審議をいただいてございますが、あのー品質保証体制というのは更なる上をめざした強化を図っていく必要があると考えてございますので、引き続きこの検討会でいろいろご審議いただき、ご助言をいただきたいと思っておりますし、またそういう中において我々としてもですね、あのー今日も冒頭一つ目の議題で私、保安検査の報告をさせていただきましたが、特別の体制を組んだ保安検査、あのー美浜の事故などを踏まえてですね、本社に対する保安検査であるとかそういうことも要するに強化をしてやってございますので、日本原燃に対してもそういうことをやってみたいと考えているところでございまして、そういうものを通じて厳格に指導していきたいというふうに考えてございます。
 先ず一点目のライニング槽点検との関係については、雑ぱくに申しますと以上のようなことでございます。
 それから次に、漏洩そのものの考え方なんでございますが、いわゆる原子力安全委員会が定めた指針類がございまして、指針類の要求しているところが一つの原子力安全の目安だろうと考えてございます。そこに書いてございますのは、貯蔵設備の冷却水保有量が著しく減少することを防止し、適切な漏洩検知を行うことができること、とされてます。
 で、今回の漏洩量がどれくらいかと申しますと、漏洩率で申しあげますと最大のところで毎時60ミリリッターくらいです。プールでございますんで自由面が上の方にあるわけで、自由面からの蒸発量がですね、大体季節によって変動するそうですが、年平均でみると毎時約1万ミリリッターくらい、と言うことでありますんで、それと比較すると遙かに小さくて冷却水の保有量の著しい減少が起こっているということには、見なし得ないというふうに考えてございます。
 それからあの、保有水については当然の事ながらメイクアップされなくてはいけないわけでして、これに備えては毎時50リューベの補給が可能な2系統の、2個のと言う方がいいですね、1系統に2個のポンプが付いてございまして、そういう意味でもちゃんとした設計がなされておりますし、また漏洩検出、検知につきましてはですね、ある意味で検知ができたということから適切な設計であったと言わざるを得ないんだと思っています。
 で、もう一つ別の観点から申し上げますと、先程も管理区域でと言うことを申し上げましたが、施設内に放射性物質を扱う、まあ汚染の可能性のあると言った方がより適切な表現かもしれませんが、管理区域があります。で、管理区域内であれば汚染があっていいというわけではなくて、我々の用語では堰と言う言葉を使っていますが、管理区域内であって放射性物質が存在する場所、その内側と外側を仕切っているのが堰だとするならばですね、漏洩検知器からその後漏洩した水については低レベル放射性廃棄物としてしかるべき形で移送されておりまして、堰から出る形になっておりません。このこと自身、低レベル放射性廃棄物の扱いとして重要な論点だと考えておりまして、そういう意味でも支障が生じる形になっていないと、評価するところでございます。
 で、まあ我々の用語かもしれませんが、我々セイフティーケースと言う言葉を使うわけですが、以上のような論点を考えるならば、今回の事象はセイフティーケースの中にあることだというふうに考えてございます。
 で、(1)(2)で申し上げたことを最終的に換言するとどういうことかと考えてみたところ、我々、原子力の安全の確保というのはいつも申し上げるように多重防護の考え方によっているわけでございます。で、第1第2第3というふうに申し上げてですね、第1が異常の発生防止、第2がたとえ異常が発生したとしてもその異常が事故に拡大しないようにすること、それから第3がたとえ事故に発展したとしても放射性物質が外部に異常に放出されないようにすること、というふうに言われているところでございます。漏洩検知等の設計ですが、これは満たされていると言うふうに私は申し上げたわけですが、これは多重防護の考え方から沿って考えるならばですね、第2レベルの安全対策と言うふうに申し上げることができると思います。このことについては、支障を生ずることになっていない、と繰り返しでございますが申し上げられると思ってます。
 他方、総点検をしていただく前の不適切な施工というのはどういうことだったのかと考えるとですね、そもそもの第1レベルの異常発生を防止するということが適切にできない社内体制と言うんですか、そういう形であったというふうに考えることが適当だと思っておりまして、そのためにきっちり異常の発生を防止できる第1レベル、まず第2レベルに行く前の第1レベルを、たぶんですね、品質保証体制の点検を先生方にお願いしてきたと言うふうに理解しているところでございます。
で、日本原燃の対策、いろんな対策の説明があったわけですが、我々として、これは我々として判断せざるを得ないというふうな事についてお話をさせていただきたいと思います。
 で、保安規定の関係があったわけですが、保安規定の改定に関しましては我々はまだ申請を受け取っておりませんので、最終的にどういう形の書きぶりで申請がなされてくるか、それによって我々判断するかたちになりますが、あのー、保有水、繰り返しになりますが、保有水に関する運転上の制限を設ける、でそれを明確化を図ると言うことは重要なことだと思っています。漏洩がと言うよりはですね、繰り返しになりますが、保有水がちゃんと存在することが重要なんで、運転上の制限としてですね、例えば漏洩が始まりますとプールの温度が上がるとかそういうことがございます。先程申し上げたように2つのポンプがあるわけで、ポンプが1台故障しているときには当然の事ながら注意しなければいけません。そういうことが運転の制限として設けられて、何かあったときにはどういう対応をとるかというのが明らかにされているということはですね、運転管理上のこととして適切な措置だと考えられますんで、そのようなことが記載されてくるならば、保安院としても審査の上認可することになると思っています。
 また漏洩の監視につきましては、ただちに漏洩が安全上支障がないとしてもですね、例えば漏洩が拡大傾向にあるとか、そういうことであれば次に保有水の減少につながる危険性があるわけです。で、そういう観点から、今1日に1回だとするならば、例えば漏洩が起こったときには、各直、それは1日3回を意味するわけですが、各直ごとに漏洩監視をしてくるとすれば、当然の事ながら漏洩の上昇傾向みたいなのは見れるわけなんで、そういう措置というのは適切だと考えてございまして、そのような事が記載されることを望み、かつそういうことが記載されれば我々審査のうえ認可をする、という立場でございます。
 それから当然の事ながら、日本原燃として三隅コーナー部において不適切な溶接の施工があったかどうか、さらにDVDで調べてみると言うことで、その上で当然のことながらいろんな予防保全のための措置が検討されると思っていますが、これについては我々としては計画的に講ずることを要請したいと考えてございます。アノーどういうことかと申しますと、日本原燃が補修技術を整備するというようなことを説明しておりましたが、当然整備をすること自身は望ましいことでございますが、その摘要・実施に際してはですね、保安院としても事前にお話を聞いてですね、当然の事ながら適否を判断していくという考えでございます。
 ある意味で補修、たとえば溶接ということをすればですね、デメリットもあり得るわけですので、あのー、いずれ漏洩というもの乃至は漏洩の恐れがあるということであればですね、その事々を聞いたうえで、やっぱり物事はトタ、我々の言葉で言えばトタ、途端のトタだと思ってますが、トタであれば直ちに何かしなければいけませんけれども、ある程度時間余裕のあるものであればですね、ゆっくり物事は考えるということが大事だと思っていますので、そのような姿勢を求めていきたいと保安院としては考えているところでございます。
 で、最後にウラン試験でございますが、今ウラン試験が再処理施設の本体について行われているわけでございますが、明らかに使用済み燃料プール、共用中の使用済み燃料プールとは物理的に切り離されているものでございますので、ウラン試験に影響はないと断言できると思っています。 
 他方、すごく細かい話ですがウラン試験の中にですね、今回バーナブルポイズンの取扱ピットで漏洩が発生したんですが、そこに切断装置そのものがございまして、切断装置の機能試験が、じつはウラン試験の中に位置づけられています。従いまして、これについてはどうですかということであれば、これはもう、ウラン試験の計画を見直しをしてですね、その上で要するに別の機会、それは操業までだと思っていますが、先ず模擬バーナブルポイズンを用いた機能試験、それから本当のバーナブルポイズンを用いた機能試験をやっていただければいいわけでございますんで、こういうものを除けばウラン試験の実施に影響を及ぼすものではないというのが当方の見解でございます。以上でございます。

(テープおこしはKO−OK企画による)