2005年11月7日

[見 解]
原子力委員会決定(2003年8月5日付)に基づけば
関西電力の使用済み核燃料は
六ヶ所再処理工場のアクティブ試験に使用することはできない

プルサーマル計画について―――関西電力大阪本店2005年10月20日回答:
「….具体的計画については、現在美浜3号機事故の対策に専念しており、
MOX燃料について検討できる状況ではないため、示せる状況ではありません」。


 日本原燃の計画では、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験に関西電力の使用済み核燃料140トンが使用される予定になっています。原子力委員会の2003年8月5日付決定によれば、アクティブ試験で分離されるプルトニウムの利用計画は事前に公表されねばなりません。しかし、いまのところ関西電力は利用計画を公表できる状況にはないと言います。アクティブ試験で分離される前には公表するというものの、分離プルトニウム利用の見通しはまったく立っていないのが実情なので、関西電力のプルトニウムは余剰プルトニウムとなる可能性が極めて高いのです。したがって関西電力の使用済み核燃料をアクティブ試験で使うことはできません。

1.2003年8月5日の原子力委員会決定
 原子力委員会の2003年8月5日決定は、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験が近づいてきたことを踏まえ、そこで分離されるプルトニウムの利用目的を明確化する必要から出されたものです。
 その決定では、それ以前のように「利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則」に立つだけでなく、次のような「措置を実施する」ことを電気事業者に求めています。

 2003年8月5日の原子力委員会決定から引用:
 「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする」。
 「この措置により明らかにされた利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認していくこととする」。

 また、この原子力委員会決定では、海外で保管されているプルトニウムについては「燃料加工される段階において国内のプルトニウムに準じた措置を行うもの」とされています。

2.関西電力のプルトニウム利用計画の実態
 アクティブ試験で使用される予定の関西電力の使用済み核燃料140トンは、同試験で使用されるPWR(加圧水型原発)の使用済み核燃料(210トン)の67%を占め、全体(430トン)の33%に相当しています。
日本原燃の予定では今年12月にアクティブ試験が始まるので、原子力委員会決定に基づいてそれまでに分離プルトニウムの利用計画が公表されねばなりません。
 ところが関西電力は、10月20日の私たち市民団体との交渉で、アクティブ試験で分離される「プルトニウムの所有者は関電です」、「プルトニウムの所有量は、試験で使う燃焼度が不明なので具体的に言えません」という以外、原子力委員会決定で指定する他のすべての項目については「現在のところお答えできません」と答えました。ただし、「アクティブ試験が始まるまでには公表します」と付け加えました。
アクティブ試験で分離されたプルトニウムは、いずれ六ヶ所に建設されるはずのMOX燃料工場で加工される予定になっています。しかし、その工場は今回策定された原子力政策大綱によれば「2012年度操業開始を目途に施設の建設に向けた手続きを進めている」となっています(大綱12頁)。このように漠然とした計画なのに、なぜ今の時点で、アクティブ試験で分離されるプルトニウムの利用量や利用開始時期などを特定できるのでしょうか。
 2012年頃からの何か抽象的な利用計画を提出すれば、アクティブ試験でプルトニウムを分離することが許されるのでしょうか。答えはノーです。関西電力自身の示してきた姿勢によれば、地元了解なしにプルサーマルを実施することはできないのであり、地元了解が得られないままアクティブ試験でプルトニウムを分離してしまえば、そのプルトニウムは宙に浮き、余剰となる危険性があるからです。

3.関西電力のプルサーマルに関する地元福井県の了解は現実には得られていない
 関西電力では、事実上、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で分離されるプルトニウムを利用するより前の段階で、海外保有分を高浜3・4号炉などで利用する計画になっています。
 ところが、その海外保有分のプルトニウムを使用するプルサーマル計画は停止しています。事実、10月20日の関電交渉で関西電力は、「当社としては、平成15年12月のプルサーマル計画では、高浜3・4号機、大飯発電所の1基から2基で使用する予定としておりましたが、具体的計画については、現在美浜3号機事故の対策に専念しており、MOX燃料について検討できる状況ではないため、示せる状況ではありません」と答えています。地元了解は形式的に生きているものの、美浜3号機事故によって安全管理の信頼性を無くしたために、MOX燃料の製造契約に進むことに福井県からストップをかけられたままなのです。関西電力は現在の状況について、「具体的計画は示せる段階にない」と認めているのです。
 このように、関西電力自身が海外分の実施計画を具体的に示せない状況にあることを認めています。
 こんな状況では、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で分離するプルトニウムが確実に利用されるような保証はまったくないのです。

 以上により、関西電力の使用済み核燃料は、原子力委員会決定に照らして、アクティブ試験で使用することができないことは明らかです。

2005年11月7日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
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