本日(10月18日)原子力安全・保安院は、日本原燃が出していたガラス固化体貯蔵建屋の改造工事のための設工認変更申請(4月18日、9月22日一部補正)を認可した。保安院の薦田審議官が青森県知事に認可を伝え、原燃は早々と改造工事を開始した。私達は、保安院の今回の認可と原燃の改造工事着手に強く抗議する。 原燃が4月18日に出した変更申請では、建屋の「コンクリート温度65℃以下を確保する」ことが改造工事の目的となっていた。しかし、9月22日の一部補正では、第1ガラス固化体貯蔵建屋・東棟の迷路板部等で「コンクリート温度が65℃を超える箇所が存在する」としている。すなわち、コンクリートの一般的温度制限である65℃以上になる部分が存在することを自ら語っている。これでは、当初の目的であった「65℃以下を確保する」ことはできていない。そのため、「局部コンクリート温度の制限値である90℃以下を満足することを確認した」として、「局部温度」なる概念を用いて、「90℃以下」であるから問題なしとしてしまっている。 原燃が4月18日に設工認変更申請を出してからちょうど6ヶ月目の今日、保安院は認可した。6ヶ月間の「審査」は、もっぱら保安院が主導しながら、保安院と原燃が一緒になって知恵を絞り、8月31日に保安院がクロスチェック解析作業期間の延長を指示し、9月22日に原燃が「自主的」に「補正」を出し、入念にすり合わせを行った密室の6ヶ月間だった。どうしてもクリアできない建屋のコンクリート温度について、「局部温度」でごまかした「一部補正」と認可だった。 保安院は、コンクリート温度の制限値を満たしていない改造工事の認可を取り消すべきだ。そして全ての資料を公開し、審査をやり直さなければならない。保安院は、「専門家からの意見聴取を7回行い、実物大の模型を使った試験を視察」したという(東奥日報10/18)。保安院は、「局部温度」の法的根拠を明らかにすべきだ。原燃は改造工事を即刻中止すべきである。 高レベルガラス固化体貯蔵建屋の改造工事は、ウラン試験を強行した直後の今年1月に、ガラス固化体温度の虚偽解析が発覚し、2建屋の改造を迫られてのものだった。しかし今回の改造工事でも、建屋のコンクリート温度は制限値を超えたままになる。美浜3号機事故以降も、関西電力は配管の技術基準の「解釈」を自らに都合のいいように解釈し、デタラメな配管管理を行っていた。同じようなことを、今度は保安院と原燃が一緒になって、「局部」などという概念を適用して乗り切ろうとしている。原燃も保安院も、何とか早く改造工事を完了させて、ウラン試験の最終段階である「総合確認試験」に入ることだけを最優先させている。青森県知事の意向で、ガラス固化体貯蔵建屋の改造工事が完了しなければ「総合確認試験」に入れないためである。 ガラス固化体貯蔵建屋の改造工事の欺まん性を広範囲に宣伝していこう。保安院と日本原燃一体となった、安全性をないがしろにし、「総合確認試験」入りのみを最優先させる度しがたい無責さを追及していこう。本来目指した改造工事には到底なってはいないがゆえに、「総合確認試験」入りを認めないよう、青森県知事や六ヶ所村長に働きかけよう。ウラン試験の「総合確認試験」入りを阻止しよう。 ◆本来の目的に反してコンクリート温度が制限値65℃を超える 4月18日の原燃の設工認変更申請では、改造により、設計目標としている「コンクリート温度65℃以下を確保する」としていた。 ところが、8月31日に保安院がクロスチェック解析の作業期間の延長を指示した後、9月22日に原燃から提出された「一部補正」には、非常に不可解な内容が書かれている。「審査の過程で、・・・これまで変更認可申請に記載していなかった局部コンクリート温度に関する解析結果についても説明を行いました」と称して、コンクリート温度が制限値の65℃を超える箇所の存在することが次のように明記されている。
原燃は、今年1月28日に「解析ミス」を反省したはずではなかったのか。その反省に立って、温度制限を厳しく守るように4月18日に設計変更の申請をしたのではなかったのか。いずれにせよコンクリート温度が制限値を超えることが許されてよいはずはない。 ◆「局部コンクリート温度の制限値」とは何か ところが原燃は65℃を超える部分に対し、前記のように「局部コンクリート温度の制限値」なる概念を持ち出し、その値90℃を超えないから許されるとしている。そのことが「通商産業省告示の解説」に「局部90℃」として書かれているとしている。ところが、該当する通商産業省告示第452号(平成2年10月22日)の「コンクリート製原子炉格納容器に関する構造等の技術基準」での「解説」(一部抜粋)では、下記のように書かれている。
◆安全上重要な2箇所のコンクリート温度がなぜ「その他」より高くてよいのか 原燃は前記「一部補正」の中で、制限値65℃を超える箇所として2箇所を挙げている。それらは後の図に示されている「出口シャフト迷路板部[4]」及び「天井コンクリート(搬送室床部)収納管貫通部[5]」である。これらの箇所が上記「貫通部」に相当する「局部」であるとして90℃まで許されると判断している。これらの箇所がなぜ「貫通部」なのか、また、「その他の部分」に比べてそれほど重要性の低い部分なのだろうか。実はそうではなく、逆に安全上きわめて重要性の高い部分であることが以下で分かる。 (1) 「出口シャフト迷路板部[4]」はどうして貫通部か、なぜ重要性が低いのか この箇所は図で見ると迷路板の付け根であり迷路板を片側だけで支えている部分なので、迷路板の付け根部分には迷路板の荷重が全てかかる。温度が高くなってコンクリート強度が低下すれば、迷路板の先端部が頭を垂れる。そうなると、空気流と放射線の放出とに直接影響が及ぶことになる。ここはとても「貫通部」とは思えないが、そうかどうかは別にして、どう見ても「その他の部分」より温度が高くなってもよい箇所とは考えられない。 (2) 「天井コンクリート収納管貫通部[5]」の温度が高いときわめて危険 後の図の[5]の部分は原燃が「収納管貫通部」と呼んでいるように、告示452の「貫通部」の規定を当てはめているようである。しかし、告示452はそもそも原子炉の格納容器に適用されている規定であり、その「貫通部」とは後の格納容器の図に示されているように「配管貫通部」であって、横壁を配管が貫通している箇所である。そこにかかる荷重はあまり大きくはない。 ところが、「収納管貫通部」の方は、ガラス固化体9個を内部に積み重ねた収納管がぶら下がっている箇所である。ガラス固化体1個は500kgなので、4.5トンもの荷重がまさにその「収納管貫通部」にかかっているのである。もしこの部分のコンクリート温度が高くコンクリートが劣化すれば、収納管は落下する恐れがある。30〜50年も4.5トンを支えるべき箇所のコンクリート温度が「その他の部分」よりなぜ高いことが許されるのだろうか。まったく不可解なことだ。単に「貫通部」という言葉だけを機械的に当てはめてごまかしたに過ぎないのである。 結局、「その他の部分」より安全上重要な箇所の温度が制限値65℃を超えるのに、それに対し無規定な「局部」という概念を当てはめて、あたかもそれが許されるかのような装いをしただけだとしか考えられない。 ◆保安院は認可を取り消せ、原燃は改造工事を直ちに中止せよ 原燃の解析は外気温度が29℃であることを前提としているが、最近の夏には、六ヶ所付近で34℃にも到達している。30℃を超えることが瞬間しかないなどということはあり得ない。このことを考慮すれば、温度制限はいっそう厳しく守られるべきである。 この問題はそもそも原燃の温度解析の虚偽から始まっている。今年1月14日に「解析ミス」を保安院から指摘され、1月28日にそのことを原燃は反省して、温度制限を守ることを誓ったはずだった。そのように建屋を改造することは、ウラン試験の最終段階である総合確認試験に入ることを青森県からも了承してもらう前提となっていた。 しかし、またもごまかしの姿勢で押し通そうとしているのである。そのような見せかけの「改造」が地元住民・青森県民によって了承されるはずがない。このようなごまかしを認め、総合確認試験に入ることを認めるならば、すべてごまかしの連鎖の中に引き入れられることになるであろう。それは重大な危険性への道である。 保安院はこのようなごまかしに対する認可を取り消すべきである。原燃は工事を即刻やめるべきである。コンクリート温度が制限値を超えるような改造を無理に行ってまでも、総合確認試験に入ることは断じて許されるべきではない。
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