原子力安全・保安院長 薦田 康久 様 2008年10月31日 しかし、これは課題に対する報告書とはなっていません。貴院がこのような報告書を受けとったことは、6月30日の安全小委員会で貴院が表明した方針「技術的見地から十分な確認が得られた段階で、その結果について事業者より報告を受ける」に反しています。今回の原燃の報告書が「技術的見地から十分な確認が得られた段階」のものでないことは、次の点から明らかです。 1.原燃は姑息にも、意図的に白金族濃度の低い廃液を用いて試験 驚くべきことに、原燃は試験した27バッチのうち22バッチまでは不溶解残渣の入らない廃液を用いていました。すなわち、白金族が存在する廃液の混合を避けて22バッチ分の試験をしたのです。原燃は報告書30頁「まとめ」で、「安定した運転の維持」及び「長期に運転状態を維持」に対する対策は妥当であると結論づけていますが、これは不溶解残渣の入らない廃液を用いた場合の結果を述べているにすぎません。 貴院はこのような姑息なやり方を容認・指導してきたのでしょうか。もしそうでないのなら、このような報告書を受けとること自体を拒否すべきだったのではないでしょうか。 2.不溶解残渣を混ぜない廃液による試験でも早期に白金族が蓄積 不溶解残渣を混ぜない廃液を用いた試験でさえ、早い段階から白金族の蓄積を示す複数の指標(電気抵抗、流下性、白金族指標)が悪化し、第15バッチで限界に到達しています。その結果、第16バッチで早くも洗浄運転に入ることを余儀なくされています。昨秋には炉底攪拌操作に入ったのが第19バッチ目だったのと比べて、白金族の悪影響が早く現れています。 3.不溶解残渣入りの混合廃液を用いた段階では最初から白金族が強く影響 第23バッチで初めて不溶解残渣の入った混合廃液を用いたところ、たちまち電気抵抗が低下し(図−5)、白金族指標が第24バッチから著しく悪化し(図−5)、流下性が目に見えて悪くなっています(図−5)。その結果わずか5バッチ目の第27バッチで早くも限界に到達して洗浄運転に入るのを余儀なくされています。 その後、洗浄運転では白金族が除去できないため、10月30日から炉底攪拌操作を始めたと報道されています。昨秋よりも白金族の堆積傾向が顕著であり、これ以上試験を続けても昨秋と同じ結果になることがすでに目に見えています。 結局、まがりなりにもまともな廃液を用いて実施した試験はわずか5バッチ分だけです。しかも、白金族指標が限界に達した10月27日当日に報告書を出し、宿題はすべてうまく行ったなどと結論づけているのです。このようなものを報告書として受けとる貴院の指導的立場はいったいどうなっているのですか。 白金族の影響が昨秋より早く現れたのは、昨秋に堆積した白金族を十分に取りきれないまま、強引に試験を再開したからに違いありません。やはりこの溶融炉技術では、白金族の本質的な影響から免れることはできないことが再び明らかになりました。 それゆえ、これ以上むだな試験をすることはやめるよう貴院として判断し、そのように指導するよう強く要望します。
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