4月14日みだしに記した「保安院の評価」に関して保安院との交渉を行った。この交渉は、再処理とめよう!全国ネットワークが主催し、地元六ヶ所村・東京・関西から10名が参加した。保安院からは核燃料サイクル規制課・青木課長補佐他2名が出席した。参議院議員会館会議室で午後2時から4時まで交渉を行った。交渉設定には、福島瑞穂議員事務所にご尽力を頂いた。 この日の交渉は、全国ネットワークが4月9日に出した補充質問(3月30日付の保安院の回答に対する再質問)に保安院が回答するスタイルで進められた。 ここでは、具体的に問題となった重要な点について報告する。 注釈) (1)全国ネットワークは3月23日、保安院に「日本原燃の点検結果に関する原子力安全・保安院の評価(案)」に対する質問書を提出した。 (2)3月30日保安院より(1)に対する回答があった。 (3)4月9日、保安院の回答に対する補充質問書を提出した。 青木課長補佐、聞く耳を疑う回答! ――「使用済み燃料受入れ貯蔵施設での『連絡溝』は、全て付け忘れていたので、補修した際、連絡溝の設置は、目視で確認できた」―― 燃料貯蔵プールからの漏えい(ライニングプレートの溶接部からの漏えい)を検知するために設置されている検知溝と検知溝をつなぐ「連絡溝」が確実に設置されていることを確認したのかとの質問に対する保安院の3/30付の回答は、「事業者は、目視検査等により確認していると承知している」というものであった。この回答に対し補充質問で「目視検査でどのようにして確認できるのか説明」するよう求めた。この質問は、「施設・設備の健全性は確認されている」という保安院の見解に対する反例として出したものである。 ステンレス製のライニングプレートの裏側にある検知溝相互間の連絡溝を、張り終わったプレートの上から目視することが出来たのか、これが再質問した狙いであった。 青木氏の回答は、耳を疑う内容であった。「連絡溝のところは全てめくって補修したので目視できた」。「連絡溝は全て付け忘れていたので、ライニングプレートをめくって補修した」と驚くべき回答を行った。 これまで原燃が示した報告書等には、連絡溝が全て施工されていなかったとの記載はない。そこで「どこに『連絡溝は全て付け忘れていた』ことが記載されているのか?」と再質問すると横の永山氏とこそこそ話して、「事実誤認があるかもしれないので確認して後日返答する」と答えた。 原燃の報告書では、連絡溝が加工されていなかったのは、送出しピット部で切り欠き肉盛溶接という不良溶接を行った箇所だけのはずである。連絡溝が加工されていなかったため、既に張り付けてあったライニングプレートを切り欠いて連絡溝を加工し、不良溶接で切り欠き部を塞いだと記載されている。 青木氏の回答のように燃料貯蔵プールでの全ての「連絡溝」が加工されず、付け忘れていたのなら、不良溶接・スタッドジベル切断・硝酸漏えい等の「不適切施工」と並ぶ、新たな不良施工である。 しかも、「付け忘れ」については、国が設置した「六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会」にも報告されていない。原燃の報告には、連絡溝が全て加工されていないという「不適切施工」の観点から調査を行ったとの記載はないから、「隠蔽」にもつながる問題である。 さらに、連絡溝が確実に設置されているかどうかを点検できていないとするなら、連絡溝の「健全性」はチェックされておらず、従って、書類点検や現品点検の結果「施設の健全性は確保されている」とした保安院の評価と原燃の主張は、妥当性がないことになる。 これほどに重要な問題を、青木氏の回答は提起しているのである。 (注:連絡溝と送出しピット部での不良溶接については下図を参照されたい。) ライニング溶接の工程に無理があったのではないかとの質問に対して 「原燃が示した『作業工数:6100人日』については調べていない。原燃のしかるべき人が、検討会で説明しているから(信頼できる)」(青木氏) 「工期に無理があったために不良溶接が行われたのではないか?」このことは、検討会の設置当初から問題になり続けていた。そのために、原燃は第6回検討会に資料6−5を提出した。そこでは、六ヶ所の使用済み燃料受入れプールと沸騰水型原子力発電所での貯蔵プールのライニングの後張り部を比較して、「工事量に対し投入された作業員数(工数)の比率は、後張り部の工事量(溶接線長)が約15倍(F:BWR=10.4Km:0.7Km)であるものの、投入された作業工数は、約16倍(F:BWR=6100人日:380人日)であることから、ほぼ同等であり、工事期間が厳しいとは言えないと判断できる」と説明された。保安院もこれを了承した。 そこで、原燃が工期が厳しいとはいえないとした要(かなめ)というべき根拠、作業工数・6100人日について、保安院が独自に調べたのかと質問した。回答は、「調べていない。原燃のしかるべき人が検討会で説明しているから。検討会も認めたのだから。」と言うものであった。 第1回検討会で薦田審議官が、原燃の記録が信用できないことについて「確信犯的なもの」と言明したにもかかわらず、要(かなめ)の根拠を確かめずに、原燃を信頼するというのである。 保安院としての責任を追及すると、「6100人日については、調べて後日回答する」と、か細い声で返答した。 <連絡溝> 縦の連絡溝(例:送出しピット部) 横の連絡溝(推測) 上記の二つの図は美浜の会が作成した。 送出しピット部での「連絡溝」加工と不良溶接 2003年6月24日付け保安院通達文書より抜粋 |