2008年10月7日 原子力安全・保安院長 薦田 康久 様 要請書 原子力政策転換議員懇談会 世話人 金田
誠一 この点について、10月2日に開かれた原子力防災課の大橋良輔班長及び核燃料サイクル規制課の金城慎司課長補佐との交渉で、原子力政策転換議員懇談会は原燃の「付着物」原因説の根拠・証拠を問題にし、それに対する反例を示し、さらに白金族が除去できていないことについて追及した。この場で大橋班長は、反例については白金族問題も含め、つじつまのあう原因を考慮すると約束した。 日本原燃の原因説は成り立っていないので、根本的に再検討すべきだと考える。これらの問題について再度定式化して以下に示すので、これらが解決しないうちはけっして試験の再開を認めないよう強く要請する。 1.流下ノズル温度低下の原因は加熱コイルへの「付着物」であるとの説には証拠がない 日本原燃は、流下ノズル温度が上がらなかった原因は、加熱コイルに「付着物」が付着したためだとの説に立っている。このことは、10月2日に大橋班長もそうであると確認した。では、「付着物」の成分や厚みを調査した結果はこれまで報告されているのか。また、そのような実物の「付着物」のふく射率は実測されているのか。実際の「付着物」を用いて流下ノズル温度がどれだけ低下するかという実験は行われたのか。 「付着物」説に関するそのような実態的な根拠・証拠は示されているかについて、明らかにされたい。もしこのような証拠がない場合、その説は単なる仮説に過ぎないと判断する。 もし、そうではなく、実態的な根拠・証拠が確認されているというのであれば、その事実を具体的に示すこと。 2.「付着物」説では、4月に流下したが7月2日に非流下だったことを説明できない 「付着物」説は、溶融炉内の条件とは無関係に、流下ノズルの加熱コイルによる加熱条件によって流下停止が生じた、という考えに立っている。 そこで、直近の4月の流下時と7月2日の流下時とで、流下ノズルの加熱条件を比較してみる。 ・加熱コイル自体の加熱性能には何も変化はない。 ・7月2日には低粘性流体は発生していないと確認されているので、「付着物」にも変化はない。 ・ノズルの上段加熱時間も基本的に同じである(9月12日付原燃報告30頁添付資料−8参照)。 以上によって、「付着物」説に立てば、流下ノズルの上段加熱条件には基本的に変化はない。それなのに、なぜ4月には支障なく流下し、7月2日は流下が停止したのか。この例は「付着物」説に対する反例になっている。それゆえ、「付着物」説は破綻しているのではないか。 日本原燃の原因説を評価するときは、必ずこの反例を考慮すること。 3.炉内白金族は除去できていないのではないか 炉内白金族の堆積が問題になるのは、その電気抵抗がガラスより低いために、ガラスへの電流を減らし、底部ガラス温度の上昇を妨げ、ガラスの粘性を高めて流下性を落とすからである。それゆえ、堆積白金族の除去作業後に問題になるのは、白金族による電気抵抗の低下が明確に改善されたかどうかであり、これこそが試験再開の判断基準となったはずだ。 この点、日本原燃が白金族除去作業終了後の4月に実施した電気抵抗測定値によれば、明らかに電気抵抗は改善されたとは言えない状況にある(6月11日付原燃資料60頁図29参照)。ところが、金城課長補佐はこのグラフが示すのは、もっぱら余計に堆積していたB電極側の抵抗値は改善されてA側の抵抗値に近づいたことを評価しているだけだという。 仮にこのグラフの目的がそこにあるとするなら、全体的な抵抗値が改善されたかどうかは別の何によって確かめているのか。昨秋試験の初期の電気抵抗値と比較できるグラフを示すべきだ。 また、金城課長補佐は、白金族の堆積は避けられないので、それがいかに運転に支障をきたさないようにするかが問題なのだという。しかし、昨年暮れは大いに運転に支障をきたしたために除去作業をせざるを得なくなったのではないのか。だからこそ、その状態が現在改善されているかどうかを電気抵抗値で評価する必要があり、そのためにこそ4月に抵抗測定を実施したのではないのか。 もし、全体的な電気抵抗値を測定・評価している資料が他にあるのならそれを示すこと。 4.データや検討のあり方について次の措置をとることを保安院にたいして要請する。 ・炉底部のガラス温度を示す炉底80mm温度、炉底230mm温度について、今年4月時および7月2日時のデータを公開するよう日本原燃に要請すること。これは10月2日のときに大橋班長は了解している。 ・日本原燃が最終報告を出した後、事故故障対策ワーキンググループを開催する前に、10月2日のような交渉の場をもつこと。この点については、10月2日にも転換議連として要請しているが、再度、求める。 以上、要請する。 (08/10/07UP) |