■原燃は日立に、入力データが印刷された出力シートの提示を要求 ■日立は、入力データと出力データを別々に提出 ■原燃は、これをそのまま受け入れて入力データを確認せず |
六ヶ所再処理工場で2つの設備について耐震設計ミスがあったことを日本原燃が4月18日に公表した。耐震性が不足していたにもかかわらず、昨年3月末からアクティブ試験を継続していたのである。この間に大地震の起こらなかったのが幸いだったというしかない。 この問題で我々4団体は6月4日付質問書を原燃に送り、6月15日の午後3時から4時15分まで交渉を行った。対応したのは、広報部のいつもの鈴木、松木、青木氏で、こちらの参加者は六ヶ所、岩手、大阪から4名だった。質問書について一通り口頭回答があり、文書回答は後で提出することが約束された。この交渉で、これまで公表されなかった重要な事実が回答されたので、以下でその問題に重点をおいて報告する。 ■海藻からプルトニウム検出−核実験と区別するためPu238データを別に公表せよ 最初に番外だったが、プルトニウムが海藻から検出されたという6月12日付原燃の訂正発表について質問した。はじめ検出限界以下だと公表したが、実はプルトニウムが海藻から検出されており、数値で公表し直している。しかし広報の鈴木氏は、それは再処理工場から出たものではなく過去の核実験の影響という。それなら前から要求しているように、プルトニウム238とプルトニウム239+240を区別して公表してもらいたいと改めて強く要求した。プルトニウム238の比率が他より高ければ、それは再処理工場からの放出のせいだと確定できるからである。現に福井県では、このような区別した公表を行っている。再処理工場を動かす以上、自らの放出か否かを明確にすることは原燃にとって最低限の義務である。 ■耐震設計ミスは原燃公表の4月半ばよりずっと前に判明していたのでは? この後、本来の耐震設計ミス問題に入った。まず、今回耐震設計ミスが発見された経緯が何も明らかにされていないことを問題にした。原燃の発表では、今回の耐震設計ミスは、昨年9月に耐震に関する新しい指針が公表され、それに関する耐震見直し作業の中で発見されたという。その作業の見直し計画を原燃は昨年10月18日に公表している。鈴木氏は、日立との打ち合わせは、「想像だが、昨年10月の計画発表からそう遅くはないタイミングで行われたと思う」と述べた。もしこれが事実なら、遅くともアクティブ試験の第3ステップの終盤よりかなり前の段階で、今回の設計ミスが認識されていた可能性が高い。その場合、この問題をわざと隠したままアクティブ試験を続けた疑いが浮上する。しかし、交渉の場ではこれ以上の詰めはできなかった。ただ、日立の協力会社I(日立エンジニアリング・アンド・サービス)から日立に報告がなされたのは4月11日だということを明らかにした ■保安院は2005年に入力データの点検を指示−アクティブ試験入りの前提を確認するため 今回発見された耐震設計ミスは、これまで数度の点検があったにもかかわらず発見をまぬかれてきている。その中でも、2005年1月〜2006年2月にかけての点検は非常に重要な意味をもつ。2005年1月28日に原燃は、ガラス固化体貯蔵建屋で温度解析の虚偽があったことを公表した。その虚偽は、解析コードや計算式の入力データのミスにからんでいる。そこで原子力安全・保安院は、入力データのミスが他にないことを確認するよう改めて2005年10月18日に指示をだした。その指示は、翌年初めにはいよいよアクティブ試験が始まることを重視して、その前提が成り立つことを確認するためのものであった。事実、保安院の古西課長は、「すべての膿みをだしきるよう、念には念を入れて、原点に立ち返って」点検を行うよう原燃に指示したと、2005年12月19日の第17回検討会で大見得を切っている。 ところが、このときの点検でも、今回の耐震設計ミスは発見されなかった。このことは、アクティブ試験に入る前提が実は成り立っていなかったことを意味している。それゆえ、アクティブ試験は直ちに中止すべきである。このことを今回の交渉で我々は強く要求した。しかし、原燃は、監視を強めながらアクティブ試験を継続し、予定通り本格運転に入りたいと表明した。 ■肝心な入力データの確認をサボタージュ−原燃回答の重要な新事実 なぜ2005年の点検で設計ミスが発見できなかったのだろうか。この点、日立が今年5月21日付で保安院に提出した報告書「参考資料4」のII−8頁に次の記述がある。「その後、日本原燃殿からアクティブ試験前における設計再確認として、床応答スペクトル、及び解析コードへの入力データが印刷された出力シートの提示要求があった」(下線は引用者。以下同)。ここで「その後」とは、2005年1〜4月に「日本原燃殿に問題ない旨の結果を報告した」後のことで、保安院の指示が出た10月から後を指しており、まさしく「アクティブ試験前における設計再確認」なのである。 この日立の記述によって、原燃が入力データと出力(計算結果)の関係をチェックできるように、一つの出力シートに両方を書いて提示するよう、日立に要求していたことが分かる。しかし、結局日立が原燃のこの要求にどう応えたのかは、日立報告書に書かれていない。 質問書で出したこの点の問いに対する回答は実に驚くべきものであった。入力データと出力データは「別々に出された」というのである。この同じ回答を鈴木氏は3つの質問項目について3回も繰り返した。これでは、出力データシートに入力データも記入するようにとの原燃の要求を、第一に日立は守らなかった。第二に要求した原燃は要求が満たされていないのにそれを受け入れた。そもそも入力データが正しく扱われているかを点検するために、原燃は日立に要求を出したはずなのに、そのような点検をまじめに行う意思が元々なかったことを示している。そして第三に、この問題は保安院にも波及するのである。 保安院は今年6月13日の第24回検討会に提出した評価の4頁で次のように述べている。「本件耐震計算の誤りは、解析プログラムへの入力データに誤った値を入力したことに起因したものであり、かつ、その計算結果が見かけ上妥当なものであった(事業者から申請のあった設計及び工事の方法認可申請書においては、解析プログラムに実際に入力された入力値の記載はなく、計算結果のみが記載されている。)ことから、審査の過程において本計算の誤りを見つけ出すことができなかった」。ここで重要なことは、「計算結果のみが記載されている」ことで、要するに入力値が何も記載されていなかったことである。これでは、入力値の妥当性などそもそも確認しようもないのだから、保安院はせめて2005年10月指示のときに設工認の再提出を命じるべきであった。 結局、日立、原燃、保安院が事実上グルになって点検をサボタージュし、今回の耐震設計ミスを見逃していたということだ。このことが原燃との交渉を通じて具体的に明らかになった。 ■青森県はアクティブ試験の進行を容認すべきでない しかし、これほどに重要な事実を原燃はいまだに一般に公表していないし、保安院もこの事実を問題にしないまま、前記6月13日評価で「当院は、これら原因について事業者から提出を受けた報告を基に、日立からの報告も踏まえて評価した結果、事業者が実施した原因究明及び再発防止対策は妥当なものと考える」と述べている。原発の総点検で示したのと同様の甘い評価である。 こうなると、せめて住民の安全に直接責任をもつ青森県と青森県議会がこの問題をまじめに取り上げ、アクティブ試験の進行を安易に認めないことに期待したい。 参考資料:耐震設計ミスに関する年表
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