■「不正溶接箇所は特定できないので、今後もプール水の漏えいは起きる」
■プール水漏えい−「毎時10リットルという目安値」は、
  使用済み核燃料搬入を優先するかどうかの「目安値」
■「放射能を含んだプール漏えい水は、既に海洋に放出した」
2005.7.25 原燃との交渉のまとめ


 7月25日、青森県六ヶ所村の原燃サービスセンターの会議室で、日本原燃との交渉を行った。原燃からの出席者は下記の4名、市民側は、「再処理とめよう!全国ネットワーク」と青森県内の諸団体から9名が参加した。青森県内の人々と東京・大阪・京都からの参加者が協力してのぞんだ。
 交渉では、最初の約25分間、6月23日に提出していた高レベルガラス固化体貯蔵施設の解析問題について、原燃からの回答を聞き、若干のやりとりを行った。次に、六ヶ所プールでまたも見つかった不正溶接問題と、原燃が7月12日に発表した「使用済燃料受入れ・貯蔵施設のバーナブルポイズン取扱ピットにおけるプール水漏えいの原因と今後の対応について」に関して、毎時10リットル未満という「目安値」を導入しようとしていることに関して追及した。
 交渉では、不正溶接(計画外溶接)の箇所を全て特定できないこと、そのため、今後も漏えいが起きることを原燃は認めた。そして10リットルの「目安値」とは、使用済み核燃料の搬入を優先するための「目安値」だと語った。すなわち、10リットル以上の漏えいであれば、すぐに漏えい箇所の特定・補修にとりかかる。しかし、10リットル未満の場合は、すぐに補修を行わず、使用済み核燃料の搬入計画等を勘案しながら「計画的に」補修するとのこと。これは、従来までの、漏えいが見つかればすぐに補修するという姿勢を大きく転換し、少々の漏えいより使用済み核燃料の搬入を優先させるというものだ。このことは、7/12の原燃文書には明記されておらず、青森県にもその内容については報告していないという。今後そのことを明記した文書を出すのかどうかについてもはっきりとした回答はなかった。
 また、このプールからの漏えい水は、既に海に放出したという。そして原燃は、海に放出したプール水に「放射能が含まれている」ことをはっきり認めた。再処理工場の本格稼働前から、放射能を海に放出している。
 またも起きたプール水漏えいは、スケジュール最優先で突貫工事をやってきたことのツケが今出ているということ。地元感情として、使用済み核燃料の搬入も、ウラン試験もやめてほしいと強く要求した。 
 全体として、原燃の回答の仕方は、自信なげな様子だった。その後7月27日に、原燃社長が記者会見を開いて、漏えいを放置するわけではないと「謝罪」した。しかし、「10リットルの目安値」はそのままにして、「数日から1週間」で補修する等と発言している。原燃はまず、「10リットルの目安値」を撤回すべきだ。
 以下に、交渉でのやりとりについて、まとめた形で紹介する。プール漏えい問題が主要なテーマだったため、そちらを先に報告する。

日 時 7月25日(月)午前11時〜12時25分
場 所 六ヶ所村原燃サービスセンターの会議室
参加者 原燃4名 
       鈴木良典 同室広報グループ副部長/ 西村健 広報渉外室広報企画グループ 
       畠山修一 同室広報グループ副長/ 高澤聡 総務グループ室長
     市民側9名 

(下記文中の●は原燃、○は市民側。)

[1]プール水漏れ、目安値10リットル問題について
1.使用済み核燃料の搬入を優先させる目安が10リットル/h
 ・10リットル以上の漏えいであれば使用済み核燃料の搬入はストップする。
 ・10リットル未満の漏えいであれば、すぐに補修に入らない場合もある。使用済み核燃料の搬入計画と組み合わせて、平行して勘案して計画的に補修していく。穴を放置するわけではない、直すタイミングはケースバイケース。
 ・プール水位を保つという安全面からは、少量の漏えいでは安全面は保たれているので、いちいち止めてというより平行してやっていく。

2.しかし、原燃の7/12文書では、使用済み核燃料搬入を優先させる目安だとは一切書かれていない。今後そのことを明記した文書を出すかどうかも分からない。本当の狙いは公にせず。
 ・報告書の書き方が非常にあいまいというか、ちがう書き方になってまして。
 ・記者には口頭で説明しているが、そのような内容の文書を出すかどうかはきまっていない。何らかの形では・・・。
 ・県にも話していない。

3.不正溶接(計画外溶接)の全体を把握できていないことを認める。
 ・聞き取り調査でも分からず、どこに不正溶接があるのかについては把握できない。
 ・そのため、今後も水漏れが起きることも認めた。

4.今後は水漏れは前提なのか→検知溝もついていると言いながらも、「確かに漏れてはいけません」と認めざるを得ない原燃
 ・西村氏は検知溝や、セルには受け皿もあることからすれば水漏れも前提と言いたげだったが、鈴木氏がそれを制して「確かに漏れてはいけません」と発言。
 ・しかし、廃液処理の系統で蒸発させたりして安全に海洋に放出していると。

5.検知溝から離れた箇所での漏えいは確認できるのか?→はっきりしないので確認する。
 ・コンクリートとステンレスの間には微妙な隙間があり、検知溝から離れた箇所の水漏れは、その隙間を伝って下に落ち、検知装置に入っていくので、検知できると思うが、正確に確認する。
 ・プール構造は詳しい資料があるので後に送付する。

6.「疑義のあるグラインダー痕」とは?→「よく分からないが、技術者が見ておかしいと思うもの」
 ・グラインダー痕には疑義のあるものとないものの二種類があるのか?その違いの判断基準はなにか?
 ・私もはっきり分かりませんが、技術者が見ておかしいと思うものが「疑義のある」です。判別するためのマニュアルもある。

7.なぜこれまでどおりすぐに補修しないのか→自信なげな小さな声で「品質保証体制ができたので、すぐに補修しなくても大丈夫」。
 ・前回のプール漏えいでは品質保証体制ができていなかった。今回はその体制もできており、水漏れも発見できた。すぐに補修しなくても体制ができている。

8.今後は全て水中検査、水中補修。漏えいの原因も水中検査で分かるのか?
 ・プールのどの箇所でも水中検査で漏えい箇所が分かる。
 ・水中での補修技術はできている。その装置の手配はまだ。
 ・原因の特定についても水中検査で分かると思うが・・・と言葉を濁す。

9.漏えい水は既に海に放出。「放出したものには放射能が含まれています」と明言。
 ・本格操業前から、想定外の放射能水を海に放出。
 ・ 漏えい水は「放射性物質を除去し、放射能濃度を確認した後、海洋に放出している」とあるが、完全に放射能を除去したのか?
 ● 放出したものには放射能は含まれています。
 ○ 放出した漏えい水放射能濃度と、いつ放出したのかを示してほしい。

10.漏えいを前提にすることについて県からの了解は得ていない。
 ・これまではすぐに補修していたが、今後は漏えいを前提にするという方針転換。しかしこのことについて県からの了解は得ていない。
 ・安全協定の対象ではないのか?
 ・そもそも前回のプール漏えいで総点検をして、今後プール漏えいは起きないことを前提にウラン試験の安全協定を結んだのではないのか?

11.今回の不正溶接について、職員への聞き取り調査は行っていない。
 ・前回のプール漏えいの時、聞き取り調査を行ったが、その時、今回の箇所の話は出てこなかったので聞き取り調査はしていない。
 ・前回の漏えいの後の総点検で聞き取り調査も含めて保安院からお墨付きを得ているため、新たに聞き取りをやったとは言えず。

12.またも起きたプール水漏えいは、スケジュール最優先で突貫工事をやってきたことのツケが今出ているということ。地元感情として、使用済み核燃料の搬入も、ウラン試験もやめてほしい、と強く要求した。

[2]原燃が調べておくと約束したもの等
1.通常の溶接線から離れて裏に検知溝がない箇所で漏えいがあった場合、漏えいを確認できるのか確かめて回答する。

2.上記との関係で、プールの構造に関する詳しい資料については送付することを約束。

3.今回の漏えい水を海に放出したことについて、放出した日、含まれていた放射能の種類と濃度は調べて知らせるとのこと。

[3]6/23申入書と質問書(高レベルガラス固化体貯蔵建屋の解析問題)について
 (「文書での回答は準備できていないので口頭で行います」と原燃)

1.解析に用いたBC、LBC等の数値公開要求について→
(原燃)メーカのノウハウなので公開できない。

 ・「単なる数値」ではなく、メーカのノウハウに関するもので、ノウハウを持たない者にも設計情報を知らせることになり、「解析の詳細」を知らせることになるので公表できない。

2.申し入れ事項(3)の二つめのポツ−建屋から外部に漏れる放射線の量について
 ガラス固化建屋(KA)と東棟について、1991年の申請時と今回の改造申請時で、建屋から外部に漏れる放射線の量について→
(原燃)温度を下げるため開口部を大きくしたが、ルーバー設置等で遮蔽効果を高め、外部に出る放射線の量は下がっている。


 ・建屋の構造が異なり、考慮する放射線の影響が異なるために、単純な比較はできない。
 ・改造によって迷路板の開口部を大きくしているが、ルーバー設置・迷路板設置で遮蔽能力を確保しており、敷地境界線での実効線量は0.005ミリシーベルト(安全評価)以内で評価している。
 ・それぞれについていくらかと聞くと、数値を答えた。若干ではあるが、外に出る放射線は下がったことになっている。下記数値はガンマ線と中性子線の合計。
  ・KA施設 改造前      2.2×10マイナス6乗mSV/h
         改造後      1.3×10マイナス6乗mSV/h
  ・東棟   改造前      4.6×10マイナス6乗mSV/h
         改造後      4.1×10マイナス6乗mSV/h
 ・ただし、上記の数値が、シャフト部合計(入口と出口)だけなのか、建物全体から出る放射線を考慮したものかは定かでなかった。 

・設工認の変更申請書の公開について、→(原燃)現在マスキング中。
 最終的には出す形になるが、機微情報や契約で控えるところをマスキングすることになる。マスキングが済めば出せると思うが、今の段階では確答はできない。

3.質問事項2の(1)について−温度解析値と同様の誤りが他の施設・設備に存在しないことを確認しているか。
(原燃)設計変更したから温度の解析値がかわるというものではない

 ・設計変更後も従来の解析目標値を満足するように考慮しているが、設計変更したからただちに温度の解析値が変わるということではない。

4.質問事項2の(2)について−「文献式の解釈誤り」の説明は成り立たないのではないか→(原燃)「疑っている意図は分かりますが・・・」
 この問題については、「迷路部断面積」と「流路断面積」が同じなのか違うのかがカギだが、非常に微妙な回答の仕方。「迷路部断面積」も「流路断面積」も空気の通りやすさを示す基本的に同じ概念であることは認めた。しかし、「迷路部断面積」の小さい数値2.7でガラス固化体温度を計算したとは決して認めず、計算は別の間違った面積を用いて行ったという。しかし、小さい数値2.7で正しい計算をやっていながらわざと前回と全く同じ数値にしてしまったのではないかというこちらの意図は重々分かっているという言い方。

 ・「迷路部断面積」も「流路断面積」も空気の通りやすさを示す基本的に同じ概念であることは原燃も認めた。
 ・H13年7月の変更申請で「迷路部断面積」を2.7と書くべきところを4とし、H15年の変更申請で4を2.7と変更したのは事実。しかし、除熱計算で別の「流路断面積」を誤って解釈したため、解析を誤った。
 ○変更申請書では、基本的に正しい「迷路部断面積」の値、つまり2.7という小さい値が書かれているのではないか。それなのにそれが計算に反映されていないというのはおかしいのではないか?
 ●その辺ははっきりと言えないが。2.7で計算したと思いこんでいたが、実際はそうなっていなかった。
 ○変更申請書で「迷路部断面積」を4から2.7にわざわざ変更している。しかしそれを使わなかったというのは不思議な話で納得がいかない。2.7を使っていたのなら解析温度は変わっていたはず。わざと間違えたのか?2回とも全く同じ解析結果というのはおかしい。
 ●疑っている意図は分かります。解析は別の結果があるのに、同じ数値を書いてしまったと疑っているということは分かります。(原燃の鈴木氏)
 ○「流路断面積」の正しい数値だけでも出してほしい。
 ●HTRIの組織に入っているものだけが使えるものなので公表できない。
[注:HTRI: Heat Transfer Research Inc.熱交換器に関する国際的な研究組合。米国の団体。崩壊熱の除去解析はこのHTRIの式を使っている。今年1月28日原燃報告書より]

5.質問事項2の(3)−解析誤りの責任は元請け(石川島播磨)ではなく原燃にあると政府は答えているが、誰が、どのような責任をとったのか。→誰も具体的な責任はとっていない。
 ○計算ミスは石播の新入社員がやったのかと聞いたら、引き継ぎがうまくいかずそのまま見逃されたということだったが本当か?
 ●はい。
 ○石播の社長がなぜ謝りにこないのか。元請けといっても立場が逆のようだ。
 ●チェックができなかったのは私どものミスでもあり、ひたすら私どもがお詫びするしかないと。
 ●(責任問題については)言いにくいですが、原因を究明し、改善していくことで責任をまっとうしたいと。