年明け早々の1月6日と7日、美浜の会の2名は、雪の六ヶ所に出かけてきた。6日午後に六ヶ所村での学習会に参加し、7日には朝10時から再処理工場の問題で日本原燃と交渉するためである。この交渉の方針は、すでに昨年12月14〜16日に「再処理とめよう!全国ネットワーク」の三沢合宿で決められ、その基になる申し入れ書(1月7日付)がすでに昨年暮れに菊川さんから日本原燃にFAXで送付されていた。 この申し入れ書は2つの趣旨を踏まえている。第1は、プルサーマルが事実上頓挫して再処理の目的が失われていること。第2は、日本原燃の海洋放出放射能による被ばく評価では、西向海流がないと勝手に想定して虚偽の被ばく評価をしていることである。 そのため、@化学試験を直ちに中止すること、A使用済み燃料の搬入を中止すること、B安全評価に虚偽があることを認めこれを撤回すること、を申し入れている。 この交渉で、広報渉外部の山口副部長は、きわめて重要な事実を認めた。海流問題について、西向き流をわざと(意図的に)無視したことをはっきりと認めた。その理由は、泊漁港での海藻類による被ばく線量を高めに(保守側に)評価するためだというのである。この理由はまったく成り立たないが、この言質は今後の運動にとって重要な基礎となりうる。日本原燃にも宿題を残したが、当面の原子力安全保安院との同様内容の交渉で、この言質がものを言うに違いない。 交 渉 記 交渉は、六ヶ所PR館の向かいにあるレストハウス2階で行われた(原燃は絶対に事業所内では住民への対応をしないらしい)。10:00開始、10:45終了の45分間である。後に記者会見が控えていたため、短い時間の交渉となったが、当初考えていたような、「分かりません。とにかく承っておきます」というようなノレンに腕押し式の対応ではなく、原燃側がこちらの主張に反論してきたため、いろいろと面白い答を引き出すことができた。 原燃側は、広報渉外部の山口副部長の他に3名が出席したが、発言したのは山口氏だけだった。こちら側は、菊川さん、福澤さん、ビデオ撮影の東京の2名、そして美浜の会の2名の計6名だった。申し入れの場には4紙の記者も同席した。 まず菊川さんから改めて趣旨説明と、原燃に対する申入れ。その後、事前にFAXしていた申し入れの内容について回答を聞き、それについて交渉する形となった。 申し入れの内容は大きく分けて2点。プルサーマル頓挫という状況の下、再処理については(一時的にせよ)中止するのが当然ではないかというのが第1点。もう1点は、西向海流を無視し、東向海流を付け加えている申請書の安全評価は虚偽を含んでおり、撤回すべきというもの。 前者について原燃は、「プルサーマルの実施が厳しいという現状については認識している。しかし、電力業界や国は信頼回復に邁進しており、必ず道が開ける。再処理事業も可能になるはず」と予想通りの回答。「刈羽村でまかれた平沼ビラの意図はプルサーマルを必ず実施するということ」、「国を信頼している」との逃げ口上に終始した。そこで「プルサーマルの実現を再処理事業の前提としている以上、プルサーマルが実現不可能になれば、再処理もやめると約束するのか」という形で追及した。これに対して原燃は「仮定の話はできない」と逃げようとした。しかし最終的には、(1)プルサーマルの実施は厳しく現実的メドはない、(2)プルサーマルの実現が再処理事業の前提というのが原燃の基本的立場、以上2点について確認を取ることができた。 次に海流の問題についての原燃の回答には、二重の驚きを受けた。「安全評価に際して、泊漁港での海藻による被ばく線量をなるべく高くするために、あえて西向き流を考えないようにしている」。これがその回答である。原燃は、西向き流を無視していることをはっきりと認めた。これが第一の驚きであった。その上で原燃は、泊で獲れる海藻類による被ばく評価を保守的なものにするために、わざと無視したと説明したのである。岸に向かう流れを無視して、なぜ被ばく量が大きくなるのか。誰が考えてもおかしいことを平然という。これが第二の驚きであった。 また、申し入れ書の「蓄積を無視している」との指摘に対しては、「線量評価を高くするため、蓄積を考えずにやっている」。三陸海岸まで届くという問題に対しては、「距離も遠く希釈される」とした上で、「さらに海流は三陸で行き止まりにはなることはない。もっと広がっていってどんどん希釈される」と、広範囲の汚染をも公然と認めた。その根底には、「濃度さえ低ければ、どれだけ放射能をまきちらそうが構わないではないか」という、一般常識から遠くかけ離れた彼らの特異な「常識」がある。これらの問題は残念ながら時間切れで追及できなかった。 上記の西向き海流問題について、こちら側は、西向き流を無視しただけではなく、東向き流を付け加えていることを指摘し、申請書の評価は保守側ではなく、逆に過小評価ではないかと主張。西向き流を無視することで線量が高くなるという具体的な根拠を出すように要求した。これに対して原燃は具体的に答えることができなかった。「申請書の該当箇所を書いた本人に訊いたところそう言っている」。とにかく「線量を高くするために、西向き流を無視したのだ」と繰り返した。 原燃の海流実測データを用いたこちらの評価では、泊での放射能濃度は原燃の申請書値の6倍になると言うと、それに対しては苦し紛れか、「6倍と言っても、色々あるでしょ。例えば米粒1粒が6粒になったというようなことではないですか」と言い出してきた。とにかく少量なんだから、被ばく量が6倍になろうが何だろうが大したことないじゃないかという居直りである。「それはどういう意味なのか」と参加者の間からは怒りの声があがった。それなら、なぜ彼らは「保守側に」評価するために西向き流を無視するような行為をわざわざしたのだろうか。 最後には、「とにかくこちらからは申請書には間違いがあるという具体的な問題提起を行った。それに対してそれが違うと言っているわけだから、その根拠を具体的に原燃は示すべきではないか」と詰め、計算方法や結果等、文書回答を要求した。 山口副部長は「答えるかどうかも含めて持ち帰って検討する」と逃げようとした。また、「申請書を書いた人間がいるのだから回答できるではないか」と攻めると、「書いた人間の話は何を言っているのか難解で分かりにくくて....」などと言う。では、その申請書を書いた当人に出てきてもらえれば話が早いではないかと返すと、「いやいや、それはこちらでやります」と言う。そんなやりとりをしばらく続けながら、追及し続けた結果、最終的に2週間をメドに回答することを約束させた。 |