燃料せん断の中断原因は不透明−六ヶ所再処理アクティブ試験
◇10月1日にトラブル発生、事実と原因の公表は9日−なぜこんなに遅いのか
◇2つの原因−バスケットの変形とエンドピースの落下−は同時に起きたのか
◇9月の燃料せん断の中断、その原因は何か


 六ヶ所再処理工場アクティブ試験の第4ステップにおける燃料せん断の中断について、当会は10月9日に原因を明らかにさせようとの記事をホームページに出したが、同じ9日に日本原燃は中断の原因を公表した。それは「試験運転状況」の「トラブル情報と運転情報等の一覧」の中にこっそりと次のように書かれている。
エンドピース酸洗浄槽におけるバスケットの一部変形について (10月9日)
 10月1日(月)22時頃、前処理建屋において、使用済燃料のせん断中にエンドピース酸洗浄槽内のバスケット※1の動作が停止した。
 状況を調査したところ、10月5日(金)に当該バスケットの扉の一部に変形が確認され、エンドピース酸洗浄槽底部にエンドピース※2(下部)が確認された。今後、当該バスケットを補修するとともに、当該エンドピースを回収する予定である。
※1バスケット:エンドピース酸・水洗浄槽内に設置されている籠状の容器で、中に端末を入れて洗浄するためのもの。
※2エンドピース:使用済燃料の上部端末及び下部端末  

 つまり、せん断の中断はエンドピース酸洗浄槽内のトラブルにあるとしている。せん断工程の下流にある酸洗浄槽内でトラブルが起これば、せん断は自動停止するようになっている。
しかし、この公表の仕方や内容は不透明であり、次のような疑問が起こる。
(a) せん断の中断は10月1日の22時頃に起きている。新聞報道では酸洗浄槽で警報がなったと言われている(10月5日付河北新報)。それなのに中断の事実と原因の公表は9日になってようやく行われた。なぜそのように遅れたのか。
(b) 原因として2つの事象が挙げられている。第一はバスケットの扉の変形、第二はエンドピースが洗浄槽下部に落ちていたことである。しかし、これらは同時に起きたのか、同時ならその関係はどうか、同時でないなら落ちたのはいつか等にはまったく触れていない。
(c) 今回の公表では10月1日以降のせん断の中断にしか触れていないが、中断は9月にも起きている。9月21日〜28日の8日間で、完全にせん断のストップしたのが5日間あり、他の3日間でもわずか5体と2/3しかせん断できていない。このときの原因にはまったく触れていない。

 そこで、多くの人たちがこの問題に関心をもって監視してもらうよう、このトラブルについて多少は解説的に整理しておきたい。

1.エンドピースとは
 現在せん断しているのはPWR燃料で15×15型の燃料集合体だと思われる。これは図1のように、204本の燃料棒が束になったもので、約20cm×20cmの断面をもつ。その上端及び下端からそれぞれ約7cm分を切り取ったものがエンドピースである。燃料棒の端部分にはペレットを押さえつけるためのスプリング(バネ)が付けられており、せん断したとたんに解放されて伸びた形になる。つまり1体のエンドピースで204本のスプリングがはみ出しており、あちこちにひっかかってトラブルを起こす。せん断された他の燃料部分は溶解槽に落ちるが、エンドピースは別ルートを通って酸・水洗浄槽に運ばれ洗浄される。

2.今回起きたトラブル
 今回のトラブルはその酸洗浄槽で起きたということだ。図2の酸洗浄槽の中にはバスケットが入っており、新聞報道によればその大きさは60cm×60cm×2m(高さ)ということだから断面は四角形をしているらしい(このような基礎的な数値を原燃はいつもいっさい公表しない。例えば配管減肉が問題になったとき、原発であれば電力会社はその直径などを公表するが、原燃は一切しない)。
 このバスケットは上下に動く間に硝酸が中を通り抜けてバスケット内のエンドピースを洗浄するらしい。酸洗浄が終わると、ちょうど右側の水洗浄槽への橋渡しをする管の位置にバスケットを止めて扉を開ける。今回はこの扉が歪んでいたという。
 では、もう一つのトラブルであるエンドピースの落下はどうして起きたのだろうか。上記の歪んだ扉の位置から落下することはありそうにない。
 実はエンドピース落下のトラブルは、原燃のトラブル等事例集のNo.4−01で以下のように想定されている。落下は図3のように、せん断機から導いたエンドピースを酸洗浄槽のバスケットに入れるときに起こるという。図3の検出器(1)が、せん断機から落ちてくるエンドピースによる振動
をキャッチすると、バスケットの左側の扉が開いて中に入るようになっているのだが、その途中でエンドピースのスプリングがどこかに引っかかるとエンドピースは途中でいったん止まる。ところがバスケットは、検出器から受けた信号によってエンドピースは無事バスケットに入ったものと勘違いして上に上がってしまう。その後に、ひっかかりがはずれて酸洗浄槽の入り口に到着するエンドピースが槽の底に落ちてしまうということだ。
 では、今回のエンドピースの槽底への落下と右側扉の歪みの間にはいったいどのような関係があるのだろうか。原燃に電話で聞いたがまだ分かっていないという。落下はもっと前に起きていたのではないかとの疑いさえ生じる。この点を、9月中断の原因とともに原燃は明らかにすべきである。

3.今後の修理等
 歪んだ扉の取替えと槽底のエンドピースの回収はすべて遠隔操作で行われるという。槽底のエンドピースを回収するためには、中の硝酸を抜き取り、バスケット等をとりはずし、つかみ器具を中に入れてとりだすことになるが、図4のように、これら一切が遠隔で行われる(定型的保守作業事例集[遠隔保守]No.1-A-15)。扉はどうやって取り外し、新しいものをどうやってセル内に入れて取り付けるのかなどは明らかでない。
 いずれにせよ相当な時間がかかり、第4ステップの進行が遅れるに違いないが、原燃は「現時点では試運転(アクティブ試験)のスケジュールに影響はない」としている(10月10日付デーリー東北)。実は、原燃は9月7日に「アクティブ試験計画書」を改訂し、「試験工程については、試験運転の進捗により変更することがある」などという断り書きを付加している(計画書の図−1注)。せん断が遅れるとせん断の体数を予定より減らして日程を合わせる可能性がある。いつものようなスケジュール優先は断じて阻止しなければならない。
 まずは、せん断の中断原因を余すところなく徹底的に公開させよう。

(07/10/11UP)