六ヶ所再処理工場事故日誌
アクティブ試験開始から3ヶ月間で11件もの事故・トラブルが発生


アクティブ試験第1ステップ (2006年3月31日〜6月26日)
(11)6月25日 精製建屋で三たびミキサセトラのかくはん機が故障
(10)6月24日 分析建屋で今度は19歳の下請け労働者がプルトニウムを吸い込んで内部被ばく
(9)6月16日 ガラス固化体貯蔵建屋で下請け労働者が負傷
(8)6月8日 精製建屋でまたもやミキサセトラのかくはん機が故障
(7)5月25日発表 分析建屋でプルトニウム等による被ばく事故
(6)5月23日 高レベル廃液ガラス固化建屋 セル密閉作業中にクレーンフック落下
(5)5月17日 精製建屋で配管T字継ぎ手から試液7リットル漏えい
(4)5月6日 精製建屋でプルトニウム濃縮液ポンプの故障
(3)5月3日 精製建屋でかくはん機駆動用モータの故障
(2)4月23日 分離建屋と精製建屋間の洞道での漏えい放射能検出
(1)4月11日 前処理建屋でハル洗浄水の漏えい事故


(11)6月25日──精製建屋で三たびミキサセトラのかくはん機が故障
 6月25日、精製建屋において、またもやミキサセトラのかくはん機が故障した。ミキサセトラの洗浄のためにかくはん機を起動したところ、動かなかったという。原燃はHP上の発表文に「かくはん機は、故障があった場合には予備品と交換することで復旧する機器」だとわざわざ断り書きを入れているが、それほど経年劣化していない機器で、立て続けに故障が連続するのは異常事態という他ない。
 ○原燃発表資料 6月26日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060626-recycle-d01.html

(10)6月24日──
分析建屋で今度は19歳の下請け労働者がプルトニウムを吸い込んで内部被ばく
 6月24日、前回被ばく事故があった分析建屋の隣の部屋で、今度は下請け会社の19歳の労働者がプルトニウムを吸い込んで内部被ばくするという事故が発生した。被ばくした労働者は、プルトニウムを含んだ放射能溶液を焼き固めた試料皿をピンセットで取り出し、分析機にかけるという作業中に被ばくしたという。原燃は、ハンドフットモニタによる測定で両手と右靴底から放射性物質を確認し、鼻スミヤ試験によって放射能の吸入を確認。2ミリシーベルト以上の内部被ばくの可能性があるとしてこの被ばく事故を発表した。
 5月の被ばく事故の際、原燃は再発防止策としてマスク着用を義務づけるとしていたにもかかわらず、今回事故の起こった部屋ではマスク着用の必要はないとしていた。
作業員の両手袋、両靴底、部屋の床がプルトニウムで汚染されていた。フード内での作業にもかかわらず床面が汚染されていたということは、プルトニウムを含む試料が実際にはきちんと焼き固められておらず、容易に飛散するような状態であったということである。マスク着用以前に、このような欠陥のある試料を取り扱うことが、そもそも問題である。
 原燃は6月29日に「線量評価の現況」を発表。さらに7月3日に「作業員の内部被ばくに係る調査結果について」を発表した。この報告の中で原燃は、鼻スミヤで鼻腔内にアルファ核種が検出されているにもかかわらず、バイオアッセイ(糞を測定して内部被ばくの程度を評価する検査)ではプルトニウムおよびアメリシウムが見つからなかったとし、「内部被ばくはなかった」と結論づけている。
 ○原燃発表資料 6月24日/6月29日/7月3日
  http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2006/pr060624-1.html
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060629-recycle-01.html
  http://www.jnfl.co.jp/press/pressj2006/pr060703-1.html

(9)6月16日──ガラス固化体貯蔵建屋で下請け労働者が負傷
 6月16日、ガラス固化体貯蔵建屋のB棟で下請け会社の作業員が右手指に火傷を負うというトラブルが発生した。クレーンの整備のためにグリス(潤滑油)注入作業後、袖口についたグリスを除去するために洗浄スプレーを使用、その後、休憩時間に煙草に火をつけたところ右袖口に引火したという。
 ○原燃発表資料 6月19日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060619-high-c01.html

(8)6月8日──精製建屋でまたもやミキサセトラのかくはん機が故障
 6月8日、精製建屋において、ウラン精製工程を開始するためミキサセトラのかくはん機を動かした所起動せず、かくはん機の故障が明らかとなった。原燃はかくはん機を予備品と交換し6月11日にウラン精製工程の運転を再開したとしている。かくはん機が動かないという同じトラブルは5月3日にも発生している。今回故障したのが5月3日と同じかくはん機かどうか原燃は明らかにしていないが、同種の箇所でまったく同じ故障が発生していることは、ミキサセトラのかくはん機に構造的な欠陥があることを示唆している。
 ○原燃発表資料 6月12日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060612-recycle-d01.html

(7)5月25日発表──分析建屋でプルトニウム等による被ばく事故
 5月25日、原燃は分析建屋で下請け労働者の内部被ばく事故が起きたことを明らかにした。同日の発表では、服の右胸部に汚染が確認されたとし、その汚染が最大でα核種が1.5Bq/cm2、β核種0.17Bq/cm2で推定被ばく線量は0.01mSvだとしていた。6月9日に原燃は、「調査結果と今後の対応」を出したが、被ばくに至った経緯については推測のみに終始し、具体的な根拠に基づく説明が一切なされていない。原燃の説明は、(1)フードに持ち込んだ試料皿の裏が汚染されていた可能性がある、(2)二重に着用しているゴム手袋の二重目を捨てる際に廃棄物容器の汚染が一重目の手袋に移った可能性がある、(3)エプロンの取外しに伴い体内に取込んだ可能性がある、というものである。しかし、試料皿の汚染というがいったいいつからどの程度汚染されていたのか、廃棄物容器の汚染とはどの程度のものだったのか、そもそも試料皿の汚染とどういう関係にあるのか、また5月25日の発表での服の右胸部の汚染について6月9日では一切触れられていない。作業員の服はいったいいつからどの程度汚染されていたのか、汚染源は一体何だったのか。これらの具体的な数値は一切示されていない。それにもかかわらず原燃は、作業員の安全よりも作業効率を優先し、マスクの着用を「対策が定着するまで」としている。
 ○原燃発表資料 5月25日/6月9日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060525-recycle-01.html
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060609-recycle-01.html

(6)5月23日―─高レベル廃液ガラス固化建屋 セル密閉作業中にクレーンフック落下
 5月23日、高レベル廃液ガラス固化建屋の機器の保守・補修を行う部屋で、機器の運搬などに使う重さ約140キログラムのクレーンのフックが、約10メートルの高さから落下するという事故が発生した。ガラス固化建屋は準備作業中で、事故を起こしたクレーンを使って足場材の移動作業を行った後、フックに荷物を付けていない空荷の状態で巻き上げた所、直径8ミリのワイヤが2本切れたという。なぜ空荷の状態でワイヤが切れたのか、原燃は原因を調査するとしているが、未だ事故の原因は明らかにされていない。
 ○原燃発表資料 5月24日
   http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060524-recycle-d01.html

(5)5月17日──精製建屋で配管T字継ぎ手から試液7リットル漏えい
 5月17日19時頃、精製建屋内の硝酸ウラナス貯槽からプルトニウム洗浄器に硝酸ウラナス溶液を送るための配管のT字継手で放射性の試薬が7リットル漏洩するという事故が発生した。下請けの社員が異臭に気付き部屋(精製建屋1階の管理区域内にある試薬分配第1室)を覗いたところ、漏洩液の流出を防止するための堰に液体が溜まっているのを発見したという。すでに昨年7月のウラン試験中に類似のT字継手で漏えい事故が起きていた。原燃は同種のT字継ぎ手62個のうち、腐食環境にあるとする38個を交換し、5月30日には精製建屋の運転を再開した。
 しかし、事故の原因は何も明らかになっていない。原燃は「非金属介在物が硝酸ウラナス溶液により侵食、貫通したことによる漏えい」としているが、なぜどのようにして継ぎ手の製造工程で不純物が混ざったのかその原因は明らかになっておらず、他の継ぎ手や配管の製造工程で不純物の混入がないかどうかも確認されていない。また、そもそも「非金属介在物」とは何なのか、「酸化物、硫化物等の不純物」としているだけで具体的には明らかにされておらず、腐食から貫通に至るメカニズムも明らかにされていない。
 ○原燃発表資料 5月18日/5月29日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060518-recycle-b01.html

(4)5月6日──精製建屋でプルトニウム濃縮液ポンプの故障
 かくはん機駆動用のモータを取り替えて運転を再開した翌日、同じ精製建屋で今度はプルトニウム濃縮液ポンプに故障が発生した。濃縮液計量槽からプルトニウム濃縮液中間貯槽へ硝酸溶液を移送するためのポンプを動かした所、異音が発生したためポンプを止めたという。原燃は、原因調査の上、必要があれば部品交換を行うとしているが、原因も対策も明らかにされていない。
 ○原燃発表資料 5月8日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060508-recycle-d02.html

(3)5月3日──精製建屋でかくはん機駆動用モータの故障
 洞道での放射能検出の調査報告があった翌日の5月3日、今度は精製建屋において、ウラン精製工程を開始するためミキサセトラ(ウラン・プルトニウムの分離・精製工程で用いる溶媒抽出装置)を動かした所、かくはん機の駆動用モータが故障していることが明らかになった。原燃はモーターを予備品と交換し5月5日に運転を再開している。経年劣化によるものではない。はじめから故障していたとしか考えられない。なぜ、そのような欠陥品が取り付けられていたのか、同じような問題を抱えるモータは他には使われていないのか、原燃は一切明らかにしていない。
 ○原燃発表資料 5月8日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060508-recycle-d01.html

(2)4月23日──分離建屋と精製建屋間の洞道での漏えい放射能検出
 4月23日、分離建屋から精製建屋に配管を導く洞道(閉鎖された配管用通路)において、漏洩検知ポット内の液を採取し、分析を行ったところ放射性物質が検出された。原燃は、5月2日に「調査結果」を公表したが、「洞道内の配管からの漏えいではないものと判断」し、「低レベル廃液貯槽等から混入したものと考えられます」との推測を述べているだけで、どの貯槽からの漏洩かは特定できず、「引き続き、原因究明のための調査を継続する」としている。それにもかかわらず、原燃は5月3日からせん断作業を再開した。さらに、発生から2ヶ月近くが経過した現在になっても漏洩箇所についての発表はない。
 ○原燃発表資料 4月24日/4月26日/5月2日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060424-recycle-b01.html
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/200604-month/re_siken.html
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060502-recycle-b01.html

(1)4月11日──前処理建屋でハル洗浄水の漏えい事故
 4月11日、前処理建屋の溶解槽セル(部屋)内において放射能を含むハル(燃料被覆管)洗浄水約40リットルが漏えいした。溶解槽では、せん断された燃料棒が硝酸で溶かされ、溶け残った燃料棒のサヤ(ハル)はハル洗浄槽に送られ残留している放射能を洗い落とす。今回の漏洩は、その洗浄水を抜き出しそれを他に移す作業をしている際に起こった。ハル洗浄槽には、洗浄水を抜き出すためのノズルが底部から突き出し、その上部は閉止プラグで止められている。洗浄水を抜き出すためには、操作員がセルの外から窓をのぞきながらマニピュレータの遠隔操作で閉止プラグを取りはずさねばならない。ところが、原燃の説明では、操作員は閉止プラグでなく、その下にある接続用部品を取りはずしてしまったため中の洗浄水があふれ出たという。
 原燃は防止策として、間違えないように閉止プラグに色を塗ったとしているだけである。しかし、なぜ作業員が間違った操作をしたのか、なぜ簡単に漏れるような構造になっていたのかなどの疑問については何も明らかになっていない。また、セルは人が入れないような構造になっているはずなのに、どのようにして閉止プラグを取り出し色を塗ったのかも謎のままである。
 ○原燃発表資料 4月12日/4月20日
  http://www.jnfl.co.jp/daily-stat/topics/060412-recycle-b01.html