プール水漏れ問題について、7月26日に青森県に要望書を渡し交渉を行った。交渉では、前日の日本原燃交渉で確認した内容について、県としての態度を確かめることが自然に目的となった。しかし、県の態度は全体的に、「国の判断待ち」に終始し、独自の姿勢・内容は提示されなかった。それでもその中で、今後引き続いて問題にすべき点がいくつか浮かび上がってきた。 ・水漏れの「目安」毎時10リットルについては、翌日の原燃社長の見解修正表明があったが、漏れたとき、どの程度の期間で修理に入るのかにはまだあいまいな点がある。 ・未知の計画外溶接を抱えた欠陥プールで、漏えい水を把握できない場合もあるが、これが検討されていない。 ・前回、総点検で安全だと確認し、それでウラン試験の安全協定を結んだはずではないのか。 ・放射能を含んだ漏えい水をすでに海洋に放出したが、海洋放出の法的濃度規制がない。安全協定にも濃度規制がない。 ・総じて、国の判断まかせで、県として県民の安全・安心を守る独自の姿勢がない。 ここでは、交渉内容について、時間順序を追って簡単に箇条書き的にまとめておきたい(ただし、窓が大きく開けられていたため、外の車の音が絶えず大きく響く上、相手は小さな声でしゃべるので聞きとれないことがしばしばあった)。 ■県の出席者:資源エネルギー課・課長代理 総括副参事 水野幹久氏 ―――主な回答者 同課 企画グループリーダー 総括主幹 小山田康夫氏 原子力安全対策課・課長代理 副幹事 阿部征裕氏 ―――安全問題で発言 (同課 鎌田氏:阿部氏の上司らしいが、後部の横にいて携帯で対策課と連絡する係のよう) ■市民側出席者:5名 ■交渉内容 1.原燃はプールからの漏えい量として毎時10リットルを「目安」と呼んでいるが、それは何の目安だと理解しているか ─県として独自の評価基準はあるか。県は安全協定の一方の当事者ではないか。原燃が漏えいしていても発見できたからよいとしているのは、従来より後退ではないか。 [県](目安については7月12日付原燃見解そのままを説明)。いま、保安院に原燃の出した計画の評価を願っている。法律に基づく規制は国の問題なので、国に評価を預けた状態だ。 2.7月12日の原燃の見解について、事前に原燃から県の了解を求められたか [県]それはなかった。県としてはいい悪いという立場にない。 3.毎時10リットルの目安と使用済み核燃料搬入との関係は理解しているか ─原燃交渉でその目安は使用済み核燃料を搬入するかどうかの目安だと言ったが、そのことは聞いているか。 [県]「聞いていない」(水野氏)。これに対して、横の阿部氏が「聞いている」と何度も口を挟んだが、詰めると、結局は補修計画のことを聞いたというだけだった。 4.水中溶接技術について、手配はまだできていないと原燃は言っているが、どう聞いているか。 [県]いつから適用できるかなど検討する。 5.計画的に補修というが、速やかに補修を第1としてやるのか、それとも使用済み核燃料搬入が第1で補修は第2になるのか。 [県](沈黙したままま、答えず)。 6.毎時10リットルの根拠は、自然蒸発量毎時100リットルの10分の1だというのなら、その10分の1の根拠は? [県]判断していない。10分の1についていいか悪いかは、国に評価を依頼しているところだ。 7.7月15日の検討会で、保安院の古西課長は原燃の見解を基本的に認める姿勢を表明している。それなのに国にゲタを預けるだけでよいのか。 [県]知事が東京に行って評価を要請し、保安院長が評価して県に説明することになっている。保安院の判断の結果を待っている。 8.計画外溶接がどこにどれだけあるかを原燃は把握できていないと認めた。いつどこで漏れるか分からないような、要するに欠陥プールだということだが、県としてこの問題をどう考えるか。 [県]それは国でどう判断するかだ。専門家にまず評価をお願いする(思わず、「また国か」が口をついて出た)。 9.前回は、国の評価を受け、安全性が確認されたとしてウラン試験に入ったのではないのか。 [県]結果的に漏えいが起こったことについては、知事は遺憾だと言った。 10.水漏れを認めるのは、原燃として後退ではないか。 [県]まだ毎時10リットルについて評価が来ていない。国の判断を待っている。まだ判断していない。 11.国の判断がどうとかいう前に、原燃が10リットルを公表したこと自体についてはどう思うか。 [県](答えず)。 12.前回、総点検を行ったのにまた漏れた。他の施設でも同様のことが起こるのではないかと県民は不安に思う。総点検の結果、安全協定を結んでウラン試験に入ったことからすれば、まずはウラン試験を中止すべきだということになる。これが県民の安心の問題だ。今回の要望書で要望しているのはこのことだ。 [県]プールはウラン試験に関係する設備ではないので、ウラン試験は問題ない。10リットルは国の判断だ。 13.今回の問題は安全協定と一切関係ないのか。原燃は水漏れしてもすぐには補修しないというように前と大きく方針を変えた。ウラン試験については、水漏れが今後起こらないということで安全協定を締結したのではなかったのか。 [県]10リットルの扱いが最終的にどうなるかは聞いていない。安全協定の問題は国の判断が出てから。知事が国に行って保安院の判断を求めるように組んでいる。それを見守りたい。 14.別の問題だが、水が漏れても検知溝に入らない場合があることを原燃は認めているが、そのような可能性について検討しているか。 [県]検討していない。 15.漏れた水は放射能を含んでいる。それについて報告を受けているか。 ★この問題提起については、思わぬ方向に議論が進んだ。この問題には真ん中にいた阿部氏が小さな声で答えたのだが、初めに、放出は管理された範囲内なので問題ないと答えた。そこで我々[市民]は、濃度などの報告はきているかと聞いた。[阿部氏]濃度は法律で決まっているし、安全協定でも見ているというような趣旨を述べた。[市民]再処理の海洋放出については濃度が法律で決まっているということはない。原発の場合は濃度規制があり、再処理でも排気筒放出については濃度規制があるが、再処理の海洋放出については、平成12年の科技庁告示によってはずされていると主張。もし存在するというのなら、どの法律に書かれているか明らかにしてもらいたいと要求。[阿部氏]珍しく大きめの声で「排水の濃度規制については法律ではっきりあります」と断言した。[市民]それならその法律が何か後で教えてほしいと再度要求。 [市民]次に、今回の放出水には放射能が入っており、すでに放出したと原燃は言っているが、そのことの報告は来ているかと質問。[阿部氏]放出については四半期に1回の報告がある。今回の放出は、前回もそうだが、想定外の放出ではないのだから、定期報告として報告されることになる。この趣旨を繰り返し述べた。 [市民]再度濃度規制の問題について、例えばウラン濃縮施設など他の施設では濃度規制が採用されているが、再処理施設のウラン試験に関する安全協定では濃度規制がはずされたのはなぜかと質問。 ところがこの段階で、後部横に居て携帯で連絡をとっていた鎌田氏が阿部氏に近寄り、耳打ちをする。その結果、2点の修正があった。(1)放射能放出に関する定期報告は四半期に1回ではなく毎月くること。(2)放射能濃度規制が法律にあると主張したのは誤りであって、法的濃度規制は存在しないこと。 [市民]「先ほど言っていたことは訂正するのですね」。[阿部氏]「ハイ訂正します」と言いながら、濃度規制より総量規制の方が厳しいなどとボソボソ言った。 16.いまの放出放射能の総量規制方式は甘い。濃度規制と両方でやるべきだ。 ─総量規制の方が厳しいなどということはない。当事者である青森県は独自のチェックをするべきだ。先進県である茨城県などの先例は調べたのか。濃度規制を入れたら安全でないというのならともかく、県民の安全・安心のための方向に行くよう濃度規制も含めるべきではないか。車でも瞬間スピード違反は許されない。なぜ、濃度規制をウラン試験の安全協定に含めなかったのか。その理由を後でもいいから説明してもらいたい。 [県](濃度規制が法律にないことで気落ちしたせいもあるのか、まったくしゃべる気をなくしたように、何も答えなかった)。 17.アメリカでは如何に微量でも放射線に害があるという結果が出ている。「人体に害のない量を放出」などという言い方はやめてほしい。そういう言い方はできなくなったと思うが、これについてどう思うか。 [県]昔から比例関係は認められている。専門家ではないので、専門家の検討を待ちたい。 18.10リットル問題については、原燃が保安規定を改定する予定になっている。あなた方のいうとおりなら、まずは国の判断が出て、それを県として検討してとなるが、それなら、あなた方の検討が終わるまで、原燃が保安規定の改定を申請することにストップをかけるべきではないか。せめてそれくらいはやっていただくようお願いしたい。 [県](沈黙)。 19.今回の問題について説明会は開くのか。 [県]国の見解待ちで、いまはまだ考えていない。 20.県として独自の調査委員会を開かないのか。福井県では事故調査委員会をもっているが。 [県]国の評価待ちで、いまはまだ考えていない。 21.地元自治体としてぜひ資料の公開をお願いしたい。例えばガラス固化溶融炉の問題について東海村で試験しているが、いっこうに公開されないので、そのような結果の資料を積極的に入手して公開していただきたい。 [県](何も答えず)。 [県](小山田氏)時間です。要望書のことは知事に報告します。 以上。 |