アクテイブ試験の安全協定締結に向けた動きが一挙に推し進められようとしている。青森県は2月16日に安全協定の素案を公表した。22日開催予定の県議会全員協議会で質疑が行われ、23日からは2月定例議会に入る。また、アクティブ試験に関して24日に県の原子力政策懇話会が開催され、25日から県内6箇所で県民を対象とした県主催の説明会が実施される。三村知事は、県議会終了後に安全協定受け容れの表明を行う可能性が強い(県議会は3月23日閉会)。 もし安全協定が締結されれば、アクティブ試験開始の条件がすべて整うことになる。大気と海洋への大量の放射能放出が許され、食品汚染と日常的な被ばくが現実のものとなる。 安全協定(素案)は、これら放射能放出を容認するものであるが、さらに、以下に述べるような重大な問題点がある。安全協定締結にストップをかけるため、これらの問題点を広く宣伝していこう。 1.放出放射能の濃度規制が存在しない 再処理施設に先行して安全協定が結ばれた3つの施設、すなわち、ウラン濃縮工場(1991年締結)、低レベル放射性廃棄物埋設センター(1992年締結)、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(1994年締結)においては、すべて濃度規制値(3ヶ月平均の濃度)が明記されていた(下図)。下図の管理目標値は、各核種について国の限度の1/10を採用している。 ところが今回示されたアクティブ試験の安全協定(素案)では、海洋への液体放出および大気への気体放出の両方について、事業者が守るべき管理目標値として挙げられているのは、1年間の総放出量だけである(下図)。海洋についても、大気についても、濃度による規制値はまったく規定されていない。 放射能を日常的に大量に放出する再処理工場については、総量による規制だけではなく濃度による規制が必要である。そうでなければ、その時々での大量放出を許してしまうことになる。しかし、2000年の科技庁告示第13号は、他の原子力施設の場合と違って、再処理工場について、海洋放出の濃度規制をしなくてもよいように規制を緩めた。そのため、六ヶ所再処理工場の事業変更許可申請書(2001年)では、海洋放出については1年間の総放出量のみを管理目標値としている。今回の安全協定(素案)の海洋放出部分は、これをそのまま持ってきているだけである。 一方、大気放出については告示第13号でも、濃度規制を行わなければならないことになっている。事業変更許可申請書でも同告示の濃度規制を守るとされている。それにもかかわらず、安全協定(素案)では、気体放出についても濃度規制が明記されていない。気体の方だけ濃度規制を取り入れれば、海洋放出の濃度規制を行わないことが際だってしまう。そのことを避けるためなのか、大気の方も海洋と横並びになるように濃度規制が省かれ、告示第13号よりもさらに緩いものとなってしまっているのである。 2.茨城県の安全協定よりも甘い 東海再処理工場について茨城県が結んでいる安全協定では、海洋と大気双方への放出放射能について、3ヶ月間の平均濃度、3ヶ月間放出量、年間放出量と、濃度と総量の両面において規制値が細かく決められている。さらにほぼ全量が放出されるクリプトンについては、「備考」ではあるが、1日当たりと1時間当たりの最大放出量までが規制対象とされている(下図)。 |
六ヶ所再処理工場は、東海再処理工場よりも規模が大きく、放出される放射能量もはるかに多い。通常であれば、茨城県と同等かそれ以上に、放出放射能の濃度について厳しく規制しなければならないはずである。それにもかかわらず、青森県の安全協定(素案)は総量規制だけの、逆に甘いものとなっているのである。 3.管理目標値の放出量は通常運転の場合の引き写し アクティブ試験では、来年3月までのほぼ1年間で273トン、来年4月からの約半年間で残りの157トンの使用済み燃料を再処理することになっている。つまり1年間の処理量は通常運転における処理量800トンの35%程度である。それにもかかわらず、今回の安全協定(素案)では、通常運転の場合の放出量をそのまま採用している(下図:事業変更許可申請書(2001)での放出量)。再処理量は35%なのに、安全協定(素案)での規制値は800トン再処理の場合のままなのだから、非常に甘い規制値である。 青森県には、アクティブ試験に即して細かく規制値を決め、厳しく監視しようとする姿勢がまったくない。原燃の出している数値をそのまま引き写しているだけである。その結果、事実上、通常運転の場合の安全協定を先取りして採用している形となり、アクティブ試験に則せば緩い規制値となってしまっているのである。 |