2005年12月27日

原子力委員会 委員長 近藤 駿介様
内閣総理大臣 小泉 純一郎様
経済産業大臣 二階 俊博様

要 望 書


原子力委員会自らの決定に従い、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験において、現実的なプルトニウム利用計画のない電力会社の使用済み核燃料が使われることのないようにして下さい。余剰プルトニウムを持たないとの国際公約を守るためにも、アクティブ試験を中止するよう指導してください。

 2003年8月5日付原子力委員会決定は、余剰プルトニウムをもたないとの国際公約を守るために、電気事業者に対し、プルトニウムを分離する前に、その利用場所や時期などを示した「プルトニウム利用計画」を公表することを要求している。東京電力と関西電力は、この決定に従えば、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験で分離されるプルトニウムについては、試験開始前にこれを行わなければならないとしている。

 東京電力の原子力発電所がある新潟県、福島県では、県などがプルサーマルを拒否し、事前了解を白紙撤回しており、東京電力のプルサーマル計画は、英仏で既に取り出したプルトニウム利用についても完全にストップしている。また、関西電力のプルサーマルについても、美浜3号機事故により、やはり既存の計画が止まっている。両電力会社は市民団体との交渉で、現時点では具体的な計画を出せる状況にはなく、アクティブ試験で分離されるプルトニウムの利用計画を示すことができない旨を表明している。つまりこれら二社の使用済み核燃料をアクティブ試験で使うことはできないということである。

 原子力委員会は、1991年原子力委員会核燃料専門部会報告書「我が国における核燃料リサイクルについて」において「必要な量以上のプルトニウムを持たないようにすることを原則とする」と発表し、1997年には、「余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持している」ことをIAEAに通知する形で国際的に宣言している。ところが、1990年代初頭に約2トンだった日本のプルトニウム在庫量は、1997年の国際宣言時には24.1トン、2004年末現在では43.1トンに達している(海外37.4トン、国内5.7トン)。

 今年10月に閣議決定された原子力政策大綱は「プルサーマルの実施規模の拡大に合わせて、六ヶ所MOX燃料加工工場の操業開始までは海外再処理により回収されるプルトニウムが利用されるが、その後は国内再処理工場で回収されるプルトニウムも利用される予定」と述べている。海外保管のプルトニウムの利用計画さえ立たない現状で、六ヶ所再処理工場でのプルトニウム分離をおこなってはならないことは明白である。

 日本のプルトニウム増産に対しては、国際的にも懸念が高く、今年5月5日にUCS(憂慮する科学者同盟/米国)が発表した声明において、ウイリアム・ペリー元国防長官やノーベル賞受賞者4名を含む27名の専門家らは、六ヶ所再処理工場稼働の延期を求めている。また5月24日には、世界各国の反核・軍縮団体の代表や専門家らが日本政府へ六ヶ所再処理工場の計画を中止するよう求めた。12月15日には、韓国の67の市民団体と学者126名が、六ヶ所再処理工場の計画撤回を求める署名を発表している。

 六ヶ所再処理工場で取り出されるプルトニウムの利用計画を出すことができない以上、原子力委員会決定により、アクティブ試験において東京電力と関西電力の使用済み核燃料を使うことはできない。他社分についても同様である。私たちは、貴職が、国際社会へ示した日本の公約を遵守するためにも、政府自身の決定に従い、アクティブ試験計画の中止を指導するよう求める。

要 望 事 項

一.原子力委員会自らの決定に従い、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験に、東京電力、関西電力をはじめ、現実的なプルトニウム利用計画のない電力会社の使用済み核燃料を使うことはできないことを確認してください。
一.余剰プルトニウムを持たないとの国際公約を遵守するためにもアクティブ試験を中止するよう指導してください。


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