電力の9月20日付耐震報告書の欺瞞的意図
柏崎刈羽の基礎版上応答スペクトルをそのまま
他の原発の基礎版上応答スペクトルとして適用し、安全を宣言する


 関電などは9月20日付で報告書をだし、柏崎刈羽原発の地震動を自分の原発に適用しても安全性は保たれると宣言した。実際に行ったことは、図3のように、柏崎刈羽原発の基礎版上の床応答スペクトルをそのまま自分の原発の基礎版上床応答スペクトルとして適用し、機器を仮想的に揺さぶってみたということである。両グラフの形は著しく異なっているが、これは地盤の違いを反映している。その違いに目をつぶる無意味な適用を、敢えて意図的に行っている。
 ここでは例として関電の原発で、それも資料が公開されている大飯3号によってそれを示そう。

■柏崎刈羽の解放基盤表面での応答スペクトルはほぼ普通の形をしている

 図1は柏崎刈羽原発の基準地震動S2の応答スペクトル(解放基盤表面)と、過去に1号機地下250m地点の岩盤で実際に観測された地震動(M3.8、震央距離18km)の応答スペクトルを示している。これらは、他の原発(例えば図2の大飯3号)の解放基盤表面での応答スペクトルとよく似通っており、横軸の周期0.1〜0.3秒にピークをもっている。

■柏崎刈羽原発地盤は軟らかく、基礎版上床応答スペクトルは長周期で卓越している
 図3の点線グラフは柏崎刈羽1号と4号の基礎版上の床応答スペクトルである。図1の岩盤上と違って、0.6〜0.7秒のより長周期側にピークをもっており、明らかに図1と違う傾向にある。これは、関電の説明では、柏崎刈羽の基礎版と地下の岩盤との間に200m以上にわたって軟岩が存在しているためだ。つまり図1の示す岩盤の短周期の揺れが、間の軟岩によってゆっくりに、長周期に変わったためである。この性質は柏崎刈羽原発に特有のものである。

■関電の基礎版上床応答スペクトルは岩盤上応答スペクトルに特性が似ている
 それに対して、関電の原発の基礎版は岩盤のすぐ上に直接くっついている(関電広報)。そのため、大飯3号の図2の解放基盤表面(岩盤)での応答スペクトルと図3実線の基礎版上の床応答スペクトルを比較すると、両方ともピークが短周期側にあり、よく似た形になっている。

■9月20日報告での評価の欺瞞
 関電が評価のために選択した機器の固有周期(図3の上の小さな矢印の位置)は短周期である。短周期で揺れが低いような柏崎刈羽の基礎版上の応答スペクトルをもってきて適用し、安全性を宣言しても何の意味ももたない。きわめて意図的で欺瞞的な評価方法である。

■本来行うべきこと
 (旧)耐震指針では、「原子炉施設の耐震設計に用いる地震動は、敷地の解放基盤表面における地震動に基づいて評価しなければならない」となっている。柏崎刈羽の基礎版上の地震動ではなく、岩盤で観測された最大加速度振幅993ガルの地震動(または推測される地震動)を大飯3号の解放基盤表面の地震動として適用し、それに対する大飯3号の基礎版上の応答スペクトルを求め、それを従来の大飯3号の基礎版上の応答スペクトル(図3実線)と比較すべきである。その新たなスペクトルは図3実線グラフを大きく引き上げた形、つまり実線グラフを大きく覆うような形になるはずだ。今度は、その新たなグラフと従来の図3実線グラフを比較することになる。その結果は、今回の結果とは比べものにならない厳しいものとなるに違いない。





(07/10/04UP)