今度は大飯2号で、2次系配管曲がり部の主要点検箇所で
点検リストには載っていたが、運転開始以来25年間1度も検査せず

保安院は、ただちに、全ての原発の検査実態を公開せよ
9月中の「中間報告」による事故の幕引きを許すな


保安院は全ての原発の検査実態を公開せよ
 今度は、大飯2号で、2次系配管の曲がり部の5箇所を、運転開始以来1度も検査していなかったことが明らかになりました。
 この5箇所は、点検リストに載っており、しかも「管理指針」で主要点検箇所と位置づけられていたものでした。破断した美浜3号では、点検リストから漏れており1度も検査を行っていませんでしたが、今回の大飯2号は、リストに載っていたのに、検査していなかったのです。
 関電は、検査をしなかったことについて、「他の部位から類推して安全」と判断し検査を行わなかったと言います。「他の原発から類推して安全」と同様の危険な論理です。関電の手抜き検査の実態が次々と報じられています。こんな人たちがまだ原発を運転しているのです。
 今回の大飯2号の問題が示しているのは、単にリストから漏れているかどうかではなく、実際に検査をやっているのかどうかを明らかにしなければならないということです。原子力安全・保安院は、美浜3号機の事故の後8月11日に、全ての電力会社に対し「報告徴収」の指示を出しました(8月11日付「報告徴収」)。その内容は、「肉厚管理が未実施のものについて」報告するようにというものです。すなわち、「検査リストからの漏れがないかをチェックせよ」というだけでした。そして、関電以外の電力会社は、リスト漏れはなかったと報告し、それでおしまいです。今回明らかになった大飯2号の問題−点検リストには載っていたが検査していなかった−に照らせば、保安院の指示がいかにずさんなものであったかが明らかです。
 他方、保安院は8月18日に追加の「報告徴収」を出し、美浜3号に限って、過去の全ての検査データを提出させました(8月18日付「報告徴収」)。保安院が今やるべきことは、関電の原発についてはもちろんのこと、全ての電力会社に対し、各原発ごとに、過去の全ての検査データを提出させ、それを公開することです。検査リストに載っている箇所もいつ検査を行ったのか、配管肉厚の測定値はどうだったのか等々、検査の実態を公開することです。

事故の幕引きを強める保安院
「事故は検査をやらなかったことにつきる」(事故調査委員会の宮委員)

 昨日(9月6日)福井市で、第4回目の事故調査委員会が行われました。なんと保安院は、「再発防止対策に関する主な検討項目」、「中間とりまとめに記載する事項について」等を報告し、「中間報告」の骨子を準備していました(第4回事故調査委員会資料)。9月中に「中間報告」を出し、早急に事故の幕引きをはかろうとしています。
 その内容は、基本的に2次系配管の「管理指針」は妥当とし、2次系検査に関する国の関与の「程度」をどうするかだけが関心です。そして、「管理指針」を「透明性のあるプロセスで検討、公開される民間指針へ格上げ」することでお茶を濁そうとしています。現在のずさんな管理の仕方と何ら大差はありません。リスト漏れは「人的過誤」と片づけ、だから「クロスチェックやデータの電子化などを検討」する等々です。
 事故を小さく小さく見せかけ、「2次系は国の検査の対象外」としてきた国の責任に関する反省など一言もありません。
 第4回事故調査委員会の最後に、宮委員は「事故は検査をやらなかったことにつきる」と発言しました。この発言が、全てを物語っています。ただ検査をやってなかっただけ。大騒ぎする必要はない。検査をちゃんとやるようにすればいい。それだけの話じゃないか、管理指針の見直し、国の関与など関係なしと言わんばかりです。これに対し委員長は「結局、関係者の能力の問題ですかね」と述べて会議を終了しました。こちらも国の責任などさらさら問題なしと言わんばかりです。これが、5名もの死者を出した事故の調査委員会の実態です。「検査をやらなかった」関電の安全無視、人命無視の体質を深く問題にすることもありません。事故の背景にある、検査を切り縮めて、定検を短縮しての経済性最優先の危険な運転、それを老朽炉で行う危険性についても一切問題にしません。事故の本質に迫る問題は全てすり抜け、関電の責任も国の責任も不問にしたまま、早期に事故の幕引きを行おうとしています。
 9月中の「中間報告」で事故の幕引きを許してはなりません。全ての原発の検査実態を明らかにさせていきましょう。国の責任を徹底して追及していきましょう。