大飯1号機 2次系配管の大幅減肉
最低限必要な配管厚みを下回った違法で危険な運転を継続
関電は、検査会社を変更した時、データの引き継ぎを忘れていた?!
火力発電だけではなかった、やはり原発でもずさんな管理
関電の「企業文化」は、モラルハザードの最前線


 大飯1号機で起きた2次系給水配管の減肉について、関西電力は7月16日にプレスリリース「検査状況について」を発表した。そこには驚くべきことが書かれている。配管仕様厚さの約半分にまで減肉していたにもかかわらず、放置したまま違法で危険な運転を続けていた。そして、このことを、今年の検査まで確認できなかったのは、検査会社を変更した時に、関電がデータ等の引き継ぎを指示していなかったためだという。
 今年の5・6月に発覚した火力発電所の検査データの大規模なねつ造事件について、関電は何と言っていたか。「原子力発電では厳しい管理・規制があるので、原発の品質保証は万全だ」、「原発ではトップマネジメントが生きている」。記者会見の場でも、福井県に対しても、何度もこう繰り返した。しかし、これらが全くのウソだったこと、やはり原発でもデタラメな安全管理、品質管理が行われていたことが明らかになった。
 大飯1号では、燃料取替用水タンクの変形が起き、部分的につぎはぎ修理を行ったが、その修理した箇所から水漏れが発生するというずさんな工事を行っていた。また大飯3号では、原子炉圧力容器上蓋の亀裂という日本初の事故も引き起こした。火力発電所の検査データのねつ造等々、まさに何でもありの危険な状態だ。関電の「企業文化」は、モラルハザードの最前線そのものだ。

<最低限必要な配管厚みを大幅に下回ったままでの違法で危険な運転>
 問題となっているのは、大飯1号機の2時系主給水配管の隔離弁下流配管の減肉である。4系統ある配管のうち3系統(A,B,C)の配管曲がり部で、大幅な減肉が、7月1日からの自主検査で見つかった。配管の仕様値厚さは21ミリ。「法律に基づき国に報告する対象となる厚さ」15.7ミリを下回る減肉が確認された。最も減肉の激しかったB系統主給水管曲がり部では、最小厚さが12.1ミリで、仕様の約半分にまで減肉していた。また、B系統配管の測定個所8カ所全てが技術基準の厚み15.7ミリを下回っていた。
 関電は、法律で報告対象となっている配管厚さ以下で運転を続けていた。まさに違法で危険な運転だ。さらに、何年前からこのような違法状態で運転を続けていたのか知る由もないという。「原発では厳しい管理」とはこのようなことを言うのか。

<米国サリー原発でのギロチン破断事故の教訓はいかされず>
 今回減肉が確認された2次系主給水配管部は、1986年に米国サリー原発2号機で起きた配管のギロチン破断事故と同様の箇所である。大口径配管が瞬時にギロチン破断を起こし、破断口から熱水の2次冷却水が激しく噴き出し、作業員4名が死亡、8名が大火傷を負う大事故だった。サリー原発2号機の事故は、運転開始からわずか13年で発生し、配管の減肉も激しかった。当時米国や日本でも、政府や電力会社は、配管が破断する前に冷却水の漏えいが起きるため、事前に漏えいをキャッチすれば配管破断事故は防げるとしていた。この「LBB思想」はサリー原発2号機のギロチン破断事故によって完全に否定された。
 このサリー原発の事故後、資源エネ庁は報告書を発表した。そこでは「国内の原発では定期的に肉厚測定が行われており、水質管理が行われている」ことを理由に徹底した調査等を要求しなかった。そして関電は、当該箇所の検査を「10年間で25%検査する」という「点検期間の長い配管に分類」していた。
 しかし関電は、今回の大飯1号機の減肉の原因を、配管曲がり部における水流の乱れによるエロージョン・コロージョン(壊食・腐食)によると発表している。これは、サリー原発2号機の原因と同じものだ。サリー原発2号機の事故の教訓は全く生かされいない。「10年間で25%検査」という手抜き検査が続けられてきた。

<「検査会社が変わった時にデータの引き継ぎを指示しなかった」−ずさんな安全管理>
 しかしなぜ大幅に減肉するまで放置されてきたのか。そこには、関電のずさんな安全管理の実態がある。関電の7月16日プレスリリースによれば、以下のとおりである。
 ・1989年(H元年)に2次系の検査会社が配管厚みを測定。著しい減肉ではないと判断し、点検期間の長い配管に分類
 ・1993年(H5年)に1次系の検査会社が配管厚みを測定。減肉の進展が認められたため「経年監視」とすることにした。
 ・1996年(H8年)に、2次系の検査会社が別会社に変更。
 ・この検査会社が変更になった時、関電が1次系の検査会社に対してデータの提供を依頼しなかったためデータが引き継がれなかった。
 ・そして今年の検査で初めて、大幅な減肉を確認した。

 この関電プレスリリースの内容が本当だとすると、責任は関電にある。93年に減肉が認められることから「経年監視」となったこと、そのデータ等を、2次系の新しい検査会社に引き継ぐ要請をしなかったのは関電自身である。「原発の検査は厳しくやっている」の実態がこれだ。
 さらに、なぜ「1次系の検査会社」が2次系配管の検査を行っていたのか、93年当時の「経年監視」の指示とは、何年毎に検査するようにとの指示なのか。また、プルサーマルを予定している高浜3・4号機の当該配管の減肉はどうなっているのか。関電はこれら全てについて明らかにすべきだ。

 大飯1号の配管減肉が示しているのは、関電の品質保証や安全管理のずさんさが、やはり「火力だけ」ではなかったということだ。こんな実態で、危険なプルサーマルを行うなどもってのほかだ。