2月14日に水力発電所での大規模な違法が明らかになったばかりだが、今度は16日に、美浜1号機のECCS配管の溶接工事で、国への申請を行わずに無許可で溶接を行っていたという違法行為が発覚した。それも、経産大臣が「不正を許さない取り組みをしているか」を確認すると発表したまさにその日だ(「電力会社のデータ改ざん問題に対する当省の対応について」)。 電気事業法では、溶接検査にあたっては、国に許可申請を出し、検査機関(原子力安全基盤機構)による確認と立ち会い検査を受けなければならない。関電は、許可申請すら出さずに昨年12月19日に違法溶接を行っていた。明らかに電気事業法違反という重大行為だ。 今回の違法が発覚したのは、定検の元請け会社の指摘によるものである。それによって初めて関電は気づいたという。そうであれば、ECCSという最重要の部位に関しても関電自ら何も管理していなかったということになる。 関電は、核燃料を抜き取り、溶接部分を取り外し、改めて国の立ち会いの下で溶接をやり直すと早々と発表している。違法行為の原因も明らかにならないうちから、溶接のやり直しを表明している(2月16日関電プレス)。本末転倒だ。 美浜1号機では、昨年11月から続いている定検で、多くの損傷が見つかっている(2月15日関電プレス)。湿分分離加熱器の細管1本が破断し、噴出した蒸気で直近の別の配管に穴があいていた。他に40本の細管に10%の減肉が見つかり施栓している。また1月21日には原子炉容器上蓋に突き出ている温度計から冷却材がにじみ出した。2月1日の耐圧漏えい試験では加圧器逃がし弁からの漏えいもあった。その上さらに、今回発覚したのがECCSの違法溶接工事である。 定検の最終段階で明らかになったこれらの損傷は、老朽炉美浜1号機の満身創痍の状態を示している。全身ボロボロだ。もう運転には耐えられないとの叫びである。老朽炉美浜1号をこれ以上酷使してはいけない。閉鎖すべきだ。 16日に経産大臣は、東電をはじめ次から次に出てくる不正を前に、「検査の強化」を保安院に指示せざるを得なくなった。「事業者が、現時点で、不正を許さない取り組みをしているかを確認する」という。「現時点で」と言うのは、「過去の」不正には目をつむるということでもある、また「強化検査項目」として「(1)トップマネジメントによる自律的な改善の仕組みの確立状況、(2)安全文化の醸成についての取り組み状況」を確認するとなっている。関電のように社長直筆の「安全宣言」を出しても事故や不正はなくならない。「安全文化の醸成」ではなく、「違法・不正・隠ぺい体質の醸成」の根源を明らかにしなければならない。そして何より、保安院の安全規制が全く機能していないという現実を直視すべきである。 関電の原子力事業本部は、今回の違法溶接工事について、「法令順守や品質保証など再発防止対策の基本の基本ができておらず、深く反省している。早急に調査し原因を究明する」と述べている。何度「基本の基本ができていない」と話せば済むのだろうか。 5名もの死者を出した美浜3号機の運転再開にあたって、関電は法令順守や品質保証活動の強化を約束していた。今回の美浜1号の違法工事は、関電のいう再発防止策が一切守られていないことをはっきりと示している。関電の安全軽視の体質がなんら変わっていないことを示している。上記のザルのような経産大臣の指示に照らしても、関電の場合は「現時点で、不正を許さない取り組み」がなされていないことが明らかである。福井県も「美浜3号機事故の再発防止策が機能しているのか疑問を生じる」と語っている。 関電は、美浜3号機の運転を停止し、閉鎖すべきである。 |