関西電力の原子力発電所では |
使用済燃料プールからの微量の漏えいと、 |
それによる環境の放射能汚染を防ぐことができるのですか |
質問書と回答(2010年7月28日) |
関西電力(株)社長 八木 誠 様 |
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2010年7月6日 |
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貴社は6月30日、多くの人々の反対の声を踏みにじり、高浜3・4号機プルサーマル用のMOX燃料を高浜原発に搬入しました。10月からの定期検査で高浜3号機にMOX燃料を装荷し、12月にはプルサーマルを開始しようとしています。 しかし、プルサーマルによって生み出される使用済MOX燃料の「処分の方法」は決まっておらず、高浜原発の使用済燃料プール(ピット)に超長期にわたって保管され続けます。他方、米国では使用済燃料プールからの漏えい事故が起き、トリチウム等による環境の汚染が大きな問題となっています。使用済MOX燃料が、原発プールで超長期間保管される間に、同様の汚染事故が高浜で起き、若狭の自然が汚染されるのではないかという心配が、地元はもとより、関西でも高まっています。 前回の5月27日の交渉とその後の電話回答で、貴社の使用済燃料プールの管理の基本方針について確認しましたが、改めて、使用済燃料プールの安全管理について質問します。 1.プールの安全管理の基本について 5月27日の交渉とその後の電話回答では、貴社の使用済燃料プールの安全管理の基本は下記のようなものでした。間違いありませんか。また、それ以外にあれば答えてください。
2.検知溝の数などについて (1)高浜3・4号機のプールには、検知溝はどのように何本ついていますか。検知溝や検知装置で漏えいを確認する方法について、具体的に図などを示して説明してください。 (答)高浜3、4号機のプールには約1.5メートルから約4メートルの間隔で漏えい検知溝が設置されており、ライニング板の溶接線の裏側にアングル材などを組み合わせ、漏えい液が流れる空間を設けた鋼製検知溝に漏えい検知配管を接続した構造である。本数につきましては、プールの大きさが数十メートルあるのでご想像願いたい。また、全プラントで漏えい検知溝は床面、壁面両方に設置されています。 (2)検知溝はライナー溶接部には全てついているのですか。 (答)はい、その通りで全部ついています。 (3)通常、検知溝から収集される漏えい水の量はどれくらいですか。 (答)これまで燃料ピット水の漏えいは発生していません。なお、高浜3、4号機の現時点での検知設備の水量はゼロです。 (4)高浜3・4号機の使用済燃料プールの大きさはどれくらいですか。その場合、プール水の自然蒸発量はどれくらいですか。プール水の温度はおよそ何℃ですか。 (答)Aピットが縦約14メーター×横が約9メートル×深さが約12メートルです。Bピットの方が縦約8メートル×横が約9メートルの深さが約12メートルです。燃料ピットの自然蒸発量ですけれども、ピットに保有しています燃料の発熱量にもよりますけれども、現時点では1時間あたり5リットル程度です。水温ですが、現時点での水温は約30度です。 (5)巡回を増やす目安として、漏えい量600cc/h(14.4リットル/日)としていますが、その根拠は何ですか。 (答)監視強化を行う目安として当社発電所における過去の経験、温度変化に伴う結露水から約600cc/h程度として定めたものでございます。 3.管理基準値14.4リットル/日より少ない漏えいの場合 米国のインディアン・ポイント2号では、2005年9月にプール水の漏えいが発見されています。この場合、漏えいは約9.8リットル/日でした。貴社の管理基準である14.4リットル/日よりも微量の漏えいです。貴社は、14.4リットル/日より少ない漏えいの場合は、放置しておくのですか。 (答)漏えい検知設備は燃料ピット水の漏えいが微少である段階で検知することを目的としているものです。600cc/h程度とは1秒間に1滴から2滴程度に相当するもので、その程度の出水が認められた場合に監視強化を図る目安として定めているものです。ですので、600cc/hに達するまで何もしないということではなく、相当の出水が継続する状況に応じた対応を行っていくことにしています。 (やりとりの中で、具体的な対応策がないことを確認) 4.管理基準値14.4リットル/日を超えた漏えいの場合 漏えい量が14.4リットル/日を超えた場合は、どのような措置を取るのですか。 (答)巡回点検時に漏えい検知設備に出水が600cc/h程度以上確認された場合は、検知水をサンプリングし分析を行います。出水が継続し、かつ検知水の分析の結果、燃料ピットからの漏えいの疑いがありと判断した際には監視強化を行います。 (これも、「監視強化」の具体策を示すことはできず) 5.検知溝が詰まっていないかの検査 米国のセーラム原発1号の場合は、検知溝がホウ酸等で詰まってしまい、漏えい検知装置にプール水は流れず、漏えい水はコンクリートとステンレスの内張の間に溜まり、やがてコンクリートを通じて地下の土壌や地下水を汚染しました。漏えい後の調査で、検知溝にフアイバースコープを入れてはじめて、検知溝が詰まっていることが明らかになりました。 貴社は、検知溝がホウ酸等で詰まっていないかの検査は行っていますか。 (答)米国での事例はプラント建設当初からドレンラインからの漏えいが発生し、検知装置内にホウ酸析出物などが蓄積していたというものであると聞いているが、当社ではプラント運転開始以降、巡回パトロール時に目視で漏えい確認しており問題ない。 (検知溝が詰まっていないかの検査は行っていないと確認) 6.漏えいが起きていないことの確認について 現在、貴社の原発の使用済燃料プールからの微量の漏えいが起きていないことを確認する方法はあるのですか。セーラム原発と同様の漏れ方をした場合でも、漏えいを検知する方法はありますか。 (答)今の回答[5]と同じです。 7.環境への漏えいについて これまで貴社の原発で使用済燃料プールから、また地下に埋設されている配管から、地下の土壌に放射能を含む水の漏えいはありましたか。あった場合は、その状況について説明してください。 (答)過去に漏えいは発生していません。 8.プールの老朽化対策について 前回の交渉では、プールについても「高経年化対策をとっているはず」との回答でした。 (1)例えば、大飯1号の「高経年化技術評価書」(2008年)では、プールについて、2007年に美浜1号機のキャビティで起きた漏えいを引き合いに出しながら、プールはキャビティと異なり水を抜かないため、ドライウェット現象による海塩の濃縮による腐食は起きないと結論づけ、高経年化対策の対象外としています。 しかし、2000年3月に伊方3号機では、塩分による腐食がプールのライナー溶接部でおき、ライナーに貫通穴が開いていることが偶然に発見されています。伊方3号の教訓を踏まえれば、プールのライナーでも腐食が起きることを念頭に対策を立てるべきではないのですか。 (答)四国電力殿の伊方3号機の事象は建設時のプール施行の際、塩分を含んだ雨水が浸入したことが要因となって発生したと聞いている。当社においても同様のステンレスライニング工事を実施しているがすでに塩分等の付着物管理を行っており対策は不要と判断した。 (2)プールのコンクリートは、「高経年化技術評価」の対象になっていますか。 (答)技術評価の対象となっています。詳細に説明しますと、コンクリート構造物の高経年化技術評価にあたっては、安全上重要な構造物および高温高圧の環境下にある機器を支持する構造物を対象の構造物としていまして、プールのコンクリートはですね、燃料を安全に取り扱う機能を支持する構造物ということで技術評価の対象にしています。 (「評価の対象」にはなっているが、コンクリートの劣化については、他の機器を代表部位として評価している。そのため、プールのコンクリートの具体的評価は行っていないことを確認) (3)プールについて、具体的に「高経年化対策」を取っているものがあれば示してください。 (答)使用済燃料ピットは強度部材である鉄筋コンクリートとそれを囲うステンレスライニングで構成されている。コンクリートはこれまでの高経年化プラント7基すべてにおいてコアボーリングにより設計基準強度を上回っていることを確認しています。ステンレスライニングは想定される運転条件下において十分な耐腐食性を有していることを確認しています。万一ステンレスライニングの腐食等により漏えいが発生したとしてもピット水は漏えい検知装置に集められて、管理された状態で廃棄物処理装置へ導かれるため安全上の問題はございません。 (本当にプールのコンクリートからコアボーリングをしたのかは再度確認することとなった) |
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2010年7月6日 グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス 京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952 美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之 大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581 |
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(10/07/29UP) |