関西電力の原子力発電所では
使用済燃料プールからの微量の漏えいと、
それによる環境の放射能汚染を防ぐことができるのですか
質  問  書


関西電力(株)社長 八木 誠 様
2010年7月6日

 貴社は6月30日、多くの人々の反対の声を踏みにじり、高浜3・4号機プルサーマル用のMOX燃料を高浜原発に搬入しました。10月からの定期検査で高浜3号機にMOX燃料を装荷し、12月にはプルサーマルを開始しようとしています。
 しかし、プルサーマルによって生み出される使用済MOX燃料の「処分の方法」は決まっておらず、高浜原発の使用済燃料プール(ピット)に超長期にわたって保管され続けます。他方、米国では使用済燃料プールからの漏えい事故が起き、トリチウム等による環境の汚染が大きな問題となっています。使用済MOX燃料が、原発プールで超長期間保管される間に、同様の汚染事故が高浜で起き、若狭の自然が汚染されるのではないかという心配が、地元はもとより、関西でも高まっています。
 前回の5月27日の交渉とその後の電話回答で、貴社の使用済燃料プールの管理の基本方針について確認しましたが、改めて、使用済燃料プールの安全管理について質問します。

1.プールの安全管理の基本について
 5月27日の交渉とその後の電話回答では、貴社の使用済燃料プールの安全管理の基本は下記のようなものでした。間違いありませんか。また、それ以外にあれば答えてください。
・プール管理の基本は、プール水の水位が保たれていること。
・経年的な管理はしていない。
・漏えい検知の仕組みは、プールのステンレス内張とコンクリートの間にある漏えい検知溝から検知装置に水が集まってくるようになっている。
・通常は1日に1回検知装置を巡回で見ている。漏えい量が600cc/h(14.4リットル/日)に達すれば、巡回を1日3回に増やす。



2.検知溝の数などについて
(1)高浜3・4号機のプールには、検知溝はどのように何本ついていますか。検知溝や検知装置で漏えいを確認する方法について、具体的に図などを示して説明してください。

(2)検知溝はライナー溶接部には全てついているのですか。

(3)通常、検知溝から収集される漏えい水の量はどれくらいですか。

(4)高浜3・4号機の使用済燃料プールの大きさはどれくらいですか。その場合、プール水の自然蒸発量はどれくらいですか。プール水の温度はおよそ何℃ですか。

(5)巡回を増やす目安として、漏えい量600cc/h(14.4リットル/日)としていますが、その根拠は何ですか。

3.管理基準値14.4リットル/日より少ない漏えいの場合
 米国のインディアン・ポイント2号では、2005年9月にプール水の漏えいが発見されています。この場合、漏えいは約9.8リットル/日でした。貴社の管理基準である14.4リットル/日よりも微量の漏えいです。貴社は、14.4リットル/日より少ない漏えいの場合は、放置しておくのですか。

4.管理基準値14.4リットル/日を超えた漏えいの場合
 漏えい量が14.4リットル/日を超えた場合は、どのような措置を取るのですか。

5.検知溝が詰まっていないかの検査
 米国のセーラム原発1号の場合は、検知溝がホウ酸等で詰まってしまい、漏えい検知装置にプール水は流れず、漏えい水はコンクリートとステンレスの内張の間に溜まり、やがてコンクリートを通じて地下の土壌や地下水を汚染しました。漏えい後の調査で、検知溝にフアイバースコープを入れてはじめて、検知溝が詰まっていることが明らかになりました。
 貴社は、検知溝がホウ酸等で詰まっていないかの検査は行っていますか。

6.漏えいが起きていないことの確認について
 現在、貴社の原発の使用済燃料プールからの微量の漏えいが起きていないことを確認する方法はあるのですか。セーラム原発と同様の漏れ方をした場合でも、漏えいを検知する方法はありますか。

7.環境への漏えいについて
 これまで貴社の原発で使用済燃料プールから、また地下に埋設されている配管から、地下の土壌に放射能を含む水の漏えいはありましたか。あった場合は、その状況について説明してください。

8.プールの老朽化対策について
 前回の交渉では、プールについても「高経年化対策をとっているはず」との回答でした。
(1)例えば、大飯1号の「高経年化技術評価書」(2008年)では、プールについて、2007年に美浜1号機のキャビティで起きた漏えいを引き合いに出しながら、プールはキャビティと異なり水を抜かないため、ドライウェット現象による海塩の濃縮による腐食は起きないと結論づけ、高経年化対策の対象外としています。
 しかし、2000年3月に伊方3号機では、塩分による腐食がプールのライナー溶接部でおき、ライナーに貫通穴が開いていることが偶然に発見されています。伊方3号の教訓を踏まえれば、プールのライナーでも腐食が起きることを念頭に対策を立てるべきではないのですか。

(2)プールのコンクリートは、「高経年化技術評価」の対象になっていますか。

(3)プールについて、具体的に「高経年化対策」を取っているものがあれば示してください。



2010年7月6日

  グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
    京都市左京区田中関田町22-75-103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

  美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
    大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581


(10/07/27UP)