−1月14日 関電交渉報告 欧州陸上輸送容器に異物混入等−
輸送容器に異物が混入していても、「メロックスの安全管理に問題なし」と強弁する関電
「木片が見つかったのは品質保証システムがしっかり回っている証拠」
異物混入の原因が明らかになるまで海上輸送の手続きを進めないよう強く要求
MOX燃料棒内圧の設計基準値を19.0MPaとしたのは「安全側に立った」から

  

 1月14日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本店で、午後6時から約2時間。関電からは広報3名、市民は約20名が参加した。事前に提出していた「MOX燃料の陸上輸送容器に混入していた異物(木片)等に関する質問書」(12月22日付)を基に交渉を進めた。
 未だ異物混入の原因が明らかになっていない。それにもかかわらず、関電は「メロックス社の品質保証に問題はない」とし、「木片が見つかったのは品質保証システムがしっかり回っている証拠」とまで強弁した。
また、外観確認で集合体の健全性に問題はなかったので海上輸送に影響はないとした。このような安全性無視、スケジュール優先の姿勢に対し、少なくともメロックス社による調査報告が出て、原因と対策が取られるまで海上輸送の手続きを進めないよう強く申し入れた。
 さらに、関電がMOX燃料棒内圧の設計基準値について、設置変更許可申請書では「約19〜約20MPa」としていたものを、輸入燃料体検査申請書では19.0MPaとしていることについて、最初は「A型・B型の違い」としていたが、最終的には「安全側に立って19とした」と認めた。
 以下、主要な点について報告する。

1.事実関係については「核物質防護上答えられない」

 関電は、昨年12月21日に開かれた福井県原子力安全専門委員会で、フランス国内における高浜MOX燃料の陸上輸送の際、輸送容器1基の内部に26個もの木片が混入していたと口頭で報告した。新聞報道によれば、12体のMOX燃料をメロックス工場からラ・アーグにある海上輸送のための詰め替え施設に向けた陸上輸送をおこなっていたところ、11月19日に混入が明らかになったとされている。メロックス工場から搬出される際には異物がないことを確認していたが、到着後、収納されている集合体を取り出したところ木片が見つかったとされている。
 質問書では、陸上輸送を実施したのはいつか、何体の輸送容器を使用し輸送を行ったのか、異物が見つかったのは何番目の輸送だったのか、どの部分で木片が見つかったのか、12体の陸上輸送は完了しているのか等々、事実関係を訊いている。
 これに対して関電は、「核物質防護上答えられない」と繰り返した。陸上輸送容器1基の集合体収容体数は1体であり、「何基使用したかは何体輸送したかと同じ」と答え、12基の輸送容器を使用したことを暗に認めた。木片が見つかったのは集合体を抜き取った後、輸送容器の底部(円筒の下端)であったこと。この2点だけは答えたが、それ以外の事実関係については一切答えられないという回答に終始した。また、12体のMOX燃料集合体を「順次、陸上輸送を行っているところ」と答え、欧州内陸上輸送がまだ終了していないことを匂わせた。「異物混入が発覚しても輸送を続けたということか」と質しても「言えない」と言い続けた。
 そこで「核物質防護上というがその根拠は何か」と追及すると、フランスの法的規制によるものだとした。その法令の具体的名前を聞くと「放射性物質の保護と管理に関する法律および放射性物質の保護・管理の分野における国防機密に関する通達」だと答えた。この法令によれば、輸送後であっても情報を一切公表できないことになっているという。法令のフランス語での名称と該当部分を教えて欲しいと要求したが、すぐには答えられないということで後日回答になった。
 また、質問書では混入していた26個の木片について写真を公表するよう求めているが、関電は「メロックス社の了解が必要となるため現時点では公表できない」と拒んだ。「メロックスに公表しても良いかどうか確認を求めたのか」と聞くと、問い合わせたかどうかも分からないと無責任な回答であった。写真公表の許可を求めたかどうかについても後日回答となった。

2.「メロックス社の調査結果がまとまり次第、公表する」

 11月19日に異物が発見されているにもかかわらず、福井県原子力安全専門委員会に口頭報告したのは1月以上もたった12月21日である。関電のウェブサイトでは今に至るまで異物混入問題は一切公表されていない。
 質問書では、なぜすぐに公表しなかったのか、ウェブサイトに掲載しないのはなぜか質している。これに対して関電は「地域の皆様にご安心頂くとの観点から、メロックス社の調査結果がまとまった後、しかるべきタイミングで公表したい」と答えた。いずれかの時点で、調査結果を明らかにすることは確認したが、なぜすぐにでも事実関係を明らかにしないのかについては、とにかく「まとまったら公表する」と逃げるだけだった。また、原子力安全・保安院と福井県に、異物混入を報告したのはいつかという質問については、「12月8日に情報提供している」とのことであった。また、この時の情報提供は文書でなされたのかどうか回答できなかったので後日回答となった。

3.「木片が見つかったのはメロックス社の品質保証システムがしっかり回っている証拠」

 搬出時には異物はなく、輸送中は密閉された状態で、輸送後に異物が見つかっている。故意に混入させなければ常識的には起こりえないはずの事態である。仮に人為的なものでないとすれば、搬出時の検査がいい加減だったということになる。いずれにしても、メロックス社と関電の安全管理がずさんであり、品質保証システムが機能していないということである。
 質問書では、メロックス社と関電の安全管理に問題があるのではないかと質している。これに対して関電は、質問には直接答えず「メロックス社は適切な品質保証システムに従い原因調査等を実施しており、当社の進捗状況について適宜情報を得ている」と回答した。
 「異物が混入していたこと自体、品質保証や安全管理ができていなかったということを示しているのではないのか」と追及したが、関電はメロックス社の品質保証に問題はないという姿勢を頑なに取り続けた。参加者から、「出荷時に入っていなかった異物が、受け取ったら入っていたなどとは、普通の企業の品質管理であれば許されないことだ」と批判の声があがった。重ねて追及すると関電は、「木片が見つかったのは、メロックス社の品質保証システムがしっかり回っている証拠」と言い、さらには「品質保証システムが動いているからメロックス社から発見の連絡があったのだ」とまで強弁した。これに関して多くの参加者から「異物混入があってもメロックスの安全管理や品質保証に問題はないと言い続けるのか」「関電の品質保証とはその程度のレベルということか」と批判の声がわっとばかりにあがった。

4.少なくともメロックスの原因調査が出るまで海上輸送の手続きを進めるな

 質問書では、関電が「MOX燃料の健全性に問題はない」「海上輸送など今後の工程に大きな影響はない」としているとの報道について、どのようにして健全性を確認したのか、また異物混入の原因が分からないにもかかわらず、なぜ今後の工程に影響はないと言えるのか訊いている。これについて関電は、「ホルダーを取り外し外観確認を行って異常のないことを確認した」「異常はないので今後の工程に影響はない」と回答した。また、海上輸送について「輸送時期は関係者間で調整中であり現段階では決まっていない」とした。
 これに対して「なぜ異物混入がおこったのか原因も分かっていないのに外観検査だけで健全性は確認できないはずだ」と追及した。さらに、「メロックスによる調査報告が出て、原因と対策が明確になるまで、海上輸送は当然行わないということになっているのか」確認を求めた。しかし関電は、「海洋輸送の時期は調整中で決まっていない」と言を左右に原因調査と輸送の関係を答えようとせず、はぐらかし続けた。最終的には「調査報告と海上輸送の関係は分からない」と答えた。調査報告が出てから海上輸送の手順に入るというスケジュールになっていないのかどうか、これも後日回答となった。
 しかし、「今後の工程に大きな影響はない」として、海上輸送は着々と進めるというのが関電の基本姿勢であることは明らかである。関電のこのような安全性軽視、スケジュールありきの姿勢は許されない。少なくとも異物混入の原因が明らかになるまで海上輸送の手続きを進めないよう、強く要求した。

5.燃料棒に異物が混入していないかどうかは確認していない

 密封された輸送容器から異物が見つかった以上、人為的な原因も否定できない。1999年のBNFL事件では、製造したMOX燃料棒にネジが混入しており、関電はそのX線写真を公開している。輸送容器に異物が混入していたのだから、安全性を最優先に考えれば、今回メロックスが製造した燃料棒にも異物が混入しているのではないかという疑義が当然生じる。質問書では、燃料棒に異物が混入していないことを、どうやって確認しているのか訊いている。
 これに対して関電は、「集合体の外観確認を行った」と答えた。質問は燃料棒への異物混入の確認方法である。関電は質問をはぐらかし、訊かれたことにまったく答えていない。そこで、燃料棒の確認方法について繰り返し明らかにするように求めた。関電は今回の木片について、「複数の人数で作業をおこなっており人為的な混入ではないはず」と強調し、燃料棒への混入については「社員教育や監視カメラ等を設置してそのようなことが起こらないようにしている」等々と説明した。しかし、具体的な検査方法については、被覆管にペレットを封入した後、燃料棒上下端の溶接部についてX線で見ているが、燃料棒全体はX線による検査は行っていないという。BNFLでのネジ混入という経験がありながら、なぜX線で検査をしなかったのか訊いたが答えられない。X線検査をしていない理由について後日回答となった。
 BNFLとは違って、メロックス社ではしっかり教育、管理しているので混入はありえないはずというだけである。検査によって燃料棒への異物混入を確認してはいないのである。

6.輸入燃料体検査申請書で燃料棒内圧の設計基準値を19.0MPaとしたのは「安全側に立った」から

 質問書は異物混入問題の他、高浜MOX燃料棒の内圧評価についてもいくつか質問している。MOX燃料棒の内圧評価について、関電は設置変更許可申請書(1998年11月24日)においてギャップ再開を起こさないための設計基準値を「約19〜約20MPa」と幅を持たせて設定している。一方、輸入燃料体検査申請書(2008年11月10日)では、同じ設計基準値を19.0MPaとしている。質問書は、なぜより厳しくなる19.0MPaを採用したのか訊いている。
 これについて関電は、最初「今回製造した燃料はB型MOXだったから」と、A型・B型の差異に起因するものであるかのような回答を行った。しかし、輸入燃料体検査申請書に「最も厳しくなるものとして」という記述があることを指摘すると、「手元に申請書がなくて」云々としていたが、最終的には「安全側に立って19とした」と認めた。
 また、メロックス社製MOX燃料に対する関電の自主検査について、7項目各々の内容を説明するよう事前に要求していた。これに対して関電から、例えば「蒸発性不純物」の検査は「気体となる不純物の総量」を確認するものであること等、各項目について回答を得た。


(10/01/18UP)