11月6日 関電交渉報告 |
「不純物」の種類や上限値について「具体的な元素、 |
基準値は技術基準では示されていない」(関電) |
MOX燃料について、国の具体的審査基準がないことを関電は認めた |
11月6日、グリーン・アクションと共同で関西電力との交渉を行った。関電本店の近くにある住友中之島ビルの地下1階で、午後6時から約2時間の交渉だった。関電からは広報3名、市民は約30名が参加した。事前に提出していた質問書「不合格になったペレットの方がかえって安全という国の見解に関する質問書」(10月20日付)と「MOX燃料に関する、法的根拠を持った国の具体的判断基準等に関する追加質問書」(11月2日付)を基に進めた。 関電は、国が行うMOX燃料の輸入燃料体検査において、検査すべき「不純物」の種類や上限値について「具体的な元素、基準値は技術基準では示されていない」と法的裏付けをもった具体的な審査基準は存在しないことを認めた。 また、関電は「不純物が被覆管の腐食などに影響を与える」とし、自主検査で行っている「全不純物総量」検査も、安全性に関係するものであることを事実上認めた。 以下、主要な点について報告する。 1.「全不純物総量」検査が被覆管の腐食など、安全性に関係することを事実上認めた。 10月7日に参議院議員会館で行われた保安院交渉で、保安院は関電が不合格とした自主検査の項目は「全不純物総量」であるとの前提で説明を行った。その中で保安院は、自主検査は燃料の効率的燃焼のために行われているとし、その上で「全不純物総量」で規制を行うと不純物が少なくなり過ぎるため、燃料の中心温度が上がりすぎるので、かえって安全性が損なわれるのだという趣旨の説明を行った(国の検査項目と自主検査項目などについては[資料1]参照)。 10月20日付の質問書(以下、質問書)では、この時の保安院の説明を踏まえ、自主検査は燃料の効率的燃焼のために行っているのかと聞いている。これに対して関電は、安全性のためかどうかは答えず「自主検査の目的はより高い品質の燃料を調達するため」と答えた。「自主検査は安全性のために行っているのではないのですか」と繰り返し質したが、関電は「より高い品質を確保するため」と言い続けた。自主検査=安全性のためとは直接に認めようとせず、「では何のために品質を向上させるのですか。安全性のためではないのですか」と追及すると黙ってしまった。「安全性のために自主検査を行ったと、なぜ言えないのですか」「安全性のためでないのならなぜ廃棄したのですか」と追及しても、同じ答を繰り返した。 また、質問書では「全不純物総量」が目標値の範囲を超えた方が(不純物が多い方が)安全側に働くのか聞いている。これに対しても関電は直接答えず、「安全性が増すとも、そうでないとも一概には言えない」とし、「目標値を超えたものは使用しない」という回答に終始した。国の発言と回答が相違することを回避したいという思惑が感じられた。 11月2日付の追加質問書(以下、追加質問書)では、「全不純物総量」を自主検査項目に入れたのはなぜか、その理由を聞いている。これについて関電は、「不純物総量が燃料に与える影響という点ではウラン燃料もMOX燃料も同等であり、ウラン燃料などの今までの経験から自主検査項目とした」と答えた。そこで、「全不純物総量が燃料に与える影響」とは具体的に何を指しているのか追及した。関電は「被覆管の腐食等」だと答えた。「被覆管の腐食とは安全性に関係することだろう」「そうすれば、自主検査の『全不純物総量』は安全性を確認するためにやっているのだろう」と重ねて聞いても、直接には認めようとしなかった。しかし、事実上、「全不純物総量」の自主検査が安全性に関係することを認めた。 佐賀県議会で配布された九電資料によると、九電の自主検査項目では「不純物」となっており、「全不純物総量」の検査を行っているかは不明だ。 2.ASTMと過去のウラン燃料の経験から不純物として40種類の元素を選定。また自主検査項目に「全不純物総量」を入れたのは、「ウラン燃料を参考にした」。 関電が国に提出した輸入燃料体検査申請では、「不純物」検査として40種類の元素が並べられている[資料1]。質問書では、関電の出した40種類の元素は何を根拠に選定したのかを聞いている。これに対して関電は、米国材料試験協会(ASTM)の基準およびウラン燃料で定めた元素を考慮して選定したと答えた。回答にある「ウラン燃料で定めた元素」とは何なのか、関電の自社基準であるのならば、その基準は何に基づいて決められたのか。またASTMではMOX燃料の不純物について12〜14種類の元素を挙げ、ウラン燃料については23種類の元素を挙げている[資料2]。ASTMのウラン燃料の規格も参考にしているのか。これらについて聞いたが、答えられず後日回答になった。 また、ASTMでは各元素の上限値とは別に、総量でより厳しい上限値を設定する考えが示されている[資料2]。質問書では、自主検査項目に「全不純物総量」の目標値を設定したのは、ASTMに基づいているのか聞いている。関電は、「ウラン燃料で定めている目標値を参考に設定した」と答えただけだった。 関電の輸入燃料体検査申請書の添付一「性能に関する説明書」[資料3]の中では、不純物として40種類の元素の各々についての上限値とともに、「不純物の合計」の上限値も記載(白抜き)されている。一方、申請書の添付五「検査の計画に関する資料」[資料4]では、各元素毎のみで「不純物の合計」は検査対象になっていない。なぜ「全不純物総量」の検査だけを切り離して、自主検査に回したのか、その理由を質したが答えられなかったため、これも後日回答となった。(その他、ウラン燃料の場合も全不純物総量は自主検査となっているのかも後日回答することになっている) 3.国の輸入燃料体検査における「不純物」について、「具体的な元素、基準値は技術基準では示されていない」。法的に裏づけられた国の具体的審査基準がないことを認めた。 関電の出した輸入燃料体検査申請書の不純物の数は40種類だが、これに対して九電は28種類、中部電力に至っては4種類とばらばらになっている[資料1]。国の検査であるにもかかわらず、このような不統一がある。不純物については、国の技術基準「発電用核燃料物質に関する技術基準を定める省令」[資料5]によって定められている。同省令の第4条がウラン燃料についてであり、同条では4つの元素について具体的な濃度の上限値を定めている。一方、MOX燃料は第5条であるが、同条第1項は「各元素の含有量の全重量に対する百分率の偏差は、著しく大きくないこと」としているだけで、具体的な規制値を決めていない。つまり法的な根拠を持つ基準値が存在しないため、電力会社はウラン燃料の経験やASTM等を参考に、検査する元素とその濃度上限値を独自に決め申請しているのだ。10月28日に近藤正道国会議員の事務所で行われた保安院へのヒアリングにおいて、保安院は「不純物」検査の法的な具体的審査基準はなく、電力会社まかせになっていると認めた。 質問書では、国の省令では、MOX燃料には「不純物」の濃度を含めた仕様に関する規定はないという理解でよいか聞いている。これについて関電は、「具体的な元素、基準値は技術基準では示されていない」と明確に答えた。 また、追加質問書では不純物の上限値に関する法的根拠をもった具体的基準は何かを聞いている。関電は、質問には直接答えず、「不純物」となる元素の種類や上限値は「ウラン燃料の経験やMOX燃料に関する海外での使用実績等を踏まえて設定している」と答えた。さらに、「保安院に当社の上限値設定根拠を説明し、国が審査を行い妥当と判断したものと考えている」と回答した。これは、国としては何の基準も持っておらず、関電独自の基準が、事実上国の審査基準になってしまっているということを意味している。これでは、関電が上限値内に抑えた不純物が、九州電力・中部電力ではどうなっているのかまったく分からないという問題が生じる。また、「不純物」だけでなく、MOX燃料に関する国の具体的基準は存在しないのである。 参加者からは、「国の基準がないのに、どうして国の検査に合格するMOX燃料が作れるのか」「残りの12体のMOX燃料も廃棄にすべきだ」と批判の声がわっとばかりにあがった。「プルサーマル賛成・反対に関係ない。基準がないのであれば、まず検査の基準を作ってから進めるべきだ。このままプルサーマルを進めることは許されない」「安全第一の姿勢というが、国の検査の不備をなんとも思わず推進しようというやり方は許されない」と関電の姿勢を厳しく批判した。 玄海プルサーマルについて佐賀県は「国の検査に合格しているから大丈夫」と繰り返しているが、国の輸入燃料体検査の実態は、法的裏付けをもつ具体的審査基準を持たず、電力会社の説明が唯一の判断根拠になっているということだ。そのような検査による「許可」など無効という他ない。国の審査基準もないプルサーマルは中止すべきだ。 交渉の後、福岡の九電本店前で行われている抗議行動に連帯し、それぞれの思いを書いた寄せ書きメッセージを作った。 11月9日には、交渉参加者一同で、佐賀県知事と県議会議長に要望書を送った。関電交渉の内容を伝え、玄海原発3号機の調整運転をただちに中止するよう九電に要請するよう求めている。 [参考資料] ◎佐賀県知事・県議会議長への要望書 ◎関電宛の質問書と回答 |
(09/11/10UP) |