■貴社の10月23日付「報告書」は
      品質保証に関する国の新基準を満たしていません。
■品質保証体制が確立されたかのような、プルサーマル推進宣伝は、
      即刻中止すべきです。

質     問     書


関西電力社長 藤 洋作 様

2003年12月18日

 貴社が10月23日に発表した「海外MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善状況について」(以下、「報告書」という)に関して、質問します。

1.10月23日付「報告書」の目的はなんですか。
 貴社が「報告書」を発表した同日、原子力安全・保安院は、BNFL委員会報告書(2000年6月14日)を引用しながら、「これは・・・『関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには、通商産業省が同社の品質保証体制が申請者資格を有するに足るよう改善されたことを確認する作業が必要』との方針を受け、提出されたものです」とプレス発表しました。
(1) 貴社の「報告書」はこのように、BNFL委員会報告書にのっとって出されたものと理解してよいですか。

(回答)ご質問の通り当時の通商産業省が設置した電気事業審議会基本政策部会のBNFL製MOX燃料データ問題検討委員会報告の再発防止対策のために目指すべき方向性の一つである関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには通商産業省が同社の品質保証体制が申請資格を有するに足るよう改善されているということを確認する作業が必要である、必要と考える、を踏まえて提出したものでございます。

(2) 貴社の「報告書」には、上記のような趣旨が書かれていないのはなぜですか。

(回答)国が電事審報告書の趣旨を踏まえて確認をおこなうことはもちろんのこと、福井県等、地元関係自治体のご確認、地元の皆様のご理解を十分得ながら慎重に進めていくことが必要であるとの考えからあえて記載をしておりません。電気事業審議会の報告書だけに基づいて出しているわけではございません、ということでございます。

2.「報告書」は、国の品質保証活動の新基準に照らして「充実を図っている」途上となっています。「最終報告書」のようなものをこれから出すのですか。
 「報告書」の「はじめに」では、「さらに、策定されたJEAC4111-2003に基づき、品質マネジメントシステムの充実を図っています」と書かれています。「充実」の内容や「充実した結果」については書かれていません。このJEAC4111-2003は、東電事件を受けて、今年10月1日の省令改正によって、品質保証に関する国の新しい基準となりました。「報告書」は、この国の新基準に照らして「充実を図っている」途上であるとの趣旨を述べていますが、「最終報告書」のようなものをこれから発表するのですか。

(回答)現在のところ、最終報告書のようなものについては提出する考えはありません。
補足で説明させていただきますと、当社は報告書の4、ISOベースの品質保証の確立に向けた取り組みおよび3.2の品質保証計画の充実で述べている通り、ISO9001をベースとしたJEAC4111−2003を考慮した品質マネージメントシステムを構築すべくJEAC4111−2003案を社内標準にいち早く取り込み、平成15年6月27日から先行実施しISO認証機関であるロイド社の助言を受けました。その上で、9月30日に策定されたJEAC4111−2003に基づき、社内標準の見直しを行い、社長をトップとした品質保証体制を構築し、10月23日に報告書を提出しております。なお、ご指摘の充実をはかっていくと書いてあるところの、なお、報告書の策定されたJEAC4111−2003に基づき品質マネージメントシステムの充実をはかっていきますとは、JEAC4111−2003の「1目的」で述べられている原子力発電所の事業者はこの要求事項に従って品質マネージメントシステムを確立し実施し、評価確認し、継続的に改善することによって、原子力発電所の安全を達成維持向上しなければならないと書かれておりまして、この精神に基づき、当社は今後も品質マネージメントシステムを充実強化するため、継続的に改善しMOX燃料の調達を確実に実施していくことを意図しております。という形で、充実をはかっていくという風に書いてあるのは、そういう品質保証の活動というものは、終わりがないもので、常に改善を向けて努力を続けていくというものでございます。これがJEAC4111−2003ですが、最初の冒頭のところに、そういう趣旨で書かれておりまして、それを受けて報告書の中でも充実をはかっていくという風になっております。

3.国の新基準ではなく、「ISO9001」が貴社の品質保証に関する基準ですか。
 国の品質保証に関する新基準JEAC4111-2003は、「品質に係わる国際的な規格であるISO9001を基本として・・・原子力固有の事項を追加している」と貴社「報告書」にも書かれています(「報告書」P23、添付−4)。
 しかし、「報告書」の品質保証に関する判断基準は、実際にはISO9001で行われています。7月14日に貴社本店で私たちと行った交渉でも、「イソ9001で評価している」と何度も「いそ、いそ」と繰り返し述べていました。
貴社は、品質保証体制を評価するにあたって、国の新基準ではなく、ISO9001を基準とすると今でも考えているのですか。

(回答)当社の品質保証の規格は、ISO9001を取り入れたJEAC4111−2003であります。これは、報告書の中の3.2品質保証計画の充実で述べてますが、当社では9月30日に策定されたJEAC4111−2003に基づき、社内標準の見直しを行い社長をトップとした品質保証体制を構築しております。という形で、あくまでも当社の品質保証の基準は、JEAC4111−2003でございます。なお、JEAC4111−2003というものは、ISOの9001の2000年版ですね、をベースに策定、というか、ISO自身が全業務、業種にわたっておりますので、それを原子力安全ということに置き換えて策定されたものが、JEAC4111でございますので、精神としては同じものでございます。

4.国の新基準を満たさない「報告書」をなぜ急いで出したのですか。
 原子力発電所に関する品質保証の基準は、東電事件の後、今年10月1日の省令改正により、これまでのJEAC4101-2000から、JEAC4111-2003に変更されました。貴社はこのことを当然知っていたはずです。にもかかわらず、国の新基準を満たさない「報告書」をわざわざ10月23日に発表しました。
 これは、「今年度中に新たなMOX契約を結ぶ」という貴社の勝手なスケジュールを優先したためとしか考えられません。
 なぜ、国の新基準を満たさない「報告書」をわざわざ10月23日に発表したのですか。

(回答)これは先ほどから、申しておりますが、当社はISO9001をベースとしたJEAC4111−2003を考慮した品質マネージメントシステムを構築すべく、JEAC4111−2003の案を社内標準にいち早く取り込み、先ほども言いましたけれども、昨年の6月27日から、先行で実施しております。さらに、7月にはISOの認証機関であるロイド社の助言を受けております。その上で、9月30日に策定されたJEAC4111−2003に基づき、社内標準の見直しを再度行い、社長をトップとした認証体制を構築し、BNFL製MOX燃料問題以降、改善してきた取り組み状況を報告書に記載し、10月23日に提出したものでございます。したがって、国の新基準を満たさない報告書ではなくて、われわれは満たしていると判断して提出しております。

5.貴社だけが、MOX燃料に関する「申請者資格がない」ことを認めますか。
 2000年6月のBNFL委員会報告書は、「関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには、通商産業省が同社の品質保証体制が申請者資格を有するに足るよう改善されたことを確認する作業が必要」と述べています。すなわち、現在でも、貴社だけは「申請者資格があるとは認められていない」ことになっています。このことは認めますか。

(回答)平成12年6月に報告された....電気事業審議会の報告書ですね、報告書の再発防止対策、再発の防止のために目指すべき方向性の一つである、指摘されております関西電力が再度MOX燃料の輸入燃料体検査申請を行うためには通商産業省が同社の品質保証体制が申請資格を有するに足るよう改善されていることを確認する作業が必要と考えるという記載を踏まえ、MOX燃料調達に関する品質保証活動の改善をおこなっております。ということでございます。あのぅ、われわれとして申請者の資格があるとかないとかの判断は、われわれがおこなうもの、行うとか認めるというものではございません。われわれとすると、その申請資格が、申請資格というものが具体的に許認可の基準としてあるわけではございませんが、資格を有するとかどうとかという判断は、国の方が行うものだと判断しております。当社とすれば、きちっとしたMOX燃料の調達ができるような品質保証の体制を作ることが改善をつとめることが、当社のつとめであると考え、そういう風な活動を行っております。

6.なぜ貴社だけが、「立入検査」まで行われるのですか。
 原子炉等規制法の改正によって、品質保証活動が保安規定に位置づけられました。これによって電力会社各社が12月31日までに、保安規定変更許可申請を行うことになりました。12月9日付で保安院が貴社に出した文書(平成15・12・08 原院第1号)によれば、「書類審査に加え、立入検査も併せて行い、十分な審査を行う」と通知されています。この「立入検査」は貴社のみに対して行われるものです。他社と異なり、「立入検査」まで行われるということは、貴社が「申請者資格すらない」という状況をふまえたものだと考えますが、どうですか。

(回答)立ち入り検査というものは、なぜ行われたかといいますと、まずこれは、昨年われわれが出したこの報告書に基づいて立ち入り検査が行われているものでございます。だから、なぜ貴社だけが、といわれても、この報告書を出しているのが関西電力ですので、当社だけが立ち入り検査をこのことに関しては受けております。

7.福井県・高浜町に対し謝罪し、まだ品質保証体制が整っていないことを説明すべきではありませんか。プルサーマル推進宣伝を中止すべきではありませんか。
 以上のように、10月23日付「報告書」は、国の新基準を取り入れておらず、自ら「充実を図っている」途上であることを認めています。また、貴社はいまだMOX燃料について、申請者資格があるとは認められていません。
しかし他方で、貴社はこの「報告書」を持参し、福井県や高浜町に対し、あたかも品質保証体制が整ったかのような説明をし、今年度中にMOX燃料の製造契約を結びたいと表明しました。またも、福井県当局や県民に対し、虚偽の報告を行いました。また、この「報告書」の発表と同時に、プルサーマル推進のために大宣伝を行っています。11月26日付「福井新聞」で2面を使った大広告、また、福井県内に33万4千部ものプルサーマル推進パンフレットを配布する等々。

 このプルサーマル大宣伝は、電気料金で賄われています。品質保証に関する国の新基準を取り入れていない「報告書」を基に、また国の審査もこれからであるにもかかわらず、貴社の品質保証体制が確立されたかのようなデマ宣伝を行うことは、詐欺的行為にも等しいものです。
(1) 福井県・高浜町に対し謝罪し、まだ品質保証体制が整っていないことを説明する必要があるのではないですか。

(回答)どういう趣旨の謝罪かが、あれなんでございますが、われわれとすると今までの問題、質問に対する回答で述べました通り、国の基準に対して満足しているとわれわれは思って、報告書を出しております。したがって、われわれはその、そういう平成12年6月のBNFL製MOX燃料の問題の原因と対策をとりまとめた、それで、品質保証の改善に取り組んできております。その結果を、15年10月23日に国、福井県等関係自治体のご確認をいただくために報告した次第でございまして、今現在は品質保証活動の改善状況について関係各所のところにご説明させていただいております。謝罪というものに関しましては、やはりBNFL製問題がございましたので、こういう報告書を出すにあたっては、報告するに際してあらためて謝罪ということは述べております。・・・ちょっと、そのぅ、ここで言われていた謝罪というのは、質問を読むと、虚偽の報告をしたことに対する謝罪かという風に受け取れたのですが、われわれとすると、報告書に関しては誠実にした結果を報告しております。

(2) ただちに、宣伝を中止すべきだと考えますが、どうですか。

(回答)日本にとってプルサーマル、原子燃料サイクルを含めた原子力は、地球温暖化防止やエネルギーの安定供給のための基幹電源として重要であり、今後とも着実に推進していかなくてはならないと考えております。今後とも地元をはじめとする皆様に理解していただけるよう理解活動に取り組んでいきます。

(3) また、これら宣伝に費やした費用はいくらですか。

(回答)個別の費用については回答を差し控えさせていただきます。

8.なぜ高浜4号用MOXに不正なしと決めつけたのですか。
 1999年のBNFLデータ不正事件では、高浜3号用MOX燃料で不正のあることが明らかになったとき、貴社は高浜4号用には不正はないと直ちに決めつけました。その後、不正情報を入手しながらそれを隠蔽しました。「報告書」では、このような事実およびそのようなことがなぜ行われたのかという組織的原因について、まったく触れられていません。なぜですか。

(回答)平成12年6月にまとめました当社の報告書ですでに述べておりますが、高浜3号機用MOX燃料データ不正に関する調査段階で知り得た単純なデータ不正の手口および当時得られた検査員の証言に基づいて高浜4号機用MOX燃料に関する調査の方向性を絞り込んでしまったため、不正の全体像を見失ってしまった、また、NIIが高浜4号機用MOX燃料に対していた抱いていた疑義についても、もっと技術的解明をするとともに、担当箇所のみで判断するのではなく、全社的な検討を行うべきであった。さらに、この情報が通産省の判断に影響を及ぼす可能性のあることも思慮し、通産省をはじめ、関係各所に適切に連絡すべきだと、報告書は以上の点を含めたBNFLデータ不正問題の反省すべき事項を踏まえて現在の当社品質保証活動を組織運営し、評価する仕組みが作り込まれていることを確認した結果をまとめたものでございます。触れられてないということではございませんで、この中で・・・・この報告書の中で10頁の3.2品質保証活動組織運営し評価する組織づくりのところの中の問題点として今の所をあげております。

 上記質問事項について、すみやかに回答されるよう要望します。

2003年12月18日
グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
  京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581