大飯1号機の配管減肉、美浜3号機事故の教訓をないがしろにした
大飯2号機の2次系配管減肉などに関する
質   問   書


関西電力社長 森 詳介様

2007年11月13日

1.大飯2号機の2次系配管での大幅減肉について
 大飯2号機の第21回定期検査中に、2次系配管で必要最小肉厚を大幅に下回る減肉が確認されました(貴社プレス発表11月7日付)。4ループあるうちのCループ給水隔離弁下流の給水配管曲がり部で、厚さ21oの配管が10.9oに、約半分の薄さにまで減肉しており、国の技術基準である必要最小肉厚15.7oをも大幅に下回っていました。
 これは、2004年7月に今回と同様箇所で起きた大飯1号機での大幅減肉の教訓をまったく無視した結果です。さらに、2004年8月9日に5名もの死者を出した美浜3号機事故の教訓をないがしろにしている貴社の安全性軽視の姿勢を端的に示すものです。大飯1号機の減肉は、美浜3号機事故の警告でもありました。大飯1号の減肉結果を素早く水平展開しておれば、美浜3号機事故は防げた可能性こそあったのです。
 このままでは、美浜3号機事故がまたもや起きるのではないかという強い不安と危機感をいだかざるをえません。
 よって下記の質問に早急に答えてください。

(1)今回大幅減肉が確認された大飯2号機の部位について
 新聞報道によれば、大飯2号機の今回の減肉部位は1990年に肉厚測定して以降、一度も測定しておらず、1990年当時に配管の余寿命を「27年間」と評価していたとされています。
[1]減肉が確認された部位は、2004年7月に大飯1号機で減肉が起こっていた部位と同じ箇所という認識でいいですか。
[2]当該部位のこれまですべての肉厚測定年月日と測定値を示してください。
[3]当該部位の上流側にある主給水隔離弁は玉型弁ですか。
[4]1990年に当該部位の余寿命を27年と評価していたのですか。
[5]A・B・Dループの当該部位と同じ箇所の肉厚測定年月日と測定値の履歴を示してください。

(2)2004年7月の大飯1号機の配管減肉の教訓との関係について
 2004年7月に大飯1号機の2次系主給水配管曲がり部で大幅な減肉が確認されました。当時貴社は、この大飯1号の減肉は、主給水隔離弁が特殊な玉型弁であるため下流部での水の乱流により減肉が起きたとしていました。この減肉は、貴社が予測していた減肉率を上回る早さで進んでおり、貴社の「余寿命評価」が破綻していたことを示していました。そして、2004年7月の第53回原子力安全委員会に出した資料の「対策」では、同じ玉型弁を持つ大飯2号の当該部位について「配管厚さの経年監視を強化する」と書かれていました。
[1]大飯1号機の減肉の水平展開として、大飯2号機の同じ玉型弁下流部位の肉厚測定をただちに行ったのですか。行っていないとすればなぜですか。
[2]上記の「対策」としてどのような監視強化を行ったのか、具体的に示してください。
[3]大飯1号機で既に減肉率の予測は破綻していたのではありませんか。それにもかかわらず、大飯1号機と同じ減肉率を用いて予測していたのですか。
[4]現時点では、大飯2号の当該部位が必要最小肉厚を下回ったのはいつの時点だと評価しているのですか。
[5]このことに対する貴社の責任を明らかにしてください。

(3)代表部位概念の導入について
 大飯2号機では、Bループの同類配管部位を代表的に監視していたとされています。Bループの当該部位は、公称肉厚21oに対して今回の測定値は21.5oとなっており、各ループで減肉には大きなばらつきがあります。
 2004年の大飯1号機の配管減肉の場合も、4ループあるうち3ループでは減肉が起きていたのに残る1ループ(D)では減肉はほとんどありませんでした。当時、なぜこのようなばらつきが起きるのかについて、貴社の回答は「原因は分からない」というものでした。
[1]それにもかかわらず、Bループを代表的部位として、他のループの配管を点検していなかったのですか。事実ならそれはなぜですか。
[2]当該箇所は当初、減肉の起きにくい「その他部位」とされていました。しかし、美浜3号機事故後の保安院の暫定的な配管管理指針でも機械学会の規格でも、玉型弁下流は「主要点検部位」に区分されました。それにもかかわらず、代表部位概念を用いて17年間も点検していなかったのはなぜですか。

(4)「未点検箇所なし」について
 貴社は2005年6月の第19回定検終了時に、大飯2号機の2次系配管の主要点検部位について「未点検箇所なし」と発表していました(貴社プレス発表2005年6月20日付)。この「未点検箇所なし」には、今回のように17年も前に測定しただけでそれ以降一度も肉厚測定をしていないものも含まれていたことになります。美浜3号機事故後、「配管管理に万全を期す」としていたのに、17年前に測定しただけのものまで「点検済み」としていたことに私たちは驚きを隠せません。今回の事実からすれば、「点検済み」としながら、長期にわたって点検していない箇所が多数存在すると考えられます。
[1]2004年の美浜3号機事故以降、一度も肉厚測定をしていない部位はどれくらいあるのですか。各原発毎に示してください。
[2]1990年に管理指針を策定した段階で測定して以降、一度も測定していない部位はどれぐらいあるのですか。各原発毎に示してください。

(5)2次系配管管理の新指針では減肉を確認できない問題
 美浜3号機事故後に貴社が策定した2次系配管の新しい管理指針では、「余寿命5年以下となる時期に点検を行う」となっています。
[1]しかし、今回の大飯2号機の配管減肉に則せば、「余寿命27年」という貴社の余寿命評価が全くデタラメであったことから、配管の減肉を確認することができないため、新指針はまったく役にたたないのではありませんか。
[2]美浜3号機事故後の貴社の配管測定や評価によれば、「余寿命999年」など奇妙な余寿命評価が行われ、測定の必要を認めていない箇所があります。全ての配管の余寿命評価をやり直すべきではありませんか。
[3]美浜3号機事故後に肉厚を測定していない2次系配管部位ついて、全て測定すべきではありませんか。

2.美浜2号機のA蒸気発生器管台での傷について
 美浜2号機のA蒸気発生器入口管台溶接部の内表面で、13箇所の傷が発見されました(貴社プレス発表9月25日、10月18日付)。その内最大の傷は深さ13oにも達しており、必要最小肉厚を下回っていました(公称肉厚81o、必要最小肉厚75o、測定値68o)。また、その後の調査で、ステンレス製の配管でも傷が確認されています。蒸気発生器管台部は、1次系の圧力バウンダリを構成する安全上重要な部位です。管台部の亀裂が貫通すれば、一気に150気圧差で一次冷却水が格納容器内に噴き出し、冷却材喪失事故に至る危険があります。当然、厳格な管理が必要であり、傷を放置するなど到底許されないはずです。
(1)管台の内側を一度も検査しなかったのは事実ですか。
(2)そうであれば、なぜですか。
(3)敦賀2号機でも同様の部位で傷が確認されています。貴社の他の原発も即刻検査すべきではありませんか。
(4)保安院は、「運転中の漏えい監視を強化するよう」にとの指示[4頁]を10月18日に出しました。この「漏えい監視」では、傷が貫通して漏れるまでは放置しておくことになります。このような重要な箇所について、漏えい=亀裂貫通を容認するという姿勢は、安全性をないがしろにするものではありませんか。

3.減肉などによる機器の耐震許容値について
 原発の耐震安全性では、「機器の安全余裕」があることをもってしきりに安全だと主張しています。しかし機器のS2許容値は、新品同様の配管などで評価したものです。今回の大飯1号の減肉や美浜2号の傷は、技術基準以下になるまで見逃されていました。この場合、許容値は大きく低下し、配管などが薄くなっている状態で地震が襲えば、大事故となります。
(1)大飯2号の当該配管部位のS2許容値について
 新品同様の場合と、今回の減肉状態でのS2許容値はそれぞれいくらですか。
(2)美浜2号の管台溶接部のS2許容値について
 新品同様の場合と、今回の亀裂状態でのS2許容値はそれぞれいくらですか。
(3)傷が貫通すれば、「機器の許容値」はゼロとなります。「漏れるまで監視」するということは、地震時の「機器の許容値」が大幅に低下することになりますが、それでも安全なのですか。

4.貴社の原発でのトラブル頻発と定検間隔の延長について
 貴社の原発では、今年度に入って事故やトラブルが頻発しています。貴社が発表しているだけでも、20件を数えるほどになっています。
 他方、来年度から、定期検査の間隔を現行の13ヶ月から18ヶ月、24ヶ月にも延長しようとしています。定検間隔が延長されれば、大飯2号機や美浜2号機の場合、傷はさらに進展し、危険な状態になるのは目に見えています。
 定検間隔の延長はやめて、まずは配管肉厚測定の徹底など、原発の実態を明らかにすべく検査に十分な時間をかけるべきではありませんか。

2007年11月13日

グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
  京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
  大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/11/13UP)