■柏崎刈羽原発の解放基盤表面付近の揺れ(993ガル)で評価しないのはなぜか
■安全余裕はなくてもいいとの考え方なのか
■美浜1号では、許容値は老朽化でどれだけ低下しているのか
─関西電力の原子力発電所に関わる耐震安全性問題─
9月20日の「概略影響検討結果」に関する質問書


関西電力社長 森 詳介 様

2007年9月26日

 9月20日に貴社が公表した「概略影響検討結果」(「柏崎刈羽原子力発電所で観測されたデータを基に行う美浜発電所、高浜発電所及び大飯発電所における概略影響検討結果報告書」)に関して、下記の質問に回答してください。

1.柏崎刈羽原発の受けた地震動の影響はまだ調査中であり、解放基盤表面近くの地下250mでの地震動記録も(最大振幅を除いて)失われたまま、まだ再現されていません。それなのに、この段階で貴社の原発への影響を検討し「安全機能は維持される」との結論を早々に出したのは何のためですか。

2.結論として、「主要な施設の安全機能は維持される」としていますが、「安全機能は維持される」とはどのような意味においてですか。

3.9月20日に公表した報告書は「概略影響検討結果報告書」となっていますが、この「概略」の意味は何ですか。評価した機器が限られているという意味ですか。

4.基礎版上の応答スペクトルを検討対象にしたことについて
柏崎刈羽原発の基礎版上の揺れ(床応答スペクトル)と貴社の原発の基礎版上の揺れとを比較しています。しかし、柏崎刈羽原発は地盤の軟弱性などが当の東電から指摘されており、最大振幅が解放基盤表面近くの地下約250メートル地点では993ガルなのに、地下1階の基礎版上では680ガルと減少しています。他方、美浜原発などは解放基盤表面である岩盤のすぐ上に基礎版があります。
(1)地盤の性質が違うのに柏崎刈羽原発基礎版上の床応答スペクトルを美浜原発などの床応答スペクトルとしてなぜ適用できるのですか。
(2)旧耐震指針では、「原子炉施設の耐震設計に用いる地震動は、敷地の解放基盤表面における地震動に基づいて評価しなければならない」と規定されています。今回の方法はこの規定に反するのではありませんか。
(3) 柏崎刈羽原発の基礎版上の680ガルの揺れではなく、解放基盤表面付近の993ガルの揺れを採用し、美浜1号などの解放基盤表面に適用するという方法をとるべきではありませんか。

5.貴社の原発で想定されている揺れ(S2地震動)は、これまで、これ以上の揺れはあり得ないとして設定されてきたものです。しかし、貴社の評価結果では、柏崎刈羽原発の揺れはこれを上回っています。このことは、従来の耐震安全性が崩壊したことを意味しているのではありませんか。

6.柏崎刈羽原発の揺れが貴社のS2地震動の揺れを超えた場合、貴社は、各機器ごとに、柏崎刈羽原発の揺れに対する応答値とS2許容値を比較して、許容値以下であれば「安全機能は維持される」としています。
(1)これまで貴社は、例えば原子炉容器(支持構造物)で、許容値/応答値を最低1.25とし、安全余裕を25%以上とっています。今回の評価では、このような安全余裕はなくてもよいというように姿勢を変えるのですか。
(2)一般に安全余裕はなくてもいいとの考えですか、それとも、S2許容値を超えても破壊に至る許容値までにはまだ余裕があるから許されるとの考えですか。
(3)後者の場合、S2許容値を設定する意味がなくなるのではありませんか。

7.原発の老朽化が進み、維持基準が適用される状態では、それだけ安全余裕を食いつぶし、それだけ許容値が下がるのではありませんか。美浜1号の場合、新品の頃と比べて、具体的にどれくらい許容値が低下していると評価しているのですか。

8.貴社の評価方法に従ったとしても、
(1)高浜1号の原子炉容器(支持構造物)では、応答値とS2許容値は同じ値であり、S2許容値に関する安全余裕はゼロではないですか。
(2)また美浜1号の原子炉容器でも、ほとんど安全余裕はないのではありませんか。

9.原子炉容器の評価にあたっては、容器そのものではなく、支持構造物の評価を行っているのはなぜですか。また、限られた8つの機器の評価と、その限られた部分だけの評価で、原発全体が安全だと言えるのですか。

10.「安全機能は維持される」という結論はまだ暫定的なものだということですか。

11.従来の耐震安全性が崩れた以上、まずは、全ての原発の運転を停止して、詳細な調査を行うべきではありませんか。

12.貴社は耐震補強工事を一部進めています。8月末には、美浜2号機で、格納容器冷却水クーラの支持脚部分の補強工事を行っています。新聞報道によれば、この工事によって「揺れに対する強さが2割以上向上する」とのことです。「2割以上向上」して、何ガルまで耐えられることになったのですか。


グリーン・アクション 代表:アイリーン・美緒子・スミス
京都市左京区田中関田町22−75−103 TEL 075-701-7223 FAX 075-702-1952

美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会 代表:小山英之
大阪市北区西天満4−3−3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581

(07/10/01UP)