3月11日「使用済みMOX燃料はどこに運ぶのか」で関電と交渉
◇「第二再処理工場がいつできるか分からないが、
それまでは、使用済みMOXは原発のプールで保管する」(関電)
◇メドがたっていないのに、なぜプルサーマルを急ぐのか
      「資源の有効利用のため」としか答えず

 3月11日、グリーン・アクションと共同で関電と交渉。大阪中之島のダイビル会議室で、午後6時過ぎから約1時間半の交渉だった。市民側からの参加は約30名、関電はいつもの広報部3名が対応した。今回は、使用済MOX燃料を、いつ、どこに運び出すのかに焦点を絞り、2月19日提出の質問書「使用済みMOX燃料は福井県に永久に溜まり続けるのですか?」に基づいて交渉した。

 最初に関電が回答した。「いつまでに、どこに運び出し、どのように処理するのか」の質問に対し、「使用済みMOX燃料は、今後、2010年頃から検討が開始されます六ヶ所再処理工場に続く第二再処理工場で再処理される予定となっており、それまでの間、発電所の使用済み燃料ピットで貯蔵管理されることとしています」と回答。また、二つ目の質問「国の計画が遅れた場合、どのように処理するのか具体的な計画を説明してください」に対しても、「使用済みMOX燃料は、第二再処理工場で再処理されるまでの間、発電所の使用済み燃料プールで貯蔵管理されることにしています」と同じ回答であった。
 この回答から、では「第二再処理工場がいつできるのか、目途があるのか」に焦点が移るのは当然の流れである。
 国は、「六ヶ所再処理工場の運転実績、高速増殖炉及び再処理技術に関する研究開発の進捗状況」などを「踏まえて2010年頃から検討を開始する」(原子力政策大綱)、また「2045年頃に『第二再処理工場』の操業を予定」(原子力立国計画)としている。これらに基づいて関電は回答している。そこで、この計画の前提となっている状況の確認を行った。「六ヶ所再処理工場は、2007年8月に本格操業開始の予定」、「もんじゅは、2007年を目途に運転再開の予定」。これが、「第二再処理工場」を検討する前提として国が示した予定だ(原子力立国計画2006年)。
 ところが、六ヶ所再処理工場は、ガラス固化で行き詰まり、「もんじゅ」は運転再開の目途すら立っていないのが現状だ。この事実について確認したところ、関電は「全量再処理の方針に変わりはない」「六ヶ所も日本原燃ががんばっている」等と繰り返し、しぶしぶ計画が遅れていることを認めた。
 そこで、これらの現状は、「『2010年頃から検討を開始』するための前提が欠けていることを示しており、検討できないのではないのか」と追及する。それでも関電は、「2010年頃からの検討」を繰り返す。
 参加者からは、状況に変化があるので、「『「2010年頃から検討』する方針に変更がないのか国に聞いたのか」と問うと、「聞いていない」と答える。それでは、「検討がいつ終わるかも分からないのではないか」と問うと「検討を開始していないのに、その検討がいつ終わるかは分からない」と、なんと、まともな回答が返ってきた。検討がいつ終わるかも分からないのに、「第二再処理工場」の運転開始など分かるはずもない。
 「第二再処理工場」は高速増殖炉を前提としているが、今ある「もんじゅ」は高速増殖炉の原型炉の段階である。次に実証炉、そして商業炉という順になるので、ずっと先の話だ。「もんじゅ」の現状からすれば、第二再処理工場の運転開始に目途があるのかと重ねて追及する。「いったい第二再処理工場はいつ動くのか」と聞くと、関電は「第二再処理工場がいつ運転開始するかそのスケジュールは分からない」とはっきりと答えた。
 結局、使用済みMOX燃料の行き先は、「いつできるかわからない第二再処理工場に運び出すまでは現地・原発プールに保管する」ということだった。運び出される目途は、現時点では皆無で、永久的に原発プールに置かれるのだ。それを前提にして、プルサーマルが実施されようとしていることが明らかになった。

 第二再処理工場の目処が立っていないことを認めたため、参加者から、「なぜプルサーマルを急ぐのか」、「急ぐことのメリットや必要性はどこにあるのか」、「プルサーマル開始が遅れると何か困ることがあるのか、プルトニウムが使えなくなるのか」と二の矢の質問が飛ぶ。
 これらに対して関電は、「ウラン資源の有効利用をはかるためのリサイクル」とか「目の前にあるプルトニウムを使うだけ」などとまともには答えなかった。これに対しても参加者から、「プルサーマルを実施しても、使用済みMOXという核のゴミが溜まるだけではないか」と批判の声。さらには、「ウラン資源の有効利用」というが、「前回の交渉では、『全世界の原発約440機でプルサーマルを実施して、1.17倍にウランの可採年数が延びるだけ』と説明していたではないか」と確認すると、関電は小さくうなずいていた。
 また、参加者は、関電の自己責任がどうなっているのかを質した。「状況の変化について、国や関係機関から情報を得て、社内で検討や検証がされているのか」「軌道修正などの検討はないのか」と。関電は、「公表はしていないが、いろいろな情報を集めて、社内で検討している」「2010年頃から検討される」ので、「プルサーマルを実施することの見直しはない」というだけだった。プルサーマルを実施するのも使用済みMOXを処理するのも関電という企業体である。にもかかわらず、状況の変化にも対応せず、検討内容も公表せず、プルサーマルを急いで実施するメリットも示さない。参加者からは、「そんな状況で、実施主体である関電の社会的責任はどうなるのか。会社として責任を取らなければならない」と厳しい発言がなされた。同時に、使用済みMOXという厄介なゴミを処分する方策の目途が立っていないのに、そのことに対し関電としての責任感や緊張感などはまったくなく、ただただ国の方針をオーム返しするだけで、それに寄りかかっているだけの無責任さが印象に残る交渉であった。

 この交渉で明らかになった、第二再処理工場に運び出す目途がなく、使用済みMOXが永久的に原発プールに保管され続ける状況にあることを、広く知らせていこう。


(09/03/13UP)