5月16日、グリーン・アクションと共同で関西電力と交渉を行った。中之島のダイビル1階の会議室で午後6時から8時すぎまでであった。市民側からは約20名が参加、関電は広報部員3名が出席。4月18日提出の「耐震安全性評価結果中間報告に関する質問書」、5月8日の「関電の温暖化対策・CO2削減対策に関する質問書」に基づく交渉であった。 ◇活断層を避けるとは、「地表に現れている活断層だけ」と回答 敷地の直下に活断層が見つかった美浜原発の安全性について質問していた。 美浜原発の直下に活断層があることは認めた。「美浜原発の約5キロの直下に、基準地震動Ssの基になっているB断層の断層面がある」と回答。 そこで、直下に活断層がある原発は地震に耐えられるのか、地盤のズレに耐えられないのではないかと追及すると驚くべき答えが返ってきた。 「活断層の上に建てることが指針に違反するかというとそれは違反しない」という。これまで「活断層を避ける」と言ってきたのではないのか、「敷地直下の活断層は避けて立地する」と言っていたではないか、と参加者から批判の声が飛ぶ。これに対し関電は「今まで我々が言ってきた断層というのは地表面に現れている断層、その上には建設しないという基本的にはそういう考え」と居直った回答を行った。 さらに、原発を活断層の上には建てないということについて、「『活断層の上というのは原子炉施設の設置許可書において確認されている活断層のうち耐震設計上考慮すべきものが当該施設の地盤表面上に現れている地点の直上のことを示している』と福田康夫さんが質問趣意書に対する内閣としての回答書の中で言われている」と政府見解をもちだしてきた。「直下の活断層というのは地表面に現れている活断層に限定してきたのか」と聞くと、「関西電力はそういう思いでいる。国の見解でもそういうふうにいわれている。我々は同一のつもりです」と「地表面に現れている活断層」しか問題にしないとの返答であった。 しかも、「活断層があるかどうかではなく、それに起因して起こる地震に発電所が耐えられるかどうかが安全上大事」「断層の調査とその評価から地震動をえて耐震安全性を評価するそれが基本精神」と耐震安全性では主に地震動を考慮すればよいかのような回答を行った。地震の力をあまりにも軽視した姿勢である。 ◇「地盤の浮き沈みについては、中間報告には記載していないが、関電内部で検討」 地震は揺れだけでなく、地盤のズレ=不等な沈下や隆起=をもたらす。新潟県中越沖地震では柏崎刈羽原発に1メートル以上もの地盤のズレが実際に生じた。真下に活断層があればなおのこと地盤のズレへの対応が不可欠となる。そこで、直下の活断層が動いて地盤にズレが生じれば、どんな耐震設計も役に立たないのではないかと詰問した。関電は、「地盤の浮き沈みについては、中間報告には記載していないが、関電の内部で検討している」と回答。内部検討で結論が出ているなら、なぜ中間報告に載せなかったのかと追及すると、「中間報告について国の審査を受けた時に、指摘されれば回答できるように用意している」と回答した。しかも、地盤のズレを検討し、問題のないことを確認しているから美浜原発は閉鎖する必要がないとまで答えたのである。検討内容も示さず、関電の言い分を信じろという苦しい言い訳だ。 ◇「美浜原発でB断層と野坂断層の連動を検討したのは推本と評価が異なるため」 「大飯原発沖のFo−AとFo−Bの連動性検討は、推本が検討していないから必要がない」 近接して活断層が複数ある場合に、地震が引き金となって他の断層が連動することの検討が中間報告書に記載されている。美浜原発の中間報告書では「参考」としてB断層と野坂断層の連動を検討している点に関して質問していた。関電は、B断層と野坂断層は別の断層だから、本来行わなくてもよいが、国の地震調査研究推進本部(以下、推本)と評価が異なっているため、「念のために」検討したと回答。そこで、推本は長さ約31キロメートル、M7.3と評価しているが、関電の評価はどうかと質すと、「断層モデルでの評価では、長さやマグニチュードは不必要だから算出していない」と回答する。それでは推本の評価と比較できないでないか、基準地震動策定と同じように応答スペクトル評価も行うべきと追及。関電の回答は、「断層モデルだけで十分」というものであった。連動を考慮している推本と評価が異なることを気にして連動を考慮しているのに、推本とは異なる断層モデルだけしか考慮しないのはなぜなのか。もし応答スペクトル評価を行えば、地震動が関電のSsを超えてしまうからに違いない。さらには、「震源が敷地に近く、その破壊過程が地震動評価に大きな影響を与えると考えられる地震については、断層モデルを用いた手法を重視すべきである。」(新指針の解説U-(3)-[3])と新指針を引き合いに出す。新指針では「重視すべき」としているが、断層モデルだけでよいとは書かれていない。 次に、大飯原発と高浜原発に大きな影響を与えるFo−A断層と近接するFo−B断層との連動はなぜ検討していないのか追及した。最初の返答は、「この断層については推本の評価がないから連動を検討する必要がない」であった。中越沖地震や能登半島沖地震では、連動が実際に起こったではないかと追及すると、「Fo−AとFo−Bは繋がった断層でなく、それぞれ別の断層だから」と回答。B断層と野坂断層は別の断層としながらも連動を検討しているのに、Fo−AとFo−Bは別の断層だから検討しないとまったく矛盾した回答でも平気なのだ。 また、推本が長さ100km、M8.2と評価している柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の連動をなぜ考慮しないのかとただした。関電は、「甲楽城断層と柳ヶ瀬断層間には、調査結果から約2000年前ぐらいの古い岩脈がズレていないのを確認しているから100kmと評価していない」と回答。そこで(地震の履歴を判定する)トレンチ調査を数多く行えば違う結論となるのではないかと問うと「皆さんは信じられないと言われるかもしれないが、我々は十分な調査をやった結果で評価している」と回答する。しかも、「推本がどのようにして評価しているか知っていますか」などと問いかけ、関電の調査方法の方が推本よりも優れているかのように話すのである。活断層の「見落とし」や切り縮めが問題になり、あらゆる角度からの耐震安全性の再検討が必要とされているときに、なお関電はこうした姿勢なのである。 ◇「これまでの活断層評価に誤りや不十分な点があったとは考えていない」 中間報告で考慮した主要な活断層は21あるが、そのうち過半数の11は、新たに追加した断層である。そこで、これまでの評価をどう総括しているのかと質問していた。回答は、「これまでの活断層評価に誤りや不十分な点があったとは考えていない」というのである。主要でないと判定していた断層を耐震安全上主要な断層であると評価を変更したにもかかわらず、変更したことへの真摯な対応はない。しかも、「新しい指針によって、最新の手法も導入して、綿密な調査を行って、活断層の評価を見直した」と平然と答える。これから、原発を建てるのではなく、既に立っている原発の耐震安全性のバックチェックである。現に建っている原発は評価を変える前の活断層評価に基づいているのに、誤りを認めず過去の過小評価への反省もないバックチェックなどを到底信用することはできない。 ◇「新品時と同じ評価基準値を用いた」施設・機器でも「安全余裕」は減少 今回のバックチェックで基準地震動が大きくなったために、施設・機器の安全余裕が1.0に近づき、減少している。施設や機器の老朽化を考慮すればさらに減少する。そこで、中間報告で用いた材料の評価基準値について、老朽化を考慮したものでなく、新品時と同じものを用いて算出した安全余裕かを確認した。 関電は、「中間報告では極力早く報告するために、新品時と同じ評価基準値(材料の許容値)を用いた。維持基準を含め高経年化対策を加味した評価は今後である」と老朽化は考慮していないことを認めた。維持基準によるひび割れを認めた運転では、この新品同然の評価は成り立たない恐れが強い。 なお、交渉時に答えられずに宿題となった事項について5月20日に以下のとおり電話回答があった。 ■連動の問題 Bと野坂およびFo−AとFo−B(エフオーと読む)の連動性の問題については、最新の海洋音波探査や他の機関による海洋音波探査の再解析(再解析は最初の海洋音波探査をも含む意味)の結果、また重力探査の結果を基に、周辺の地質構造を加味してあらゆる角度から検討した結果、一連で活動するものではないと評価した。 Bと野坂の連動は、推本と異なるため念のために考慮したもの。 Fo−AとFo−Bの連動はなぜ考慮しなかったかと言えば、推本にないため。 柳ヶ瀬などの断層も1本のものでないと判断しているのは同じ。 現実離れした原発の稼働率が前提の温暖化対策・CO2削減対策 関電のCO2対策に関していくつかのデータを質問していた。その回答を下表にまとめた。CO2排出量の実績
排出原単位の実績
原発の設備利用率の実績
2012年までの5年間平均の原発設備利用率(81.9%)の年度ごとの目標値
08年度や09年度の利用率が低めなのは、大型補修工事のために定期検査期間が長引くからと答えた。また、トラブル等での利用率減を一律に見込んでいると回答があったがその数値は宿題となった。それにしても、配管のさらなるひび割れなどが予測されるのに、現在の実績を10%もアップすると見込むのは余りにも非現実的ではないだろうか。 原発利用率について、5月20日に電話で交渉時に残された課題への回答があった。 ■原発設備利用率の算定方法について 「10年間の出力損失などの実績を基に、(定検期間による利用率減から)さらに利用率減を算出。その減少分は約4%と評価している」。 つまり、事故・故障などによる停止期間は約半月ほどしかないとしていることになるが、現状からすれば余りにも楽観的ではないだろうか。 (08/06/05UP) |