12月12日関電交渉報告
◆大飯2号の2次系配管減肉について反省なし。7年間も違法な運転
◆大飯2号の減肉率は、初回測定時の約8倍。0.1o/年→0.8o/年
◆多発する蒸気発生器管台のひび割れ対策は「漏えい監視」=漏えいを容認
◆耐震安全性の確認よりプルサーマル再開を優先
−関電の安全軽視の体質は、美浜3号機事故後もなんら変わっていない−
プルサーマル再開を口にする資格なし



 12月12日午後6時過ぎから9時前まで、旧関電本店横のダイビルで、グリーン・アクションと共に関西電力との交渉を行った。市民側の参加者は約30名、関電からは4名(いつもの広報3名と、人事異動で新たに広報員となった1名)が出席した。11月26日の定例記者会見で、社長がプルサーマル再開に言及したため、交渉では、プルサーマル再開に関連する問題を中心に取りあげた。
 関電は、大飯2号の2次系主給水配管曲がり部の大幅減肉について、「反省している」とは一言も述べなかった。また美浜2号などで新たに確認された蒸気発生器入口管台での応力腐食割れについては「ただちに安全上問題はない」として、「漏えい監視」=冷却水が漏れるまで放置するという危険な手法で「安全に管理できる」とした。耐震安全性の確認よりプルサーマル再開を優先すると臆面もなく語った。このように、交渉で浮かび上がったのは、関電の安全性軽視の体質は美浜3号機事故後もなんら変わっていないということだった。プルサーマル再開を口にできるような資格さえないことが明らかとなった。以下に、主要な点について報告する。

◆大飯2号の大幅減肉について反省なし
 大飯2号の2次系主給水配管曲がり部で、厚さ約2pの配管が半分ほどまでに薄くなった減肉が確認された(11月7日)。国の技術基準である必要最小肉厚を割り込んでいた。この減肉部位は、2004年8月の5名もの死者を出した美浜3号機事故の直前に、大飯1号機で確認された大幅減肉と同一箇所であった。関電は当時、大飯1号で減肉が確認されたにもかかわらず、大飯2号の今回減肉が確認された部位を点検していなかった。美浜3号機事故後の「総点検」でも点検していなかった。なぜすぐに点検しなかったのかとの問いに対して、「過去(1990年)に点検していた」、「『その他部位』から減肉が起きやすい『主要点検部位』に格上げした」と繰り返すばかりだった。「格上げしても肉厚を測定しなければ意味がないではないか」と批判されても、「格上げした」としか答えなかった。
 美浜3号機事故後の「総点検」でも点検しなかったのはなぜかと問われる、「美浜3号機事故は未点検箇所で起きた。大飯2号の当該部位は未点検箇所ではない」として、あたかも大飯2号の減肉は、美浜3号機事故の教訓とは別問題であるかのように強弁した。「未点検箇所ではない」と言いながら、実際に点検したのは今から17年も前にたった1回測定しただけで放置していたのだ(2004年当時では14年前)。
 大飯2号で大幅な減肉が今頃になって確認されたことについて、「反省しているのか」と厳しく問うた。しかし関電は、無言を貫き、一言も「反省している」とは答えない。参加者からは、「なぜ反省しないのか」、「反省なしに原因究明といっても、また同じ事を繰り返すだけだ」等々、厳しい批判が続いた。国の技術基準を割り込んで、7年間も違法な運転を続けていたにもかかわらず、反省の弁は最後まで一言もなかった。

◆大飯2号の減肉−減肉率の加速−初回測定時の約8倍。
 関電は、今回確認された大幅減肉について、「2000年に必要最小肉厚を割っていた」と評価しているという。そうすると、今回は減肉率を0.94×10-4o/h(約0.8o/年)と想定していることになる。1990年に1度だけ肉厚を測定したときには余寿命を27.2年と評価している。このときの減肉率は、およそ0.12×10-4o/h(約0.1o/年)としていたことになる。減肉率は初回測定時の約8倍にもなっている。
 2004年に大飯1号で減肉が確認されたときにも、当初の予測より減肉が早く進んでいることが分かっていた。当時から私たちは、この減肉率の加速を考慮しなければならないと主張してきた。しかし関電は、美浜3号機事故後も、この減肉率の加速を考慮に入れようとはしなかった。交渉では、「大飯1号と2号はそれぞれ別の減肉率」などと理屈にもならないことを述べ、減肉率の加速化の問題にふれることを極力さけていた。国の技術基準を割り込む大幅な減肉が確認されてしまった後で、いつ基準を割り込んだのかを計算する場合にだけ減肉の加速を考慮してもあとの祭りだ。実際の配管管理とそのための余寿命評価に減肉率の加速を考慮しなければ意味はない。
 関電は原子力安全委員会(12月6日)に提出した資料でも、減肉は加速しないことを前提にした、測定点を直線で結んだ図を示し、それで安全に配管管理ができるかのように説明している。
1988年
7回定検 (S63)
1990年
8回定検 (H2)
1999年
14回定検(H10)
2005年
19回定検(H17)
2007年
21回定検(H19)
21.6o [11.9]   20.9o [20.9]   21o [34.9]
  20.1o [17.5]   21.7o [73.6] 21.5o [73.5]
  20.5o [27.2]     10.9o ★基準割
  20.8o [28.9] 19.7o[40.4]   19.0o [16]
[大飯2号機 主給水配管エルボ部の肉厚測定履歴  2007.12.12関電交渉の回答より]
[ ]は余寿命年

◆「プルサーマル再開と耐震安全性は別問題」
 国の耐震基準が新しくなり、関電も各原発について耐震安全性の確認作業を行っている。予定では来年3月に中間報告(代表的な1つの原発についてのバックチェック結果)を出し、最終報告は2009年9月に出す予定である。中越沖地震によって原発の耐震安全性が崩壊したことが誰の目にも明らかになり、各原発の耐震安全性について不安と関心が高まっている。耐震安全性の確認が終了するまでプルサーマルを再開することはできないのではないか、耐震安全性を優先させるべきではないかと問うていた。これについて関電は、「プルサーマル再開と耐震安全性は別問題」、「MOX燃料の装荷までには、耐震安全性の評価は終了している」と答えた。福井県原子力安全対策課の課長が「耐震問題は原発の運転の大前提」と述べていることを紹介しても、「プルサーマル再開とは別」だと繰り返す。バックチェックの評価が出そろってからプルサーマル再開の準備をしていたのでは、「2010年度にプルサーマル開始」という国の計画には到底間に合わない。そのため、最終報告は2009年9月だから、その間にMOX燃料製造などを済ませておいて、なんとか国の計画に合わせることを最優先にしようとするものだ。参加者は、「関電の活断層評価は、国の評価と比べても過小評価になっている、そのため今でも関電の原発は大地震に耐えられるのか分からない状況だ」とプルサーマルを優先する関電の姿勢を批判した。

◆ 美浜2号・高浜2号でも見つかった蒸気発生器管台のひび割れ
  他の原発は止めて点検ではなく、「漏えい監視」=漏えい容認

 美浜2号のA蒸気発生器(SG)入口管台で、国の基準を割り込む深さ13oのひび割れが確認された(10月18日)。続いて12月4日と7日には高浜2号で、AとCの2台のSG入口管台で同様のひび割れが確認された。これまでも高浜1号の炉内計装筒管台や大飯3号の上蓋管台でひび割れが確認されていた。これらはインコネル600材料での応力腐食割れの進展が予想より早く進んでいることを示している。美浜2号のSG入口管台部でのひび割れは何万時間で発生したのか、また関電の予測はどうだったのかを質問していた。しかし回答は、亀裂発生の時間については調査中であり、関電の予測については答えなかった。そのため、再度確認することとなった。SG管台にインコネル600を使用している高浜3・4号、大飯4号については、すぐに原発を停止して検査すべきではないのかと問うていたが、「至近の定検で検査する、それまでは『漏えい監視』を続ける」と答えた。参加者は「定検に入ったばかりの高浜2号でもひび割れが見つかったのだから、他の3基についても傷が進展している可能性が高い」、「すぐに検査すべきだ」と批判。しかし関電は「ただちに安全上問題ない」として、「漏えい監視」を行うと繰り返した。「『漏えい監視』とは、傷が貫通して冷却水が漏れることを容認すること。一次系のため150気圧差で貫通口から一気に冷却水が噴出すれば、貫通口はたちまち大きくなり、冷却水喪失事故になりうる」と追及した。すると関電は「初めに小さな漏れが起こるので大丈夫」と美浜3号機事故で破綻したLBB思想に未だにしがみつく回答を行った。「漏えい監視」とは、漏えいを容認するものだ。さらに、通常の配管管理の方法に、既に破綻している事故時のLBB思想を適用する非常に危険な手法だ。原発を止めないことを最優先にするためのものだ。関電が安全性より経済性を優先していることを端的に示している。

◆「福井県知事の4項目は、プルサーマル再開とは別のもの」
 開催中の福井県議会では、関電のプルサーマル再開を巡って議論になっている。西川知事は11月30日、議会の答弁で以下の4項目をあげて、関電が県民理解を得るよう努力することが必要だと述べた。[1]美浜3号機死傷事故に対する誠実な対応、[2]トラブル減少とその対策、[3]高経年化対策、[4]耐震安全性の確保。しかし関電は交渉で、「知事が示した4項目は、プルサーマル再開とは別のもの」と、あたかも当然であるかのように語った。
 また、プルサーマル再開について「知事の同意」を得るのかと問うと、これには一切答えず、「地元の同意を得て」と繰り返すばかりだった。この日の午前中には、福井県議会の原子力発電特別委員会が開催されていた。その様子を知っていたようで、交渉では「特別委員会でも了解を得られているようで・・・」等と語っていた。
 その特別委員会では、プルサーマル推進と慎重の両方の意見が議員から出されたが、一部の新聞では、「プルサーマルの事前了解は今も有効である」ことを特別委員会が確認したとして、それだけをもって「プルサーマルの実施体制は整った」と世論誘導の記事を書いている。とりたてていうまでもなく、事前了解は美浜3号機事故直後でも有効だった。福井県は返上しなかった。特別委員会が「事前了解は今も有効」と確認したことだけを理由にして、プルサーマル再開が了承されたと関電が判断すれば、これほどハレンチ極まりないことはない。
 福井県の姿勢は、事前了解は今も有効で、美浜3号機事故によってプルサーマルを中断したのは関電の自主的な判断であり、再開するのも関電の自主的な判断。とりわけ知事の「同意」がいるわけではない。県民の理解を得られるよう4項目を示したのであり、ボールは関電にあるというものだ。一方ではプルサーマル再開に「慎重姿勢」であるかのようにポーズをとり、実は自らに責任が及ばないように慎重に振る舞っているだけだ。唯一気にしているのは、「関電はトラブルが多すぎる」ことだ。県民5名が亡くなり、そのうえ事故やトラブルが頻発している。昨年度に比べて既に今年度は倍以上の20件を超えている。
 これに対して関電は、特別委員会の委員を説得するために作成した資料で、「今後の取り組み」として「最近のトラブルを踏まえ、これまでの活動に更なる改善を加え、安全管理の再徹底アクションプランを策定」すると書いている。「安全の誓い」や「安全管理の徹底」と何度も繰り返してきたが、またも「再徹底アクションプラン」なる形式的なもので関電の安全管理が改善するはずがない。安全管理の再徹底のためには、まずは大飯2号の減肉を放置してきたことを反省しその責任を明らかにすること。減肉率の加速化を考慮して、配管の余寿命評価をやり直すこと。さらに、美浜2号と高浜2号で確認されたSG入口管台のひび割れという現実を重視して、「漏えい監視」=漏えいの容認という危険な手法ではなく、すぐに原発を止めて検査することだ。福井県は、プルサーマル再開論の前に、これらを関電に要求して厳しく監視しなければ、第二の美浜3号機事故を防ぐことはできない。

(07/12/17UP)