5月21日関電交渉報告 その4


大飯3号 原子炉容器上蓋管台のひび割れ
渦電流探傷検査(ECT)でも、超音波探傷検査(UT)でも、ヘリウム・リークテストでも
いまだ、ひび割れ箇所を特定できず
しかし、各種モニターに異常はないので「問題とならない」

 5月21日の交渉で関電は、大飯3号機の原子炉用容器上蓋管台から漏えいしたひび割れ箇所がまだ判明しておらず、漏えい箇所の特定及び原因について調査中との回答を行った。一次冷却水の漏えいが確認されたのは5月6日である。2週間たっても、ひび割れ箇所の特定もできていないという。ECT(渦電流探傷検査)、UT(超音波探傷検査)をやってもひび割れ箇所は特定できておらず、さらにヘリウム・リークテストをやってもヘリウムの漏れは見つからないという。深刻な事態である。ところが他方で、漏えい箇所も特定できず、原因も不明であるにもかかわらず、大飯3号機と同じ材質の上蓋がある運転中の大飯4号、高浜3、4号機について、格納容器内の各種モニターに異常があれば原子炉を停止するなどの措置を取ることができるとの回答を行い、今回の漏えいが重要な事故ではないようなそぶりをのぞかせていた。漏えい箇所も特定ですぎ、原因も明らかになっていない段階から、「問題とならない」とはどういうことだと、参加者から批判の声があがった。
 また、「今後20年間は漏えいは起きない」としていた関電の「傷の進展予測」がデタラメだったのではないかという質問に対しては、「まだ応力腐食割れ(SCC)と断定されたわけではないので」と何度も繰り返していた。
 調査結果が明らかになった段階で、再度回答することとなった。それぞれの質問に対する回答は以下の通りである。
また、交渉の最後に、同じく大飯3号機で見つかった燃料棒からの放射能漏れ事故に関する質問書を出した。この質問に対しても、早急に回答するよう要求した。


大飯3号機の原子炉容器上蓋管台のひび割れに関する質問書

関西電力社長 藤 洋作 様
2004年5月7日

 5月6日、定検中の大飯3号機の原子炉容器上蓋管台にひびを割れが生じ、一次冷却水が漏洩していることが目視で確認されました。上蓋管台のひび割れは、国内初めてのことです。以下、この件に関連して質問します。

1.大飯3号機の上蓋管台の損傷等について
(1)大飯3号機の制御棒駆動装置取付管台(bS7)、温度計取付管台(bU7)のそれぞれのひび割れについて、傷の箇所、傷の大きさ等、詳しく説明してください。

 現在漏えい箇所を特定するための調査を鋭意行っておりますが、まだ現在のところ特定するに至っておりません。制御棒の入る方の管台と原子炉の上の温度を測るために熱電対を入れている管台のどちらについても現在のところ漏えいの部位は分かっておりません。
 一番疑わしいのは、過去の例からして溶接部のところなので、溶接部の確認を行っています。
PT(液体浸透試験)という非破壊検査の一つで金属表面の状況を見るのに一番適した試験、その後内面の方をECT(渦電流探傷検査)、UT(超音波探傷検査)とをやっているのですけれども今のところ優位な信号が見つけられていないと言う状況です。それともう一つ、外側に密閉カバーをつけて真空にしながらヘリウムを入れて漏れがないかどうかを確認するヘリウム・リークテストを溶接部のところと管台の中の両方で行っていますが、ヘリウムのリークは認められなかった、今はそういう状況です。温度計の管台についても、ヘリウムのリークテスト、PT、ECTを行いましたが見つかっていません。上のほうと合わせて全体のリークテストをやっているのですが見つかっていない。
bS7の管台については、ホウ酸が結構新しいという感じであったが、温度計取付管台(bU7)については、上部から垂れてきた感じで、比較的古いという感じに見えるようであったということでございます。これについては、平成3年の時に上の方のシールしているところから漏えいがあったことが分かっておりますので、もしかすると、上蓋(全体)を金属製のもので覆っているので(上蓋の)下のほうをふき取っていなかった可能性があると。原因も漏えい箇所も傷も確認しておりませんが、過去の平成3年に漏えいがあったという事実は判明しています。

(2)残り68本の管台の検査方法、検査結果を示してください。
 漏えいした管について特定作業を優先してやっております。漏えい箇所が特定されて原因等が分からないと闇雲に調査してもむだな作業になります。

(3)温度計シールハウジングと同様箇所の検査方法、検査結果を示してください。
 これについても調査結果を踏まえて対応するということでございます。

2.貴社の「傷の進展予測」について
 貴社は2002年に、上蓋を取り替えていない、高浜3・4号、大飯3・4号については、原子炉頂部温度低減化工事を行っているので、ひび割れは、今後約20年間(20万時間)は起きないという「傷の進展予測」を発表しました。このことは、私たちとの交渉でも繰り返し述べ、さらには貴社のホームページでも公開されています。
 しかし、大飯3号機での管台ひび割れは、その予測からわずか2年後に起きました。
(1)2002年の貴社の「傷の進展予測」は間違いであったことを認めますか。
 今回の漏えいがSCC(応力腐食割れ)であるかどうかもまだ分かっておりませんので答えられません。
ただ、SCCのデータという形でホームページに載せているものはSG(蒸気発生器)細管の材質で予測していたものであったのですが、管台と同じ材質での評価が出てきておりまして、その評価ではもう少し短くなる。大飯3号機は(運転開始から)10万時間経っているのですが、約27万時間(今後17万時間)と言う結果が得られております。
 SCCによるものかどうか分かっていないので、今のところ調査結果で判断させてくださいということ(回答)になります。

3.大飯3号機と同様に上蓋を取り替えていない高浜3・4号機、大飯4号機について
 高浜3・4号機、大飯4号機でも、上蓋管台にひび割れが生じている恐れがあります。大飯4号は1993年2月の運転開始以来、一度も上蓋管台の検査を行っていません。高浜3号では93年11月に、高浜4号機では94年1月に、上蓋管台のECT検査を行っただけで、その後約10年が経過しています。今回の大飯3号機は運転開始から約12年で貫通亀裂が生じました。
(1)上記3つの原発の運転を止めて、直ちに上蓋管台を検査すべきだと思いますが、どうですか。
 高浜3、4号機について、それぞれ前々回、前回の第14回定期検査時に、また大飯4号機では前々回の第7回定検時に、今回の大飯3号炉と同様の点検を行い、異常が無いことを確認しております。
また、本年夏に実施予定の高浜4号の定期検査時に、詳細な非破壊検査、今大飯3号機の漏えい管でやっていますECT、UTを実施し、必要に応じて補修することとしていました。
 なお今回の大飯3号では、2000年以降今回の漏えいが発見された定期検査の前まで、格納容器のサンプ水位の上昇率は異常が認められず、空気中の水分の凝縮水のサンプ上昇率は、平均して大体2?/h程度の微量でした。また、格納容器内の塵埃モニターやガスモニターの指標も安定しており、デービスベッセ原発(米)のようなものとは全く状況が異なり、問題とならないものでございます。
 今回ごく微量の漏えいがあったのですが、さらに大きな漏えいがあれば監視モニターで異常を感知して、適切な処理ができるということです。
 インコネル600管台については、要観察部位であるので(デービスベッセのように)放っておくことは鼻から考えていない。

4.検査機器の性能について
 上記、各検査においては、検査機器の性能が重要になります。女川原発1号機では、再循環系配管の傷の深さについて、超音波探傷検査では深さ1oとされた傷が、実際には8.5oであった事は、記憶に新しいことです。
(1)貴社が上蓋管台等の検査に使用する検査機器の性能について説明してください。
 ECTは、実験室では0.5ミリ程度の傷を見つけることができます。実際については、作業条件、作業の雰囲気を考えて、3ミリの傷であれば検出できると考えています。UTにつきましては、放電加工によるスリット状の傷に対しては、ECTに比して結果が悪くて2ミリ程度の傷があれば確認できております。
ECTとUTの性格の違いがありまして、深いほうにある内部の傷はUTの方が得意、表層にあるのはECTが得意とその二つの性格の違いがあり、その二つをうまく使いながら見つけていきたいと思います。

2004年5月7日
グリーン・アクション/美浜の会