5月21日関電交渉報告 その2
(質問4)


「使用済み燃料の90%以上が活用できる」と宣伝しながら、
 −回収ウランは1960トンのうちたった220トンしか使っていない
 −劣化ウラン(ウラン238)は「日本に高速増殖炉はないから」と
  アメリカに無償で譲渡
 −「資源の乏しい我が国」ではなかったのか?

(質問)
4. プルサーマルにより使用済み燃料の90%以上が活用できるということについて
 貴社の藤谷氏は、「使い終えた燃料には、資源として再利用できる物質が90%以上、燃えないで残っているのです。そのなかのプルトニウムとウランを混合したものをMOX燃料と言います。これを利用して発電することで有効に活用していくのです」と述べています。
 質問4−1.使用済み燃料から取り出したいわゆる回収ウランに関する貴社の利用実績について、以下の点を示してください。回収ウランを燃料として利用し始めた年度以降の年度ごとの利用実績(全ウラン燃料装荷量とそのうちの回収ウラン燃料の装荷量)を示してください。また、これまでの再処理によって回収されたウランの総量と、そのうち燃料用に用いた回収ウランの量(濃縮する前)を示してください。濃縮過程で出る劣化ウランはどのように処理したのか説明してください。
 質問4−2.貴社が海外で製造する予定のMOX燃料では、回収ウランを使う予定ですか。
 質問4−3.貴社は、ウラン濃縮の過程で産み出される劣化ウラン(大部分がウラン238)を無償で米国のウラン濃縮会社に渡していますが、なぜそれを利用しないのですか。
 質問4−4.プルサーマルを行うことで使用済み燃料の中の90%、とりわけその大部分を占めるはずのウラン238をどのように活用できるのか具体的に説明してください。
    ↓
(関電の回答)
(4−1)「平成3年度に約10トンの回収ウラン燃料を装荷しております。このうち、回収ウラン燃料といってもすべてが回収ウランではなくて、普通のウランと混ぜてますので、そのうち、純粋の回収ウラン燃料は4トンです。次に平成7年度に使っておりまして、約25トンの回収ウランを使っておりまして、そのうち、回収ウラン燃料は約20トンです。それから、平成14年度に約10トン、これは回収ウラン燃料は約10トンですけれども装荷しております。累積の回収ウランの量は、1960トンで、そのうち現在、使っているのが約220トンです。これは濃縮前の量です。」
(4−2)「回収ウランではなくて、今のところ劣化ウランの方をウランとして混ぜる計画になっております」
(4−3)「劣化ウランは濃縮工程の結果、生じた発電に寄与するウラン235の含まれている割合が天然ウランよりも少ない物質であり、経済性等を総合的に勘案した結果、現在のところ、当社は劣化ウランを引き取っておりません」
(4−4)「ウラン238、ウラン235からなる回収ウランがありますけれども、これはウラン235の含まれている割合が天然ウランよりも多い物質であり、天然ウランと同様に235を濃縮した上で利用する計画であります。」

1.「質問4−1」に対する関電の説明によれば、フランスやイギリスでの再処理によって使用済み燃料から1960トンのウランを回収したが、220トン(未濃縮の状態)しか使っていないということである。過去にたった3カ年(1991年4トン、1995年20トン、2002年10トン)だけ、回収量の1割を使ったに過ぎない。
 「なぜ3カ年だけなのか。なぜ何年も間隔が空いているのですか」と聞くと、関電は「試験的に実施したものだから」と答えた。「全然使っていないのが実態じゃないですか」と追及すると、「現在は、ということです。今後は定期的に使う予定です」などと逃げようとする。そこで、「回収ウランを使う今後の具体的計画はあるのですか」と追及。これに対して関電は、「今年、高浜で1基使うというのは決まっているが、それ以降について、われわれは知らない」と答えざるをえなくなった。

2.また「質問4−2」に対して関電は、コジェマ社で製造することになっているMOX燃料について、回収ウランを使わないと説明した。結局、関電のプルサーマル計画でも、回収ウランは使用されないのである。プルサーマルをやれば、ウラン資源の節約になるなどという宣伝はまったくのウソ偽りなのだ。

3.次に「質問4−3」に対して関電は、アメリカのウラン濃縮会社への劣化ウラン(注)の譲渡問題を追及した時とまったく同じ回答をおこなった。関電にとって、劣化ウランは利用価値のないゴミだから、アメリカにただで渡しているということである。「劣化ウランは経済的に役に立たないということですね」と確認すると、関電は「まぁ、そうです」と答えた。


<関電パンフレット「エネルギー資源のリサイクル プルサーマル計画」より>
4.関電は劣化ウラン、つまりウラン238を「不要なもの」としている一方で、新聞広告では、使用済み燃料の中に90%以上残っているウランやプルトニウムがすべて、資源として再利用できるかのごとく宣伝している。「質問4−4」では、この矛盾を問題にし、使用済み燃料の大部分を占めるウラン238の利用方法について聞いている。これに対して関電は、回収ウランの話にすり替え、質問にまったく答えなかった。
 そこで、「90%以上利用できるということは、回収ウランだけでなく、ウラン238も含めて全部、つまり劣化ウランもすべて使えるということではないのか」と、追及した。関電は結局、「ウラン238は高速増殖炉で使えば、プルトニウムに変わって新たな燃料になる資源である」と答えざるをえなくなった。これに対してさらに、「それでは、なぜ資源であるはずの劣化ウランをアメリカに無償で渡しているのか」と関電の矛盾を突いた。関電は、「現時点、日本に高速増殖炉はないわけですから」とか、あるいは「持って帰るより、所有権を移転して置いた方が、経済的にはメリットがある」等と、答にならない答えに終始した。
 参加者からは、わっとばかりに批判の声がわき起こった。「資源の乏しい我が国といいながら、将来使えるといいながら、おかしいじゃないか」「宣伝で言っていることと、やっていることが違うじゃないか」。交渉参加の怒りに気圧されたのか、関電側からは「大きな目で見ているから、アメリカに渡しているんです」などと、意味不明の発言すら飛び出す状態となり、最後には答えに窮し、何も答えられなくなった。
 関電は住民に対して、ありもしない「高速増殖炉」や「第二再処理工場」が実現できるかのように強弁し、劣化ウランを資源に計上して「90%以上再利用可能」などという虚偽の宣伝を押しつけている。その裏では、現実的な「コスト」や「メリット」を計算し、「劣化ウランはゴミ」としてアメリカに譲渡する。これは不当な二重基準である。関電は、「使用済み燃料の90%以上が再利用できる」などという虚偽宣伝を即刻撤回すべきである。

注:【劣化ウラン】−天然ウラン(U235:0.7%)あるいは回収ウラン(U235:0.9%)は、ウラン235の割合を約4%にまで濃縮することで、核燃料として使用されるが、ウラン濃縮の過程で、ウラン235の割合が天然ウランよりも低いウランができる。これを劣化ウランという。劣化ウランは、ウラン235の割合が0.2%程度であるため、核燃料として利用することはできない。事実上の「核のゴミ」となる。関電の試算に従えば、31トンの使用済み燃料を再処理して分離できる回収ウランの量は29トンである。しかし、それを濃縮することによって得られるウラン燃料の量は4トンに過ぎない。つまり、29トン−4トン=25トン(使用済み燃料の約80%)は使い道のない劣化ウランである。